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劇場 【監督:行定勲】アマプラで鑑賞。原作なぞるだけでなく、もっと映画的にしてほしい

2020-07-21 00:03:00 | 映評 2013~
アマプラで鑑賞。
劇場に行かなくてすいません。
久しぶりに見た気がする行定監督作品。
2004年の「きょうのできごと」までは行定監督が大好きでした。その後例の中心な映画で急速に興味を失いました。
でも今回は好感の持てる映画でした。
とは言え、ちょっと引っかかる部分もあり、自分としては絶賛はしないです。

私意外と又吉さんの本が好きで長編3作は全部買いました。そして個人的には「劇場」が一番好きでした。
映画は、わりと原作に忠実に(終盤を除いて)作っているので、まあ、物語的にはしっかりしていて、ラストの改編も映画的な演出で演劇を描いた野心的な場面ともうけとれて、私は好きです。

でも、映画的に問題なのがまた原作に忠実な部分で、どうも、いわゆる「筋を追ってるだけ」に感じたり「説明してるだけ」に感じたりしました。

「まだ死んでないよ」の公演を主人公が観てその劇団をバカにしてやろうと思っていたのに、不覚にも感動して泣いてしまう場面。
どう映画にしたかと言えば「演劇を観て泣いたと」いうナレーションと、泣いている顔に寄ったカメラ、というただそれだけでした。
そこで描写された演劇は時間的にはせいぜい30秒とか1分くらいでしかないけど、特別すごい舞台ってんでなく、よく見る小劇場演劇っぽい場面で、何がそんなに感動したのかわかりませんでした。
原作はもっと上演されていた劇の内容を熱く書いていたんじゃなかったっけ?と思いましたが、それは私の記憶違いで、その場面を読み返してみたら、原作もあっさりと「生まれて初めて泣いた」という一人称小説の文だけで、「想像通りの展開だが次元が違った」という抽象的な書き方をしているだけでした。(具体的に劇の内容を濃く熱く書いているのは主人公が2回目に「まだ死んでないよ」の舞台を観に行く場面で、ここは映画ではオミットされていた)

原作がそうだから映画も同じでいいのかもしれませんが、でも不満を感じます。

原作がそうだからと言って映画でこの場面の舞台を普通に描いたら才能の差を感じる主人公に同調できない。そこにはただナレーションで説明されたストーリー上必要な情報があるだけでした。
特別なオーラを感じる舞台だったと描こうにも、脚本の構成がそのようになってないです。映画ではそのシーンより前に演劇の場面が描かれるのはサキちゃんが舞台に立つシーン一つくらいしかない。というかこの映画で主人公が演劇をやってる場面自体そこくらいしかなく、普通の演劇がどういものかが頭に入る前に「次元が違う」とかいう舞台を見せられます。

主人公が「初めて泣く」にしても、彼がそうそう舞台見て泣くようなやつじゃないことを、それより前のエピソードとかで描いておくべきではないでしょうか?
いくらでも心の声で説明できる小説と、基本的に実際に起こってる事しか描けない映画では、同じ場面を描くにしても色々違うと思うのに、ただ原作をなぞるというのはいかがなものかと思いました。映画だと原作にあた2回目の「まだ死んでないよ」公演の場面がオミットされているので、だったら原作の2回目観劇シーンを映画の1回目観劇シーンにすればよかったのではないかな?そうするとレベルの違うすごい演劇集団であることを表現し得たのではないか??

演劇の場面自体をもっと多くしないと、最後のあの原作を変えた仕掛けにも乗れない気がします。

なので、ラストを除くとどこもただ原作をなぞっただけという印象で、もっと映画ならではの構成や表現があったんじゃないかなと思うのです。
原作は読み終わると芝居を観たくなったりしたのですが、映画版を観ても芝居は楽しそうだとはあんまり思えなかったです。
とは言え主人公のクズっぷりはとても楽しく、笑えるシーンはしっかり笑えるし、原作をなぞってるだけに原作の良さに引っ張られて、基礎点は高い映画ではあります。

あと個人的な感想ですが、山崎賢人君はイケメンすぎてこの主人公には向かない気がするなあ、といってもイケメンじゃないと集客の面で問題あるか。
都合のいい女を演じながら終盤でため込んでいた気持ちを吐き出す松岡茉優さんはうまいと思いました。

でも、浅草氏の中の人の芝居をもっと観たかった。いい声だな、あの子。



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