[あらすじ] 母85歳パーキンソン病、年明け頃に室内の転倒が増えた。
3月から5月の初旬までの2ヶ月、リハビリのために介護老人保健施設に入所した。
母が退所して来る前に、ガスコンロを交換するのが課題だった。
退所前日ギリギリに工事できた。
新しい今どきのビルトインコンロである。
ガラスコーティングで、平らで、ピカピカである。
隙間がほとんど無い。
クズや汁が中に入ってしまうことが無いような構造にしてある。
以前のコンロはすでに24年目だったかで、あちこちにガタが来ていた。
3クチのうち2つは、点火にひどく時間がかかった。
1つは、コンロの火を広げるための金属の丸い蓋こんな説明で伝わるのか部品が錆びて、
火の出る穴が一ヶ所繋がってしまっており、そこからは大きく炎が出た。
あいにく、その箇所は手前で、ちょうど火の様子を覗き込む頭の方向だった。
また1つは、静かに立ち消えするようになった。
母の頭髪が2度燃え、袖口が3度燃えた。
危険だからガスは使わないように、とケアマネさんは言う。
立ち消えしているコンロを見付けて、
もう誰がどう使っても危ないと思い、交換することにした。
いまどきのコンロは賢い。
「つけっぱなしですよ?」と思ったら、勝手に判断して消えてくれる。
「お湯沸いてますよ?」と思ったら、勝手に判断して消えてくれる。
「お鍋のこと忘れてませんか?」と思ったら、勝手に判断して消えてくれる。
これなら、老母が使っても大丈夫だ。
※
私の昼食はだいたい蕎麦だ。
乾麺の「深大寺そば」という商品が気に入っている。
蕎麦の乾麺は、吹きこぼさないようにしかし麺が湯の中で対流に乗るくらいの
火加減を保って、4分茹でる。
鍋の様子に気を配りながら、つゆと薬味とざるを準備する。
ぼやぼやしていると吹きこぼれる。
ある日、蕎麦を茹でていて、気付いた。
コイツ・・・
「吹きこぼれそうになってますよ?」と思ったら、勝手に判断して火を弱めてくれている。
しかも、タイマーが有る。
沸騰した湯に乾麺を入れたら、タイマーを4回つついて、ちょいと箸で麺をほぐす。
それきり、
忘れようが離れようが、どうとでもできる。
「ユ・デ・ア・ガ・リ」と電子音が鳴る。いや、「ピ・ピ・ピ・ピ・ピ」ですけどね。
火加減も、時計を見ることもしなくなった。
私は小さく堕落しつつある。
3月から5月の初旬までの2ヶ月、リハビリのために介護老人保健施設に入所した。
母が退所して来る前に、ガスコンロを交換するのが課題だった。
退所前日ギリギリに工事できた。
新しい今どきのビルトインコンロである。
ガラスコーティングで、平らで、ピカピカである。
隙間がほとんど無い。
クズや汁が中に入ってしまうことが無いような構造にしてある。
以前のコンロはすでに24年目だったかで、あちこちにガタが来ていた。
3クチのうち2つは、点火にひどく時間がかかった。
1つは、コンロの火を広げるための金属の丸い蓋こんな説明で伝わるのか部品が錆びて、
火の出る穴が一ヶ所繋がってしまっており、そこからは大きく炎が出た。
あいにく、その箇所は手前で、ちょうど火の様子を覗き込む頭の方向だった。
また1つは、静かに立ち消えするようになった。
母の頭髪が2度燃え、袖口が3度燃えた。
危険だからガスは使わないように、とケアマネさんは言う。
立ち消えしているコンロを見付けて、
もう誰がどう使っても危ないと思い、交換することにした。
いまどきのコンロは賢い。
「つけっぱなしですよ?」と思ったら、勝手に判断して消えてくれる。
「お湯沸いてますよ?」と思ったら、勝手に判断して消えてくれる。
「お鍋のこと忘れてませんか?」と思ったら、勝手に判断して消えてくれる。
これなら、老母が使っても大丈夫だ。
※
私の昼食はだいたい蕎麦だ。
乾麺の「深大寺そば」という商品が気に入っている。
蕎麦の乾麺は、吹きこぼさないようにしかし麺が湯の中で対流に乗るくらいの
火加減を保って、4分茹でる。
鍋の様子に気を配りながら、つゆと薬味とざるを準備する。
ぼやぼやしていると吹きこぼれる。
ある日、蕎麦を茹でていて、気付いた。
コイツ・・・
「吹きこぼれそうになってますよ?」と思ったら、勝手に判断して火を弱めてくれている。
しかも、タイマーが有る。
沸騰した湯に乾麺を入れたら、タイマーを4回つついて、ちょいと箸で麺をほぐす。
それきり、
忘れようが離れようが、どうとでもできる。
「ユ・デ・ア・ガ・リ」と電子音が鳴る。いや、「ピ・ピ・ピ・ピ・ピ」ですけどね。
火加減も、時計を見ることもしなくなった。
私は小さく堕落しつつある。
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