【個人的評価 ■■■■■□】(■□□□□□:最悪、■■■■■■:最高)
観てからだいぶたってしまったが・・・
なんとなく感想が書きにくいというか、この映画に対する態度を少しの間保留したい・・・そんな衝動にかられる映画だった。
脚本が批判される要素の一つとして「説明台詞」というやつがある。
状況や設定や一般にはあまり知られていない事柄を台詞で説明すると、あんな不自然な台詞があるか・・と、批判される
そうは言っても説明は必要である。
そこでナレーションで説明する・・・という方法もあるが、ナレーションは「逃げ」だと脚本家たちは批判する。
スポーツ映画なら「実況中継」で説明ができるから楽だが、普通のドラマではそうもいかない
そこで、脚本家が説明台詞を自然な感じで俳優に喋らせるためにとる方法が、「物知りと無知のQ&A方式の会話」である。
「Shall we ダンス?」でのうろ覚えだが、こんな風な台詞があった
競技ダンス中、役所広司が他のペアとぶつかる
無知くん:「あ、あれは減点になるんじゃないですか?」
物知りさん:「バカ、あの広さの会場であれだけの人数が踊っているんだ。ぶつかるのは当たり前。礼義正しく振るまいダンスの流れを損なわないようすることで審査員にアピールできるんだ」
映画の観客への優しい配慮の台詞だが、物知りさんが”まったく何もわかってねえなお前は”とめんどくさそうに答えているので、台詞の流れも自然に感じる。
そんなQ&Aタイプの説明台詞大得意の周防監督と、難しい法律用語が横行する裁判映画という題材はベストマッチングと言えるだろう。
弁護士と一般人という人物設定は自動的に無知な皆さんへの判りやすい裁判講座となるし、そもそも裁判というやつがQ&Aを基本として展開するものだ。
すべてがQ&Aで構成されているような本作。「不見当」なんて用語がわかり、「当番弁護士」って制度の存在も教わり、痴漢被害者は傍聴席と隔てられることの説明も受け、ちゃんとスパッツはいてきたお尻触ってもそれは再現実験以外の何ものでもないよ・・・ということも教えられ、性犯罪専門の傍聴マニアは最低の人間で、”無罪”を出したがる裁判長は国家権力に歯向かう故に左遷されやすいことまでよくわかりました。
Q&Aで埋め尽くして90%の客観的真実の中に10%の主観と個人的思想を混ぜてくるそのテクニックはすごいと思う。
そして徹底的にQ&Aで物語を進めながら、最後にナレーションで”真実”を語らせるあたり、説明台詞とナレーションを批判する伝統への挑戦という感じがしなくもない。
テクニックとずるさと反骨精神とですっかり魅入られる一方で不満もあるにはある。
被害者側ももっと描いて欲しかった。
主人公の元恋人の隣に決まって座っている傍聴マニアが、最初に元恋人を観たときに何か意味ありげな反応を見せたこともあって後々何らかの展開があるのかと思ったら、何もない。
主人公と友人と元恋人と母親との関係に特に変化も見られない。
こういうところに物語作りを途中で放棄したような印象を受けるのだが、物語性を極力排していくのが意図するところだというのはよくわかる。
裁判は儀式のようなもので、それまでの証拠固めとか証人探し、説得、生活への圧迫とかそういう裁判以外の部分の方がよほどドラマチックなのだろうが映画は裁判シーン中心で進む。
無機質な儀式である裁判を強調して裁判制度に疑問を投げかけるために効果的であり、かつ色々描かないことで2時間程度の尺におさめて興行的な安定も確保できる。
裁判の雰囲気のみならず、テクニックと興行も冷静に分析して作り上げた、血も涙もないマシーンのような印象の映画として強い印象を残す。
*******
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
観てからだいぶたってしまったが・・・
なんとなく感想が書きにくいというか、この映画に対する態度を少しの間保留したい・・・そんな衝動にかられる映画だった。
脚本が批判される要素の一つとして「説明台詞」というやつがある。
状況や設定や一般にはあまり知られていない事柄を台詞で説明すると、あんな不自然な台詞があるか・・と、批判される
そうは言っても説明は必要である。
そこでナレーションで説明する・・・という方法もあるが、ナレーションは「逃げ」だと脚本家たちは批判する。
スポーツ映画なら「実況中継」で説明ができるから楽だが、普通のドラマではそうもいかない
そこで、脚本家が説明台詞を自然な感じで俳優に喋らせるためにとる方法が、「物知りと無知のQ&A方式の会話」である。
「Shall we ダンス?」でのうろ覚えだが、こんな風な台詞があった
競技ダンス中、役所広司が他のペアとぶつかる
無知くん:「あ、あれは減点になるんじゃないですか?」
物知りさん:「バカ、あの広さの会場であれだけの人数が踊っているんだ。ぶつかるのは当たり前。礼義正しく振るまいダンスの流れを損なわないようすることで審査員にアピールできるんだ」
映画の観客への優しい配慮の台詞だが、物知りさんが”まったく何もわかってねえなお前は”とめんどくさそうに答えているので、台詞の流れも自然に感じる。
そんなQ&Aタイプの説明台詞大得意の周防監督と、難しい法律用語が横行する裁判映画という題材はベストマッチングと言えるだろう。
弁護士と一般人という人物設定は自動的に無知な皆さんへの判りやすい裁判講座となるし、そもそも裁判というやつがQ&Aを基本として展開するものだ。
すべてがQ&Aで構成されているような本作。「不見当」なんて用語がわかり、「当番弁護士」って制度の存在も教わり、痴漢被害者は傍聴席と隔てられることの説明も受け、ちゃんとスパッツはいてきたお尻触ってもそれは再現実験以外の何ものでもないよ・・・ということも教えられ、性犯罪専門の傍聴マニアは最低の人間で、”無罪”を出したがる裁判長は国家権力に歯向かう故に左遷されやすいことまでよくわかりました。
Q&Aで埋め尽くして90%の客観的真実の中に10%の主観と個人的思想を混ぜてくるそのテクニックはすごいと思う。
そして徹底的にQ&Aで物語を進めながら、最後にナレーションで”真実”を語らせるあたり、説明台詞とナレーションを批判する伝統への挑戦という感じがしなくもない。
テクニックとずるさと反骨精神とですっかり魅入られる一方で不満もあるにはある。
被害者側ももっと描いて欲しかった。
主人公の元恋人の隣に決まって座っている傍聴マニアが、最初に元恋人を観たときに何か意味ありげな反応を見せたこともあって後々何らかの展開があるのかと思ったら、何もない。
主人公と友人と元恋人と母親との関係に特に変化も見られない。
こういうところに物語作りを途中で放棄したような印象を受けるのだが、物語性を極力排していくのが意図するところだというのはよくわかる。
裁判は儀式のようなもので、それまでの証拠固めとか証人探し、説得、生活への圧迫とかそういう裁判以外の部分の方がよほどドラマチックなのだろうが映画は裁判シーン中心で進む。
無機質な儀式である裁判を強調して裁判制度に疑問を投げかけるために効果的であり、かつ色々描かないことで2時間程度の尺におさめて興行的な安定も確保できる。
裁判の雰囲気のみならず、テクニックと興行も冷静に分析して作り上げた、血も涙もないマシーンのような印象の映画として強い印象を残す。
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