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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

歴代データによるアカデミー賞予想・作品賞と他部門の関係

2015-01-20 01:51:26 | 映画賞
第87回2014年度のアカデミー賞のノミネートが発表されました。年一回のお祭りに向けて映画ファンはざわついていることと思います。一番私がざわついているのですけどね。
さて、私も多くの映画ファンと同じく受賞予想なんかしているのですが、過去86回の傾向から作品賞と他部門の相性を調べて、そこから作品賞受賞予想をしてみようと思いました。
そうすると受賞予想以外にも色々と意外な分析結果が導き出されて、思った以上に楽しい調査となりました。
暇な映画ファンによる分析結果をお楽しみ頂けたら幸いです。
 

【アカデミー作品賞と監督賞の関係】

 
アカデミー賞86回の歴史で作品賞と監督賞が一致したのは63回。
もっと重要なのは監督賞にノミネートされずに作品賞を受賞したケースはたったの4回しかないということです。
当たり前ではありますが作品賞ともっとも相性のよい部門が監督賞です。
ただしここ16回においては作品賞と監督賞が一致しなかったことが6回もあり、特に前々回で「アルゴ」が監督賞ノミネートを逃しながら作品賞を受賞するという珍しいケースになったため、監督賞の予想も監督賞ノミネートだけを根拠に作品賞を予想することも難しくなっています。
とは言え、監督賞にノミネートされることが作品賞受賞の第一関門とみてまず間違いないでしょう。
 
 
【アカデミー作品賞と脚本賞の関係】
 
ここでいう脚本賞とは、オリジナル脚本賞と脚色賞、および戦前期の原案賞をあわせたものです。
ダメな脚本からよい作品が産まれるはずはなく、脚本部門も作品賞との相性が良いことが予想できます。
実際調べてみると作品賞と一致したケースは86回の歴史で56回ありました。
また脚本部門でノミネートされずに作品賞を受賞したケースは8回しかありません。
ちなみに直近で脚本部門ノミネートされずに作品賞受賞のケースは1997年度の「タイタニック」ですから16回連続で作品賞受賞作は脚色かオリジナル脚本のどちらかで少なくともノミネートはされています。
なお、タイタニックより前になると1965年度の「サウンド・オブ・ミュージック」までさかのぼります。
つまり60年代以降で考えれば脚本部門ノミネートも作品賞受賞のほぼ必須要件と考えてよいでしょう。
それにしても「サウンド・オブ・ミュージック」なんて超名作が脚本賞にノミネートされていないなんて驚きますね。
 
【アカデミー作品賞と演技部門の関係】
 
よい作品でよい監督でよいホンなら役者がのるのも当たり前ってわけで、演技部門と作品賞の相性も良いだろうと予想します。
調べてみると、主演部門つまり主演男優賞と主演女優賞のどちらかと作品賞が一致したケースは86回の歴史で36回しかなく、主演部門でノミネートされずに作品賞を受賞したケースは20回もあって、強い関係性は読み取れません。
ただし、助演賞も含めて演技関係4部門まで拡大すると、作品賞と演技4部門のどれかでセット受賞したケースは51回と脚本部門に匹敵する相性の良さがあります。
また、演技4部門にひとつもノミネートされずに作品賞を受賞したケースは11回しかありません。ただしこのケースは直近では珍しくありません。「スラムドッグ$ミリオネア(2008)」「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還(2003)」「ブレイブハート(1995)」「ラスト・エンペラー(1987)」がそれに当たります。
ついでに男優部門と女優部門別に作品賞との相性を調べてみたら面白い傾向が見えてきました。
男優部門(主演男優賞と助演男優賞のどちらか)と作品賞のセット受賞は40回。男優部門ノミネートなしで作品賞を受賞したケースは17回。
対して女優部門と作品賞のセット受賞は21回。女優部門ノミネートなしで作品賞受賞のケースは40回。
作品賞との強い因果関係はありませんが、数字の上からは明らかにアカデミー賞では「男の映画」が強い傾向が見えてきます。なんだかんだでハリウッドは男社会なのかもしれませんね。
 
