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男たちの大和 YAMATO [トンデモ映画になりそこねたただの失敗作。巨大セットで息切れ?]

2005-12-31 23:52:36 | 映評 2003~2005
一言でいえばつまらない映画だったが、大和のやられっぷりと、中村獅童のテンション高い演技が良かった事と、久石譲(あまり好きな作曲家ではないが)の音楽が結構良かったところ、がプラスポイントとして作用。
ただしクライマックスの戦闘シーンについては、迫力あって、血みどろで、戦争ってやだなあ・・とは思うけど、引きのショットとか俯瞰ショットとかが少なくて、イマイチ感も強い。
「大和」なんて、"国家"なり、"戦争"なり、"時代"なり、"男"なり、あれやこれや色んな物を象徴し得る存在だったと思うのだけど、この映画ではせいぜい"大作スペクタクル映画"を象徴しているにすぎない。クライマックスの戦い以外は、ダラダラしたトークのシーンばかりで、戦艦大和に抱く憧憬やら、帝国海軍の栄光やらは台詞で語られるのみ。戦争や時代の描写はナレーションとニュース映像のみ。そんなんで、でかいセットがボンボン爆発したって「迫力あるなあ」くらいの感想しか抱けない。

広島の原爆を話にからめるのは、敗戦を語る上で重要な出来事であり、呉で作られた大和の轟沈とも何か繋がりを感じるし、戦争映画作家としての良心の現れと言えるだろう。しかし、ご丁寧に2人の女性に「広島で待ってるわ」と明言させるのはやりすぎで、意図見え見え。監督としては「泣き方用意」と言いたかったのかもしれないが、わざとらしすぎて笑っちゃう。
大和が沈んだ後の、正直言って長ったらしいシーン。日本を代表する俳優になんちゅう芝居をさせてるんだ、とか、鈴木京香の敬礼がギャグみたいに見えたりで、感動のはずのラストでついつい「笑いをこらえ」てしまった。
この辺、さすが「野性の証明」など日本を代表するトンデモ巨匠であった

途中、下士官たちが水上特攻について激論し喧嘩になった時、上官が特攻のあり方について意見をまとめ、その場を丸くおさめるシーンがある。いわく、日本は精神主義の国家となってしまった。この国は負けることで生まれ変わるしかない・・うんぬん。その熱い意見を言うのが長嶋一茂であるところが笑えたりもするが、それはこの際置いておく。気になったのは、国歌論はさておき、この「男たちの大和」という映画がめちゃめちゃ精神論で作られているように思うことだ。ドラマツルギーとか、物語構成など特に考えず、大和とその乗組員たちに対する思い入れさえあればいい映画になるさ・・・というシナリオ作り、画面作りにおける精神論。
一茂は「薩英戦争に負けた薩摩、馬関戦争に負けた長州は、負ける事で強くなった」みたいなことを語る。佐藤純彌監督は「ゴルゴ13(高倉健主演)」「野生の証明」「北京原人」など日本映画史に残るトンデモ映画を次々に発表して、映画好きたちの飲み会ネタを提供してきた過去がある。それらトンデモ映画はある意味とっても面白いのだが、批評家や一般の評価からいけば大敗北といってもいい映画ではなかろうか。しかし、上記のトンデモ映画たちだってなんだかんだで結構ヒットしちゃったりしてるのである(普通に面白くてヒットもして評価も高い「新幹線大爆破」や「敦煌」なんかもあるけど)。彼こそ、そろそろ興行面の大敗北を喫して再生するべきではないか、などと思ったりする(いっぱい撮ってる人だから、失敗作も少なからずあるのだろうけど)。こじつけだけど一茂の台詞は、佐藤純彌が自分で自分の問題点を指摘しているように思えた。
では、この映画がトンデモ映画か? と言えば、そこまでのインパクトはない。単にデキの悪い大作映画でしかなく、すぐに記憶から消えそう。そうは言っても、大宣伝の効果もあってそこそこヒットはすると思う。そういうわけでまた佐藤純彌は精神論の蟻地獄にはまっていくのかもしれない。

ああ、これが2005年の締めくくり映画か・・・くそお、先に「キング・コング」観るんじゃなかった。あれで締めたかったなあ・・

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2 コメント

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コメント有り難うございます (海音)
2006-01-11 20:22:55
 日本を代表する俳優に・・・の下り、誰のことを書かれていたんだろう?
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コメントどうもです (しん)
2006-01-12 03:14:38
>海音さま

仲代さんです

あそこでわざわざ心臓発作させる必要があったのか、すごく疑問でした。

船がめちゃめちゃ揺れていたので俳優は大変だなあとは思いましたが
返信する

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