犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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日本陸軍の病根

2018年03月23日 | 椰子の実の中
[あらすじ] 母の父、河邊正三の遺品の硯が、家に在った。
箱書きから、南京政府の主席である汪兆銘から1943年に贈られたものだと見られる。


日本の軍国主義政策を、アジア諸国をヨーロッパの植民地主義から解放したものとして
正当化する見方がある。
そういう歴史の流れが有ったことを知ることは必要だとは思う。
しかし、だから太平洋戦争は必要だったとか、価値が有ったとか、良いとか正しいとか、
そういう価値づけをすることには疑問が有る。

この場合に限ったことではなく、
戦争以外の何かの外交的な手段は無かったのかいな、と思う。
それをやり尽した上での事だとは思うが。
言っても分からん奴は殴る、ってことかいな。
このように単純化したり卑近な喩えにすることも、ずさんだとは思っている。
それでも、武力において勝った側の主張が通るって、
要するに喧嘩じゃん?

武力をもって、命にかえても、自分のクニを守る。というのと、
暴力を振るわない、戦争で殺し合いしたくない。というのと、
どっちが自分の気持ちに近いですかと言ったら後者だ。
というくらいのことしか、言い切れない。



『昭和の名将と愚将』の第九章「牟田口廉也と瀬島龍三」から、
ではなぜそんな無謀な作戦が決行されたか。

-------

保阪 そもそもあの作戦は周辺のみんなが反対しました。
(略)
半藤 師団長たちにしてみれば、これ以上、無残に兵を死なすわけにいかない、という
ギリギリの判断だったのでしょうが、牟田口にすれば、あいつらが弱腰で意気地がないために
失敗したんだということなんです。
でも作戦計画というのは、本来もっと合理的なものですよ。現場の人がみんな反対して、
冷静に考えればあり得ない作戦がなぜ通ってしまったのか。それは東條ですね。

保阪 ええ、東條です。東條英機のチャンドラ・ボースに対する義理でしょう。
昭和18年の11月に大東亜会議が開かれて「アジアの解放」を決議し、日本の国策としたにもかかわらず、
お題目だけで戦略がともなわなかった。
東條は当初インパール作戦に反対していましたが、牟田口が「戦えば必ず勝つ、私には自信がある」と
精神論で東條にすがりました。結局作戦の遂行は、それがインド独立の後ろ盾になるという
政治的判断によるところが大きかったわけですね。

半藤 問題はそこなんですね。政治的判断でこんな無謀な作戦が敢行されてはいけないはずなのですよ。

保阪 太平洋方面ばかりでなく所定の持ち場であるビルマ戦線だって、もうガタガタしていた。
それなのになぜインパールに攻めのぼらなくてはならないのか……。
私は、陸軍の病根は、ここに現れているのではないかと思うんです。

半藤 最大の病根が現れましたね。
戦争というのは勝たなきゃ意味ないし、勝たないまでも、無謀な作戦、成立しないような作戦を敢行すべきではない。
それが冷静なる軍人の基本姿勢でしょう。そこに政治判断をもちこんで無謀な作戦が採用されてしまうというのは、
軍として最もやってはいけないことです。それを平気でやったんですね。

保阪 一作戦司令官でありながら、牟田口は上長のビルマ方面軍(須山注:河邊)も、その上の南方総軍も、
そして参謀本部をも黙殺して作戦構想を進めた。それがめちゃくちゃなものであろうと平気で推進した。
牟田口が東條の威を借りていたからこそできたことです。



河邊も、東條の顔色をうかがっていた。
上が良しと言ったら良し。
陸軍精神に縛られていた。

今の日本の、会社の中の上司と部下の関係や、組織の中の上下関係、
学生の部活などでの先輩後輩関係、なんとなく年長者には逆らえないという風潮。
私は、これを日本の美徳とは考えていない。
組織の創造性を損なったり、パワハラなどの問題のもとになったりしていると思う。

こういう、日本のタテの人間関係は、
古く中国から伝わった儒教の価値観をもとに、武家の中で発達し、そして軍隊の中でさらに整えられたのではないか。

上官に口答えでもしようものなら、陸軍ではビンタが飛んだ。
海軍ではゲンコツで、さらに海軍精神棒という棍棒で尻を殴った。

そういうものが日本的精神だという感覚が、まだ根強く日本社会に残っている、と思っている。

私は今48歳で、また10代20代は感覚が違うだろうが、組織の中には50代60代も現役だし、
世の中には70代80代も元気だ。

今後どうやって変えて行けるか。
歴史に学ぶことは、将来を変えるために役立つかもしれない。



なんてなことを考えていたら、三畳間の高い棚の上から、河辺正三著という本が見つかった。
これは…

つづきはまた来週~

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