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「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と「河童のクゥと夏休み」

2009-01-12 09:15:38 | ビデオ・DVD・テレビ放映での鑑賞
小学低学年~保育園の子供ら3人のお守りをすることになり、なるべく金をかけずに済ませようと、DVDレンタルをすることになった。どうせなら大人も楽しめるものにしようと、原恵一の傑作と名高い2作品「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と「河童のクゥと夏休み」をチョイス。
子供よりむしろ大人の方が楽しめたアニメ観賞となった。

「クレしん」映画版の観賞は二作目。テレビ版も原作もほとんど観たことなく、そうは言っても有名アニメだからとりあえずの基礎知識くらいはもっているレベル。
実は先月、同じ子供たちの付き合いでビデオにてクレしん劇場版第8作「嵐を呼ぶジャングル」を観たのだが、これがけっこう面白かった。ドタバタ活劇で、監督はやはり原恵一で。
それで今回、クレしん最高傑作と評判のオトナ帝国を見ることにしたのである。

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「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

2001年の作品である。2001年といえば9.11の年であるが、映画で言えば「千と千尋の神隠し」の年だ。映画賞は「GO」と「千と~」が分け合った年だ。個人的にも人生でもっとも多くの邦画を観賞した年で、「リリィ・シュシュのすべて」「害虫」「風花」「回路」「三文役者」などが印象ぶかい年だった。
だが当時は子供向けテレビアニメの映画版になど全く興味がわかず「クレしん」はスルーした。思えばもったいないことだった。観ていたらその年のベストワンに近い位置まで来ていたかも知れない。

2005年の「ALWAYS三丁目の夕日」を彷彿とさせる夕日の昭和の下町を模した20世紀博の会場。
20世紀博のリーダーでオトナ帝国により日本をあの時代に戻そうとするケンは「夕日は人を懐かしい気分にさせる。だからこの街はいつも夕日なのだ」と語る。彼はオトナたちを昭和の懐かしい臭いで洗脳していく。ケンの計画を映画制作に置き換え、昭和懐かしオトナ洗脳計画を実行したのが「ALWAYS」の山崎貴ではないかと思ってしまった。
しかし本作は郷愁ばかりを前面に押し出した「ALWAYS」を越えている。
しんちゃんの友達の風間くんは「懐かしいってそんなに面白いのかなあ・・・」とノスタルジーに夢中になるオトナたちを冷めた目で見る。
20世紀の郷愁に洗脳されたしんちゃんの父ひろしは、現在の臭い(ひろしの靴の臭い)で洗脳から解ける。そしてケンに「俺は家族と未来を生きる」と言い放つ。しんちゃんも「オラは大人になりたいんだ。オネーさんみたいな綺麗な人といっぱいお付き合いしたいんだ」とその眼差しは過去ではなく未来に向けている。
あの時代は良かった・・・なんて嘘くさいメッセージは無い。あの時代は良かったが、だからって後戻りはしない、今はもっといいし、未来はさらに良くしなければならない・・・とこの映画は語りかける。
ノスタルジーだけで固めた「ALWAYS」と異なり、むしろアンチ・ノスタルジーを宣言した映画と言えなくもない。
(山崎貴も恐らく「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」を観ているだろうから、この映画のオトナたちを見てヒット狙えると思ったのかも知れない。だとすると商売人としてはもの凄くしたたかだ)
子供を連れて観にきた大人たちがボロボロ泣くであろう名シーンがひろしが自分の人生を回想するシーンだ。「ある時代」「ある時点」ではなく生まれてから現在に至るまでの「人生すべて」を讃える。そしてそれはその後のケンと対決するひろしの「俺の人生、つまんなくはなかったぜ。」という台詞も活かす。
しかし、このシーンは一緒に観ていた子供たちのウケは良くなかった。
バスチェイスや東京タワーの鉄骨上のアクションでは大喜びしていた子供たちもひろしの回想では「長いね~」と退屈していた様子。
その子供たちの反応に、20世紀博に夢中になるひろしとみさえに不平をたらすしんのすけの姿を思い出した。
なんだか感動部分ばかり強調した感想だが、アクションシーンはどれもこれも最高で、ドタバタ活劇としても単純に面白い。

