[あらすじ] 母85歳の友Nちゃん83歳が来た。
Nちゃんは若い頃から片耳が難聴である。
しかし、ここ数年もう一方の耳も聴力が落ちてきた。
相手の言っている事が聞き取れないことをいちいち気にしていられない。
自分の言いたい事を話すことにNちゃんは慣れてしまっている。
一方の母は、声が小こい。
しっかりはっきりしゃべらない。
隣合わせに座っていても、母とNちゃんの会話は成立していない。
Nちゃ . . . 本文を読む
10年以上前、水道メーターの検針員の仕事をしていた。
一軒一軒の家を回り、水道メーターの数字をハンディターミナルに入力し、
検針票をプリントアウトして配布する。
漏水を見逃さないのも重要な仕事だ。
私の働いていた市では、2ヶ月に一度、同じ家を回る。
水道メーターは、家によって敷地内の様々な位置に在る。
門を開けて中に入り、家の裏をずっと奥まで行く場合もある。
家の表側の道路からではなく、裏側の道 . . . 本文を読む
母85歳が介護老人保健施設から退所して二日目、
おともだちが訪ねて来た。
あれっ、明日だと思っていました!
Nちゃんから電話が有ったのは2週間ほど前だった。
熱海の老人マンションに住んでいて、年に2回、甥御さんの運転する車で東京に来る。
以前住んでいた辺りに行ったり、仕事の友達に会ったり、眼科に行ったりして、
数日を過ごす。
その最初に、寄ってくれるのだ。
以前は2泊くらいして行ったが、こちらが . . . 本文を読む
家のすぐわきに生えている庭木が有る。
ひとつは南東角のクヌギだ。
どんぐりは本当はクヌギのどんぐりのことを言う。
他の木のどんぐりはどんぐりとは呼ばないのが、ほんとらしい。
クヌギのどんぐりは、丸くて大きい。
いかにも「どんぐり」という感じがする。
葉は長め。
常緑だが、春に新しい葉が出るときに、古い葉が枯れて降る。
※
拾ってきたどんぐりから育ったものらしい。
すいすい伸びて、あっという . . . 本文を読む
母85歳パーキンソン病要介護2が、9週間のおつとめじゃない
介護老人保健施設から退所した。
午前10時台は身体の動きが悪いと言う。
11時過ぎに迎えに行く。
2ヶ月も生活していると、荷物が増える。
車に往復して荷物を積み込む。
家に留守番できないから連れて来た飼い犬が鳴く。
家に置いて行かれる時に鳴くことは有るが、
車から私が離れる時に鳴くのは珍しい。
車ではいつも静かに待っていられる。だから . . . 本文を読む
けっこう早くに動いたつもりが、連休がどでんと横たわっていたものだから、
ギリギリになってしまった。
ビルトインコンロを新しい物に交換した。
立ち消え防止、湯沸し機能、炊飯機能、タイマーなど
今の物として当たり前のように備わっている。
これで安心だ。
翌日には、母85歳が介護老人保健施設から退所してくる。
お湯を沸かすだけでもいいから、台所に立ちたい。
調子が良ければ味噌汁くらいは自分で作る。
. . . 本文を読む
[あらすじ] 5月6日、東京レインボープライドのパレードを歩いた。
ゲイリブとかレズビアンフェミニズムとかエイズに関する活動とか、
1990年代にはそんな動きの成果が出てくる頃だったように思う。
そんな中で'94年に日本初のレズビアン&ゲイパレードが行われ、
私も実行委員として働いた。
パレードであり、イベントであったが、デモ行進だった。
みんな思い思いの服装で、晴れやかな気持ちで笑顔だったが . . . 本文を読む
東京レインボープライドも終わって、
参加者は誰しも、会った友達のことを思ったり、活動について考えたり、
身体の疲れを癒したりしつつ、パレードの余韻にひたる。
ひたりたいよね、ひたりたいけど翌日は平日で、
それぞれ職場や学業に戻ったり、地元に長旅で帰ったり、
