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國民の創生 [監督:D.W.グリフィス] 映評 第1回

2009-08-21 19:56:59 | ビデオ・DVD・テレビ放映での鑑賞
発明王エジソンによる「映画の発明」が1891年。アメリカ人はこの年を「映画元年」としたがる。
リュミエール兄弟がパリで史上初の「映画上映会」を開催したのが1895年。アメリカ以外の国では一般にこの年が「映画元年」とされる。
アメリカ暦で映画世紀24年、フランス暦で映画世紀20年にあたる1915年に、史上初の長編映画(100分を越えるという意味)がアメリカで作られた。それがD.W.グリフィス監督の「國民の創生」である。
映画を観るというより、発掘した遺跡に描かれていた壁画を眺めるのと似たような気分での鑑賞となる。

鑑賞したDVDの作品時間は150分ほど(オリジナルは3時間近かったらしい)。二部構成になっていてリンカーン暗殺をクライマックスとした南北戦争の歴史スペクタクルの前編と、戦争後の南部の再建の時代を描いた後編とに分かれる。
もし映画が前編部分で終わっていれば、作品はさして物議をかもすことなく、グリフィスという人物は誰はばかることなく「映画草創期を支えた監督の1人」として紹介されたことだろう。
しかしながら、本作において演出が冴えに冴え渡り、後世に続く様々な映画技法の礎を築いたのは後編である。前編は技巧面においてはさして見るべき部分はない。後編がなければグリフィスが「アメリカ映画の父」と呼ばれることは無かったかもしれない。

グリフィスの映画を観るのは実は初めてである。あまりにもビッグネームなのでどういう知識としてどういう人物か知っていた。「國民の創生」という映画が物議をかもしたものであることも知っている。
彼の作品を一つも観ていない段階での知識で、グリフィスの説明をしてみる。

・デビッド・ウォーク・グリフィスは、「アメリカ映画の父」と言われる。映画草創期の20世紀初頭から活躍していた監督である
・「別々に撮った複数の映像を編集して劇的効果を高める技法」のパイオニアである
・まれにエイゼンシュテインの作品をして「世界で初めてモンタージュを取り入れた」と紹介する解説文があるが、エイゼンシュテインはモンタージュを理論として確立しただけで、映画による実践はグリフィスがエイゼンシュテインの10年以上前に行っている(エイゼンシュテインのデビュー作は1925年、グリフィスの「國民の創成は」1915年、「イントレランス」は1916年)。
・「國民の創成」はグリフィスの代表作の一つであり、南北戦争期のアメリカを描いた歴史スペクタクルドラマである。
・映画後編で、現代では人種差別主義者の政治結社として忌み嫌われる「クー・クラックス・クラン」が、國民を守るヒーローとして登場する。
・作品におけるKKKの扱いにより、現代はもちろん公開当時でさえ批判され物議をかもしたと言われる。
・全米映画監督協会は長年にわたり「映画の父」の名を冠した「D.W.グリフィス賞」を映画界に貢献した人物に功労賞として贈呈してきたが、近年になって、「『國民の創成』を撮ったような差別主義者の名はこの賞に相応しくない」として名前が変更された。
・話はそれるが、ジャック・ニコルソンは上記の「D.W.グリフィス賞という名前に反対」議論を冷ややかに見ていて、名前変更に反対だったと記憶している。
・話それついでにジャック・ニコルソンがらみで続けると、アカデミーがエリア・カザンに名誉賞を贈ると発表したとき、「赤狩りに屈して多くの映画人の名前を密告して、自らは業界に生き残った」カザンの名誉賞に反対する声が沸き起こり、彼が壇上に現れてもスタンディングオベーションはもちろんのこと拍手もやめよう・・・という運動が起こった。そしていよいよカザンが名誉賞受賞のためステージに登場すると、スピルバーグなんかは座ったまま迎えた(お座なりの拍手はしていた)のに対し、ニコルソンは満面の笑みでスタンディングオベーションしていた。
・ちなみにそのときエリア・カザンへのプレゼンターを務めたのはマーティン・スコセッシである。彼は後に「ディパーテッド」でアカデミー監督賞を受賞した際、プレゼンターのスピルバーグ(コッポラとルーカスもいたが)に「長年の友人から手渡されて嬉しい」とスピーチ。
・そのスピルバーグは今リンカーンの伝記映画を準備中だという。自身の作品に様々な映画史の断片を刻印してきたスピルバーグはリンカーン映画に「國民の創生」へのオマージュを見せるのだろうか?カラーパープルやアミスタッドを撮った人種差別と戦う映画人の誇りにかけて「國民の創生」を黙殺するのか?非常に興味深い。話がそれたと思ったら奇跡的に「國民の創生」に戻ってきた。
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次の記事から、おおよそ物語りに沿って、思ったところをぐだぐたと書く

「國民の創生」映評 第2回
「國民の創生」映評 第3回

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