個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
2009年現在において、最も新作が期待されるアニメ作家は誰か?と問われると、私は「原恵一」か「今敏(こんさとし)」か、「細田守」のいずれかと答える。(これに「新海誠」を加えて四天王としたいところだが)
子供映画を隠れ蓑に大人向け映画を作る原恵一と、一度はアニメを卒業した元アニメ好きの大人たちを再び引き戻そうとするかのような今敏。ともにオトナ狙いのアニメ作家だが細田は現役アニメっ子狙いで、中高生以上をメインターゲットにしながら、大人も小学生でも楽しめる、長男長女が割りと大きくなったが弟妹はまだ子供なファミリー層を狙っている気がする。
とすると原、今、細田の三氏でそれぞれ別々のターゲットを狙っている感じがする。
全世代対応の巨大帝国ジブリへの直接攻撃は無謀なので、帝国の領域を、三人でそれぞれ担当領域を決めて切り崩しにかかっている状況のようだ。
ともあれ傑作「時をかける少女」で一気に注目の高まった細田守監督の最新作が「サマーウォーズ」である。
暴力描写はOZ世界のデフォルメキャラたちに行わせることでソフトに・・・
OZ世界も判りやすい説明を冒頭に付けて、しかも難しい専門用語はできるだけ避けて・・・
Hな描写も家族連れが不快に思わないギリギリラインをついて・・・
中高生を中心としたファミリー層全世代対応への配慮がよく行き届いている感じで、ヒット狙いの勝負に出た印象がある。
長野県民的にはご当地映画の趣きもあり、映画館はめずらしくほぼ満員状態だった。
漫画やアニメでしかあり得ないようなご都合主義とか、漫画やアニメでしかあり得ないような「にわかには信じ難いカミングアウト」を一瞬で信じきって喧嘩が始まってしまうところとか、突っ込みたくなる部分もあるのだが、「別にいいのか・・・漫画やアニメだもん」と思い直す。
ただそういう割り切った豪快な脚本は、話のテンポアップにつながる。リアリズムに徹してそれっぽく描くこともできるけどそんなの別に面白くないでしょ、と言わんばかりに物語は見たい物を見たい時に見せてくれる。
多少ひっかかったのはヒロイン夏希ちゃんのキャラ造形。陽気で明るく、ネクラ男を引っ張りまわし、ちょっと気に入った男の子には平気でボディタッチしたり、抱きついたり、悲しくなると指を握ってと頼み、握られたままわんわん泣き出す。すでに消えそうなギャグをあえて使わせていただくと「ほれてまうやろ!!」(※)状態である。
(※・・・2008~2009年に人気のあったWエンジンというお笑い芸人の持ちネタ・・・と書いとかないと、来年以降にこの記事読み返したとき、何だっけ?誰のネタだっけ?と疑問に感じそうなので)
男性的意見なので間違ってるかもしれないが、異性に好かれるが同性に嫌われそうな娘だなぁ・・・と思った(男に媚びる感じが、ただし妻によると別に同性に嫌われる感じはしないと言う)。ただしクライマックスで1億近いアバターが夏希に力を貸すご都合主義的展開を「夏希が美人だからだ!!」の一言で理由付けする強引かつ豪快さは、個人的にとっても大好きだ。その伏線としてのキャラ造形だったと思えば夏希ちゃんを許し認めようと思った。
他にもキング・カズマとラブマシーンの決着はちゃんとガチで決めてほしかったとか、4億ものアバターを支配しているラブマシーンなら花札の天才の一人くらい支配しているんじゃないの?・・・などなど細かい不満や疑問はあるのだけれど・・・それでも流石の面白さにぐいぐいと引込まれていく傑作だった。
デジタルがいいとかアナログがいいとかでなく、確実にデジタル化の進む未来では両者の共存共栄が必要だと映画は訴える。
大家族みんなが映画内できっちりと役割を持って行動し、ピンチを作ったりチャンスを作ったりして話をかき回す。そして最後は皆の一致協力で巨大な敵「ラブマシーン」をやっつける。
仮想現実世界のファンシーな世界観のOZワールドと、緑に囲まれた田舎の陣内家との対比もメリハリがつき、「古き良き日本」と「新しき良き日本」は奇跡の結合を見せる。
ああ観て良かった・・・と、大満足の傑作アニメであった。
****************
[追記]
あれすかね
やっぱOZって、大家族を主人公にした本作だけに、「小津」へのオマージュって理解していいんすかね?
