家の前の細い砂利道を挟んで、何軒かの家が並んでいる。
以前は空き地同然の農地だったところ、5年前に家が建った。
どこも、子供のいる家庭が移り住んで来た。
中でも、自転車を置いている場所が我が家の玄関の目の前になっているお宅の人と
顔を合わせることが一番多い。
挨拶を交わし、立ち話をするようになった。
※
子どもの頃、犬を飼っていたという。
今、自分の子どもたちが動物を飼いたいというけれど、
イヤだと言う。
死に別れることがつらかったからだそうだ。
子どものリクエストで家庭に動物を飼っても、
結局その世話をするのはお母さん。
という前提。
一番世話をしてくれる人に、動物は一番なつく。
なつかれれば、思い入れも強くなる。
別れの時は必ず来る。
※
動物との死別の経験が、その人の中でどのような価値を持っていくのか、
人それぞれだと思う。
※
その隣の家は、引っ越して来た時に生まれたばかりの赤ちゃんがいた。
だから今その子は5歳になる。
何坪かの庭が有るが、何も植えず、防草シートを貼っているばかりだった。
それが、最近になって様変わりしてきた。
小さめのプラ舟を二つ、ブロックの上に載せて、
中には睡蓮などの鉢を入れたり、ホテイアオイを浮かべたりしている。
ポンプで水を循環させている。
何かいるんですか?
と聞いてみたら、
「メダカです。
子どもに何か生き物を飼わせようと思って。」と若いお父さんが言う。
あらステキ。
お母さんもゴーヤーの苗を買ってきて、
園芸支柱を立てたりして世話をしている。
今まで一歩も庭に出て来なかった家族だったが、
急に楽しくなってきた。
※
数日後には
「赤ちゃん生まれたんです。」と言う。
メダカの、である。
あらいいこと。
※
我が庭のトロ舟はほったらかしだ。
他の鉢にも、植えているものに加えて、マツモを入れてある。
細かい葉の水草は、メダカが卵を産み付けるのに都合が良い。
入れてあるマツモを取ってきて、室内の水槽に移し、
よく見てみると、卵が付いている。
水温25℃が10日有ると孵化するという。
産卵から累計250℃で卵から生まれて出てくるのだ。
直径1㎜あまりの小さな卵の中に、
黒い点が二つ見える。
目だろう。
※
数日後、水の中に「ツイ、ツイ、」と動く小さな半透明のものが見える。
おうおう。ちいせえのお。
庭の鉢のマツモと入れ替える。
また数日後にはツイツイが増えるだろう。
※
夕方、我が犬ウーゴと散歩に出る。
保護団体の施設で仔犬の頃から4歳を過ぎるまで過ごしたので、
世間のもの全てが怖い。
今は特に子どもが苦手である。
だから、夕方の散歩は緊張する。
住宅街の中の狭い道を行く。
右側に、若いお母さん3人が立ち話をしている。
左側に、3年生くらいの女の子が2人、しゃがんでいる。
お母さんの1人が連れたなんちゃらスパニエルが、
ウーゴに気付いて挨拶したそうにリードを引いてハアハア言っている。
この間を通り抜けて行くのは、ウーゴにとって緊張することだ。
ちょっとうつむきがちで、目を剥きながら、
しかしさほどリードを引くでもなく、歩いて通ることができた。
なかなか余裕だな、と思った。
その時、しゃがんでいる女の子の一人がこう言った。
「あ、あのこ、怖がりなんだ。」
飼い主の私から見ても、あまり怖がらずに歩いて通ることができた
と見えたが、その女の子はウーゴの怖がりに気付いた。
こういう、犬の気持ちの分かる子どもと出会って、
かわいがって貰えるという体験をウーゴができれば。
子ども恐怖症もやわらいでいくのではないか。
と、歩き過ぎながら思った。
今度会えたら、撫でてもらおうかな。
顔を憶えていないや。
※
生き物との暮らしが、その子にとって
印象的な経験であり、人生を豊かなものにしてくれますように。