ともかく冒頭、中盤、クライマックスとバランス良くアクションシーンが配され、ギャグも満遍なく、子供にとってはところどころに中だるみを感じるかも知れないが概ね満足する作品。
大人にとっては昭和ノスタルジーをおとりに引き寄せられて、気がつけば今を共に生きる家族たちへの愛を再認識させられる素晴らしい名作。
原恵一が監督した他のしんちゃんも観てみようと思った。
この次作にあたる「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」もものすごく評判がいいので今度観ようと思う。

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「河童のクゥと夏休み」
個人的評価: ■■■■■□

これもまた傑作で・・・ただし、こちらはもっと大人向け。
冒頭から侍に惨殺される河童のとうちゃん、というショッキングなシーンに始まり、主要キャラが死ぬ、ペット虐待、カラスを内部から破壊し返り血を浴びる市民・・・など、子供にはハードな描写が散見される。
上映時間も130分と長く、クレしんのようにアクションシーンはないしギャグも少ないから、子供の集中力は持たないだろう。(そうはいってもいつもうるさい4才の子供は130分間じっと観ていた。6歳の子と9歳の子は途中で飽きて走り回ったり遊び始めたりした・・・が一応最後まで観た)

河童を拾った少年とその家族たちの一夏のドラマ。130分という長い時間に様々なエピソードが盛り込まれ、連続放送のアニメを1シーズン観きったような充足感が得られる。
冒頭シーンこそ惨殺場面で引いてしまうのだが、エピソードを積み重ねるおかげで終盤になるとクゥと少年と共に過ごした時間が利いてきて、自然と2人を応援している。
冒頭のエピソードも含め、あれやこれやはちゃんと後半で伏線として活かされ無駄もない。
少年の成長があり、ちょっとほろ苦い恋もある。クゥと2人だけで旅行に出かける子供を見送り「ふりかえりもしない」と涙ぐむ母親。こういうところは普通にドラマ演出として上手い。

クゥを上原家から去らせながらも、上原家の面々をして「人間の友達」と言わせるところに、種としての人間の業の深さと、個としての人間への深い愛が同時に描かれている。
独りの不安をいかに克服して運命を受け入れるか・・・がテーマだった気がした。オッサンの飼い主、オッサン、康一、菊池、そしてクゥ。みな仲間を失い、仲間を欲する。オッサンの飼い主はともかく、オッサンと康一と菊池とクゥはそれ故、惹かれ合う。そして彼らは、独りになる恐れに、精神の絆で打ち克つのである。
小学校高学年くらいの子供に、子供映画から大人映画への過渡期作品として見せるのにいいかもしれない。
「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」と続けてみたので、東京タワーがらみの同じようなシーンが面白かった。調べてみるとずっと以前からクゥの映画化を考えていた原恵一が、クゥ用のネタを「クレしん」で小出しにしていたという。

子供よりも夢中になって原恵一に魅せられ続けた一日だった。

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ちなみにもう一本、「ファインディング・ニモ」も観賞。子供たちは「ニモ」を昨日観ていて、今日もまた観たいと言って、「クレしん」と「クゥ」の間に観た。子供に一番面白かったのは2度目にも関わらず「ニモ」だったようだ。
「オラつまんね~、ニモ観たいぞ~」
「そんなものよりクゥを観ろ、こっちの方が面白いぞ」
という、「オトナ帝国」の一場面のような会話が心の中で交わされていた。

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センゴク (aq99)
2009-01-12 21:33:57
私は、「戦国大合戦」の方が好きなんですが、山崎貴監督の次作は、これの実写リメイクでしたね。

それより、コドモと一緒に見てで気が散ったりしなかったんですか?
スゴイ!
ウチは、大事な作品はひとりで見てから、後で一緒に見るようにしてます。


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コメントどうもです (しん)
2009-01-26 19:13:04
>aq99さま
すげー
やっぱり、オトナ帝国観ながら三丁目作ったんだ
なんて抜け目無いやつだ

大人が真剣モードだとコドモもなんとなく察してくれるのか、単にオトナが入り込みすぎてコドモが何やってても気にならなかったのか

なんにせよ原恵一は子供映画ぶらないで普通にカンヌとかベネチアとか狙ってほしいです
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