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映像作品とクラシック音楽 第38回『マイノリティ・リポート』でスピルバーグはなぜクライバーとアバドを選んだか!!?

2021-10-15 09:14:59 | 映像作品とクラシック音楽
クラシック音楽が印象的な映像作品について語り倒すシリーズ第38回は、スピルバーグ監督によるゼロ年代SF3部作(?)の一つで、トム・クルーズがシューベルト「未完成」にのって全身で操作しなきゃならないめちゃくちゃ疲れそうなUIの未来のコンピューターを操作する映画『マイノリティ・リポート』です


スピルバーグ映画というのは、基本的にジョン・ウィリアムズの音楽がこれでもかと鳴り響き、既成曲を映画の中に入れてくること自体あまりなく、あっても目立ちません。
クラシック音楽を劇中に取り入れた例で言うと、『太陽の帝国』でのショパンのマズルカとか、『シンドラーのリスト』でドイツ兵がバッハを弾いていたりしましたが、印象的だったかと言われるとそうでもありません。

その点では『マイノリティ・リポート』はいつもと逆で、ジョン・ウィリアムズの音楽が全編でなり続けているのは同じですが、明確なメロディのない所謂アンダースコアに徹していて、ウィリアムズ史上もっとも音楽が印象に残らない作品になっていて、逆に使用箇所こそ少ないもののクラシック音楽の引用が妙に印象深くなりました


映画が始まって2分くらいで早くもクラシック音楽が聞こえてきます
犯罪予知システムのコンピューターをトム・クルーズが操作するシーンです。
コンピューターといっても画面は空中に表示され、画面サイズは何インチとかいうより、畳にして6畳くらいはあろうかという大きさです。そこに予知能力者が見た未来映像が次々と映し出されます。スマホのタップやスワイプのような指先だけで操作できるようなものではなく、トムは姿勢よくすっくと立って全身をつかうように腕を大きく振ったりしながら画面を操作します。
その姿はまるでオーケストラの指揮者のようです。それだからかトムがコンピューターを操作するときに、シューベルトの「未完成交響曲」がかかるのです。

未完成交響曲にのって予知画面を操作して殺人現場と犯人を割り出したトムは、現地に急行し、間一髪のところで殺人を未遂で食い止めることに成功します。

その後トムは一人暮らしの自宅に帰宅しますが、自宅ではチャイコフスキーの交響曲6番「悲愴」が自動的に再生されてトムを出迎えます。どうもクラシック音楽が好きって設定のようで、だからコンピューター操作シーンの「未完成」も劇伴音楽というよりはトムが気分を乗せるために職場で流していたのかもしれないですね

さて、新たな殺人予知が行われて、トムはまた「未完成交響曲」にのって、指揮者のように腕を振りながら映像捜査をします。・・・が、なんと今度の未来殺人の犯人はトム自身だったのです。この驚くべき事実にぶち当たる際に、「未完成」がものすごい効果を出しており、音楽の高まりとピタリシンクロして、トムが自分自身に降りかかる驚愕の未来を知る様が描かれます。
なぜ「未完成」をこのシーンでチョイスしたのでしょうか?それは多分、まだ起こっていない未来の事件、個人の意思により変えることもできるかもしれない未来…というわけで「未完成」というタイトルと何かリンクするところがあったのでしょう。
トムの家で流れる「悲愴」は彼の、息子を失くし妻と別れた過去とのリンクを考えてのことかもしれません。


しかし、今作の場合、その曲のチョイス以上に気になるのが、使用音源のチョイスです。
本作で使われる「未完成交響曲」ですが、エンドクレジットによると、カルロス・クライバー指揮ウィーンフィルの演奏です。
チャイコ「悲愴」はクラウディオ・アバド指揮ウィーンフィルです。
超々名曲の「未完成」と「悲愴」です。星の数ほどある録音の中から、スピルバーグはどうしてクライバーとアバドを選んだのでしょうか?ユダヤつながりでバーンスタインでもよさそうなもんですが。

完全に私の想像ですが…クライバーとアバドって(若いころは)指揮者界を代表する二大イケメンだったと思うんですね(個人の感想です)。なんとなくトム・クルーズに似てると言えば言えなくもないというか、少なくともショルティやムラビンスキーよりはトムっぽいように思えます。つまり見た目重視で、この二人の演奏をチョイスしたんじゃないかなぁ…
というくだらない妄想でした。


そんなところで今回はこの辺で
また素晴らしいクラシック音楽と映像作品でお会いしましょう!!

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