以前は空き地同然の農地だったところ、5年前に家が建った。
どこも、子供のいる家庭が移り住んで来た。
中でも、自転車を置いている場所が我が家の玄関の目の前になっているお宅の人と
顔を合わせることが一番多い。
挨拶を交わし、立ち話をするようになった。
※
子どもの頃、犬を飼っていたという。
今、自分の子どもたちが動物を飼いたいというけれど、
イヤだと言う。
死に別れることがつらかったからだそうだ。
子どものリクエストで家庭に動物を飼っても、
結局その世話をするのはお母さん。
という前提。
一番世話をしてくれる人に、動物は一番なつく。
なつかれれば、思い入れも強くなる。
別れの時は必ず来る。
※
動物との死別の経験が、その人の中でどのような価値を持っていくのか、
人それぞれだと思う。
※
その隣の家は、引っ越して来た時に生まれたばかりの赤ちゃんがいた。
だから今その子は5歳になる。
何坪かの庭が有るが、何も植えず、防草シートを貼っているばかりだった。
それが、最近になって様変わりしてきた。
小さめのプラ舟を二つ、ブロックの上に載せて、
中には睡蓮などの鉢を入れたり、ホテイアオイを浮かべたりしている。
ポンプで水を循環させている。
何かいるんですか?
と聞いてみたら、
「メダカです。
子どもに何か生き物を飼わせようと思って。」と若いお父さんが言う。
あらステキ。
お母さんもゴーヤーの苗を買ってきて、
園芸支柱を立てたりして世話をしている。
今まで一歩も庭に出て来なかった家族だったが、
急に楽しくなってきた。
※
数日後には
「赤ちゃん生まれたんです。」と言う。
メダカの、である。
あらいいこと。
※
我が庭のトロ舟はほったらかしだ。
他の鉢にも、植えているものに加えて、マツモを入れてある。
細かい葉の水草は、メダカが卵を産み付けるのに都合が良い。
入れてあるマツモを取ってきて、室内の水槽に移し、
よく見てみると、卵が付いている。
水温25℃が10日有ると孵化するという。
産卵から累計250℃で卵から生まれて出てくるのだ。
直径1㎜あまりの小さな卵の中に、
黒い点が二つ見える。
目だろう。
※
数日後、水の中に「ツイ、ツイ、」と動く小さな半透明のものが見える。
おうおう。ちいせえのお。
庭の鉢のマツモと入れ替える。
また数日後にはツイツイが増えるだろう。
※
夕方、我が犬ウーゴと散歩に出る。
保護団体の施設で仔犬の頃から4歳を過ぎるまで過ごしたので、
世間のもの全てが怖い。
今は特に子どもが苦手である。
だから、夕方の散歩は緊張する。
住宅街の中の狭い道を行く。
右側に、若いお母さん3人が立ち話をしている。
左側に、3年生くらいの女の子が2人、しゃがんでいる。
お母さんの1人が連れたなんちゃらスパニエルが、
ウーゴに気付いて挨拶したそうにリードを引いてハアハア言っている。
この間を通り抜けて行くのは、ウーゴにとって緊張することだ。
ちょっとうつむきがちで、目を剥きながら、
しかしさほどリードを引くでもなく、歩いて通ることができた。
なかなか余裕だな、と思った。
その時、しゃがんでいる女の子の一人がこう言った。
「あ、あのこ、怖がりなんだ。」
飼い主の私から見ても、あまり怖がらずに歩いて通ることができた
と見えたが、その女の子はウーゴの怖がりに気付いた。
こういう、犬の気持ちの分かる子どもと出会って、
かわいがって貰えるという体験をウーゴができれば。
子ども恐怖症もやわらいでいくのではないか。
と、歩き過ぎながら思った。
今度会えたら、撫でてもらおうかな。
顔を憶えていないや。
※
生き物との暮らしが、その子にとって
印象的な経験であり、人生を豊かなものにしてくれますように。
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