書のことばっかり書いているが、忘れたわけじゃないぜ、陶芸。
電動轆轤を使えるのは月に一度。
なかなかうまくならない。
粘土を買い、家でもちまちまと作る。
いつかはどこかで粘土を掘ったり、
鉱物を調合して釉薬を作ったりしてみたい。
陶芸というのは、地元に根ざしたものだ。
その土地で粘土が取れるからこそ、陶器が作れる。
地元で材料が取れるから、その地に窯業が栄えるのだ。
我が地元でも、多摩川焼なるものを作っている人がいる。
いた。今もやっているだろうか。
多摩川中下流域の底地は、川が運んだ特有の砂質の白い土だ。
土や石を見て、どういう物なのか、わかるようになりたい。
という思いはずっと以前から持っていたが、
具体的な目的につながらないし途方もないことのように感じて、
敬遠していた。
それが、陶芸という実に具体的な目的を得た。
中断していた、地質や鉱物に関する勉強を再開する時が来た。
※
友人Mは、「地層がこわい」と言う。
露出した土の断面が縞々になっているアレを見ると、どこか恐怖を感じると言う。
わからなくもない。
友人Vは、「豚のバラ肉がこわい」と言う。
赤い肉と白い脂身が交互に重なるアレを見ると、どこか恐怖を・・・
こっちはわからん。
※
地層の見方がわかる本を探しに図書館に行くと、そっくりの本が2冊、
書架に並んでいた。
よく見ると、一方は増補版だ。
2015年発行とある。
新しい本は、新しい研究成果や知見が入っているので、良い。
版を重ねる本は、評判が良いからこそ新しい版も出る。
より良い本を出そうという、著者と出版社の気概を感じる。
さっそく借りて帰り、いつものように「はじめに」をしっかり読む。
ここにはこの本にかける著者の思いが詰まっているからだ。
そして、2017年最初の読書として、私は大いに動かされた。
一部分を引用する。
―
地層には、私たちの人生の何百倍、いや何十万倍もの長きにわたる
自然のストーリーが秘められています。それを読み解くことは、
自然のメカニズムを知ること、人類誕生以前の世界を知ることです。
また、私たちの経験したことのない天変地異を知り、今日の私たちへと
つながる生命の系譜を認識することでもあります。(略)
地球の誕生から46億年。
(略)その一瞬、とくに最近の250年で人類は大発展しました。
生産性の向上に支えられて、人口も急増しました。西暦2050年の
地球の全人口は、西暦元年のそれと比較すると、100倍に達する見込みです。
地球は飽和点にさしかかっているのです。
より快適な生活とそのための生産性向上を追求して、私たちは
天然資源を急ピッチで開発し、また地表をつくり変えてきました。
一方で、自然に対する意識は次第に変質しています。(略)
大地震などの自然現象に起因する人的物的な大災害を見ると、
地球変動の遠大なタイムスケールと、日常を生き延びるのに忙しい人間の
想像力のギャップを思い知ります。
私たちは、個人として幸せに生きるために、今後も自然の恵みに頼らざるを
得ません。一方、人類の一員としては、持続可能な社会を築く責任を
負っています。地球の成り立ちを知り、地球変動のリズムを知ること、
山や川や地盤の特性を知り、有限な国土の最適な利用を実践する事は、
とても重要になってきています。それは、これからの人類に求められる
基本的資質といってよいでしょう。
自然の理解は、自然への愛着がベースになります。自然への愛着は、
自発的な自然体験に根を張ります。人間も他の生物も生態系の一部。
自然への愛着は、同世代を生きる命への共感と表裏一体のものです。
持続可能な社会の建設という言葉は、豊かな自然体験を持った人によってのみ
実感されるのではないでしょうか。
(略)
―
※
この本の他の箇所を読んでいても、この先生の文はとても上手だ。
簡潔な数行の中に、問題点や自分の意見や解決への足がかりなどを込め、
それがすっきりと伝わってくる。名文だ。
新しい本を手にした甲斐があった。
増補版では、様々な地形を紹介する本編の最後に、
「津波がつくる地層」というページが加えられている。
地層を見ることと、現代人として生きることがしっかり結び付いた本だ。
科学者はかくあるべき、と思う。
電動轆轤を使えるのは月に一度。