疲れた身体に鞭打つわけだ。
午後には介護ベッド業者が来る。
午後にしといて良かった。
ベッドを移動できるように、部屋の中の物を移動する。する . . . 本文を読む
1976年の4月に一枚目、その半年後にはもう二枚目のアルバムを出している。
一枚目が『私の声が聞こえますか』、
二枚目が『みんな去(い)ってしまった』。
言わずと知れた、中島みゆきである。
私は、みゆきさんの長いキャリアの極めて初期の作品しか聞いていない、
ダメなファンだ。
これはもう、「中島みゆきのファン」ではない。
「自分が中学までに聴いた中島みゆき作品が好き」なだけだ。
真剣に創作してい . . . 本文を読む
[あらすじ] 東京レインボープライドのブラスバンドに参加すること5年目。
いつも先頭だったブラスバンドが、今年は37団体中16番目だった。
ふーん。なんかワケが有りそうね。何かと商業的な東京レインボープライドだし。
例年は先頭を主催者が歩き、続いてブラスバンド。
バンドの前にフラッグの人たちが曲に合わせて旗振ってパフォーマンスしていた。
バンドの先頭はトロンボーンだ。
最近は、プラスチック製の . . . 本文を読む
マーチング・ブラスなんてな経験は無い。
オーケストラでは長期間の練習を経て本番を迎えていたので、ほとんど暗譜していた。
バンドのホーンセクションでは、ライブの頻度が多いと暗譜できていた。
定番の曲は頭に入っていたし、そうなると新曲を憶える余地も有った。
東京レインボープライドのブラスバンドで、パレードを歩きながら演奏する。
事前の合同練習なんか無く、個人で練習して、当日集まってぶっつけ本番だ。
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[あらすじ] はじまりは鏡餅だった。
友人Mが、毛糸の帽子を犬に編んでくれたのは年末のことだ。
頭が冷えるわけではない。
帽子にお飾りを取り付けて、頭の上に乗っけようという趣向である。
犬にとってはどうでもいい。少し迷惑なくらいだ。
橙の乗った鏡餅も、編みぐるみで作ってあった。
やけにかわいい。
被せて散歩に出たら、すれ違う深大寺の参拝客にもウケた。
これは面白い、ということで、二月は私が鬼 . . . 本文を読む
二段で高さ60㎝の踏み台で、中に物を入れて棚としても使えるようになっている。
近年、母がこの中にも本を詰め込んだ。
本をみっちり詰め込むと、重い。
踏み台は、あちこちに移動させて使う物だ。
あまり重い物を入れるのは、適切ではない。
しかし、キャスターが付いているようだ。
転がして移動できる。
ところが、あまりに重い物を入れているせいで、うまく回転しないようだ。
と言うより、そもそも、踏み台にキ . . . 本文を読む
[あらすじ] 母85歳PD、2ヶ月の介護老人保健施設から来週退所予定。
ベッドを置く部屋の物を一気に移動させ、掃除するだけ掃除して、
ワックスをかける。
日当たりの上がり框なんかハゲッハゲなので、3度重ね掛けした。
電話の横に、以前(20年前)使っていたデスクトップ型パソコンが鎮座ましましている。
その横にコピーファックス複合機がこれまた鎮座している。
そして、その裏にごちゃごちゃごちゃごちゃ . . . 本文を読む
生まれて初めてのことをする。
嘘をつかなかったことを、謝るのだ。
自分で四月一日ならぬ「毎月馬鹿」と称して、毎月一日には法螺を書いているのに、
昨日は、忘れました。
まったく忘れておりました。
いつも、下旬ともなると、明けて一日にはどんな法螺を吹こうか、
あれこれ考え練り上げるのだが。
この頃はそんなことを考える余地も無く、部屋の片付けと掃除と退所準備にいそしんでいた。
これがほんとの四月馬 . . . 本文を読む