可愛くカラフルな世界観に「オズの魔法使い」を感じたりもするけど
********
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
2009年現在において、最も新作が期待されるアニメ作家は誰か?と問われると、私は「原恵一」か「今敏(こんさとし)」か、「細田守」のいずれかと答える。(これに「新海誠」を加えて四天王としたいところだが)
子供映画を隠れ蓑に大人向け映画を作る原恵一と、一度はアニメを卒業した元アニメ好きの大人たちを再び引き戻そうとするかのような今敏。ともにオトナ狙いのアニメ作家だが細田は現役アニメっ子狙いで、中高生以上をメインターゲットにしながら、大人も小学生でも楽しめる、長男長女が割りと大きくなったが弟妹はまだ子供なファミリー層を狙っている気がする。
とすると原、今、細田の三氏でそれぞれ別々のターゲットを狙っている感じがする。
全世代対応の巨大帝国ジブリへの直接攻撃は無謀なので、帝国の領域を、三人でそれぞれ担当領域を決めて切り崩しにかかっている状況のようだ。
ともあれ傑作「時をかける少女」で一気に注目の高まった細田守監督の最新作が「サマーウォーズ」である。
暴力描写はOZ世界のデフォルメキャラたちに行わせることでソフトに・・・
OZ世界も判りやすい説明を冒頭に付けて、しかも難しい専門用語はできるだけ避けて・・・
Hな描写も家族連れが不快に思わないギリギリラインをついて・・・
中高生を中心としたファミリー層全世代対応への配慮がよく行き届いている感じで、ヒット狙いの勝負に出た印象がある。
長野県民的にはご当地映画の趣きもあり、映画館はめずらしくほぼ満員状態だった。
漫画やアニメでしかあり得ないようなご都合主義とか、漫画やアニメでしかあり得ないような「にわかには信じ難いカミングアウト」を一瞬で信じきって喧嘩が始まってしまうところとか、突っ込みたくなる部分もあるのだが、「別にいいのか・・・漫画やアニメだもん」と思い直す。
ただそういう割り切った豪快な脚本は、話のテンポアップにつながる。リアリズムに徹してそれっぽく描くこともできるけどそんなの別に面白くないでしょ、と言わんばかりに物語は見たい物を見たい時に見せてくれる。
多少ひっかかったのはヒロイン夏希ちゃんのキャラ造形。陽気で明るく、ネクラ男を引っ張りまわし、ちょっと気に入った男の子には平気でボディタッチしたり、抱きついたり、悲しくなると指を握ってと頼み、握られたままわんわん泣き出す。すでに消えそうなギャグをあえて使わせていただくと「ほれてまうやろ!!」(※)状態である。
(※・・・2008~2009年に人気のあったWエンジンというお笑い芸人の持ちネタ・・・と書いとかないと、来年以降にこの記事読み返したとき、何だっけ?誰のネタだっけ?と疑問に感じそうなので)
男性的意見なので間違ってるかもしれないが、異性に好かれるが同性に嫌われそうな娘だなぁ・・・と思った(男に媚びる感じが、ただし妻によると別に同性に嫌われる感じはしないと言う)。ただしクライマックスで1億近いアバターが夏希に力を貸すご都合主義的展開を「夏希が美人だからだ!!」の一言で理由付けする強引かつ豪快さは、個人的にとっても大好きだ。その伏線としてのキャラ造形だったと思えば夏希ちゃんを許し認めようと思った。
他にもキング・カズマとラブマシーンの決着はちゃんとガチで決めてほしかったとか、4億ものアバターを支配しているラブマシーンなら花札の天才の一人くらい支配しているんじゃないの?・・・などなど細かい不満や疑問はあるのだけれど・・・それでも流石の面白さにぐいぐいと引込まれていく傑作だった。
デジタルがいいとかアナログがいいとかでなく、確実にデジタル化の進む未来では両者の共存共栄が必要だと映画は訴える。
大家族みんなが映画内できっちりと役割を持って行動し、ピンチを作ったりチャンスを作ったりして話をかき回す。そして最後は皆の一致協力で巨大な敵「ラブマシーン」をやっつける。
仮想現実世界のファンシーな世界観のOZワールドと、緑に囲まれた田舎の陣内家との対比もメリハリがつき、「古き良き日本」と「新しき良き日本」は奇跡の結合を見せる。
ああ観て良かった・・・と、大満足の傑作アニメであった。
****************
[追記]
あれすかね
やっぱOZって、大家族を主人公にした本作だけに、「小津」へのオマージュって理解していいんすかね?
可愛くカラフルな世界観に「オズの魔法使い」を感じたりもするけど
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僕も観ました。
出稼ぎ先の西宮の映画館で。
ジブリの鈴木さんが四年前に予言していた「物語の復権」ということを感じました。細部には違和感を大いに感じましたが、テンポよく見せる映画が今求められているように思います。
僕も今新しい脚本を書いていまして一部分刺激を受けました。
暑い日が続きますがどうかご自愛ください。
韓国映画はみますか?イビョンホン主演のGOODBADWEIRDという映画がおすすめです。試写会に行ったのですがおもしろかったですよー
http://gbw.jp/top.html
ご住所もメルアドも変わられたみたいで年賀状も届かず、「猫とり」の後に作った映画も送ろうと思っていたのですがそれも果たせないままでした
書き込みいただけてとても嬉しいです。やっぱり映画を作りつづけていたんですね。脚本を次々書けるそのバイタリティがうらやましいです
私も最近やっと脚本を書き始めました。サマーウォーズ以上に佐々木様の書き込みが刺激になりました。
(そういえば以前、脚本をいただきましたね)
メールなどいただけますと幸いです
それでは、佐々木様も暑さに負けず映画を創り続けてください
ところで「mina」ってあのmina?
今までアニメを毛嫌いしていた自分に反省です。。。
アニメはバカにできませんよ
とくに2000年以降
細田監督の「時をかける少女」、もし未見でしたら是非とも御覧下さいな
アニメ作家四天王!なるほど、と思いました。
細田守の『サマーウォーズ』は、8月1日映画の日に家族4人で窓口に並んでいるのを見かけ、微笑ましく感じました。
こちらの分析どおりに「上はちょっと大きい、下はまだ子供なファミリー層」でした。確かに(笑)
観て良かったです!この夏アニメは面白かったです(^^)
コメントありがとうございます
たくさんTBいただきありがとうございます。
しょうもないことばかり書いているブログですが、少しでも喜んでいただけて光栄です
原監督→「小さい子供とオトナ」
今監督→「元コドモ、現オトナ」
細田監督→「上はちょっと大きい、下はまだ子供なファミリー層」
という感じでやっぱ良さそうですね
あとは「中高生だけ」領域と、「高齢者含む」領域を攻める監督が現れれば、ジブリ包囲網は完成です。