なかなかうまくならない。
粘土を買い、家でもちまちまと作る。
いつかはどこかで粘土を掘ったり、
鉱物を調合して釉薬を作ったりしてみたい。
陶芸というのは、地元に根ざしたものだ。
その土地で粘土が取れるからこそ、陶器が作れる。
地元で材料が取れるから、その地に窯業が栄えるのだ。
我が地元でも、多摩川焼なるものを作っている人がいる。
いた。今もやっているだろうか。
多摩川中下流域の底地は、川が運んだ特有の砂質の白い土だ。
土や石を見て、どういう物なのか、わかるようになりたい。
という思いはずっと以前から持っていたが、
具体的な目的につながらないし途方もないことのように感じて、
敬遠していた。
それが、陶芸という実に具体的な目的を得た。
中断していた、地質や鉱物に関する勉強を再開する時が来た。
※
友人Mは、「地層がこわい」と言う。
露出した土の断面が縞々になっているアレを見ると、どこか恐怖を感じると言う。
わからなくもない。
友人Vは、「豚のバラ肉がこわい」と言う。
赤い肉と白い脂身が交互に重なるアレを見ると、どこか恐怖を・・・
こっちはわからん。
※
地層の見方がわかる本を探しに図書館に行くと、そっくりの本が2冊、
書架に並んでいた。
よく見ると、一方は増補版だ。
2015年発行とある。
新しい本は、新しい研究成果や知見が入っているので、良い。
版を重ねる本は、評判が良いからこそ新しい版も出る。
より良い本を出そうという、著者と出版社の気概を感じる。
さっそく借りて帰り、いつものように「はじめに」をしっかり読む。
ここにはこの本にかける著者の思いが詰まっているからだ。
そして、2017年最初の読書として、私は大いに動かされた。
一部分を引用する。
―
地層には、私たちの人生の何百倍、いや何十万倍もの長きにわたる
自然のストーリーが秘められています。それを読み解くことは、
自然のメカニズムを知ること、人類誕生以前の世界を知ることです。
また、私たちの経験したことのない天変地異を知り、今日の私たちへと
つながる生命の系譜を認識することでもあります。(略)
地球の誕生から46億年。
(略)その一瞬、とくに最近の250年で人類は大発展しました。
生産性の向上に支えられて、人口も急増しました。西暦2050年の
地球の全人口は、西暦元年のそれと比較すると、100倍に達する見込みです。
地球は飽和点にさしかかっているのです。
より快適な生活とそのための生産性向上を追求して、私たちは
天然資源を急ピッチで開発し、また地表をつくり変えてきました。
一方で、自然に対する意識は次第に変質しています。(略)
大地震などの自然現象に起因する人的物的な大災害を見ると、
地球変動の遠大なタイムスケールと、日常を生き延びるのに忙しい人間の
想像力のギャップを思い知ります。
私たちは、個人として幸せに生きるために、今後も自然の恵みに頼らざるを
得ません。一方、人類の一員としては、持続可能な社会を築く責任を
負っています。地球の成り立ちを知り、地球変動のリズムを知ること、
山や川や地盤の特性を知り、有限な国土の最適な利用を実践する事は、
とても重要になってきています。それは、これからの人類に求められる
基本的資質といってよいでしょう。
自然の理解は、自然への愛着がベースになります。自然への愛着は、
自発的な自然体験に根を張ります。人間も他の生物も生態系の一部。
自然への愛着は、同世代を生きる命への共感と表裏一体のものです。
持続可能な社会の建設という言葉は、豊かな自然体験を持った人によってのみ
実感されるのではないでしょうか。
(略)
―
※
この本の他の箇所を読んでいても、この先生の文はとても上手だ。
簡潔な数行の中に、問題点や自分の意見や解決への足がかりなどを込め、
それがすっきりと伝わってくる。名文だ。
新しい本を手にした甲斐があった。
増補版では、様々な地形を紹介する本編の最後に、
「津波がつくる地層」というページが加えられている。
地層を見ることと、現代人として生きることがしっかり結び付いた本だ。
科学者はかくあるべき、と思う。
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