【アカデミー作品賞と撮影賞の関係】
 
よい映画にはよいカメラがつきものと考えて、作品賞と撮影賞の相性も調べてみました。
ところが作品賞との一致はたったの25回。撮影賞ノミネートされずに作品賞受賞したケースは32回もあって、作品賞と撮影賞の間に相関は読み取れませんでした。
 
【アカデミー作品賞と編集賞の関係】
 
私がアカデミー作品賞受賞予想において、近年もっとも重視しているのが編集賞です。
作品賞とのセット受賞こそ34回しかありませんが、編集賞でノミネートされずに作品賞を受賞したケースはたったの9回しかありません。しかもそのほとんどが70年代以前のことです。
 編集賞ノミネートなしで作品賞を受賞した最後のケースは1980年度の「普通の人々」で、以来33回連続で編集賞ノミネート作品の中から作品賞受賞作が選ばれています。
監督賞ノミネートなしでの作品賞受賞が2回前にあり、演技部門ノミネートなしが6回前、脚本部門ノミネートなしが16回前にあったことを考えれば近年においてはもっとも作品賞と相性のいい部門ということになります。
編集の良し悪しが専門家以外にどこまでわかるのか?とか、編集者のセンス・技術と、プロデューサーや監督からの指示のどちらが強いのかなど疑問は感じる部門ではありますが、ポストプロダクションでもっとも重要な仕事に間違いはなく、編集という仕事を表彰すること自体は素晴らしいことだと思います。
そして編集は映画の仕上げの品質を決める仕事であり、作品的な評価に直結するのもよくわかります。
 
【データ分析結果から2014年度の作品賞受賞を予想】
  監督 脚本 主演&助演 編集
アメリカン・スナイパー ×
バードマン ×
6才のボクが、大人になるまで。
グランド・ブダペスト・ホテル ×
イミテーション・ゲーム
Selma × × × ×
博士と彼女のセオリー × ×
セッション ×

 

さて上記データから作品賞にもっとも近いのは、監督、脚本部門、演技部門、編集の4つからノミネートを出している作品と言えます。
該当するのは「6才のボクが、大人になるまで。」と「イミテーション・ゲーム」となります。他の映画賞の結果も踏まえると最有力は「6才の…」と考えます。
ノミネート数最多の「グランド・ブダペスト・ホテル」は監督、脚本、編集でノミネートされていますが、演技部門でノミネートがないので上記二つよりやや不利でしょうか。ただし観ればわかることですがこの作品は演技力がどうこうという作品ではありません。演技部門でノミネートがないからといって「6才…」と比べて大きく遅れをとっているとは思えません。
「グランド・ブダペスト・ホテル」と並んでノミネート数最多の「バードマン」は監督、脚本、演技部門でノミネートを出していますが、編集賞でノミネートから外されているため私は作品賞はないと見ています。ただし、この作品を見たわけではないのですが聞くところによると「ワンカットで撮ったかのような映像が素晴らしい」とのことなので、ワンカット映像ならば編集の評価と作品評価は無関係でしょう。それに33年続いたジンクスもそろそろ破られていい頃かもしれませんし、やはり有力候補には違いありません。
監督賞ノミネートのない「アメリカンスナイパー」と「セッション」は不利には違いないですが編集賞にはノミネートされてますし、前々回の「アルゴ」の例があるので可能性はが低いわけではありません。
一方で監督賞と編集賞でノミネートから落ちている「博士と彼女のセオリー」と「Selma」の作品賞受賞はまずないとみていいでしょう。
ところで作品賞ノミネートは逃しながら監督、脚本、演技部門でノミネートされている「フォックスキャッチャー」という映画が受賞結果とは関係なく興味をそそられますね。
ともあれ、私は自分の分析結果を信じて作品賞受賞は「6才のボクが、大人になるまで。」と予想します。
 
ついでに根拠は薄いですが他部門の予想もしてみましょう
 
監督 「6才の…」
脚本 「フォックスキャッチャー」
脚色 「セッション」
主男 「博士と彼女のセオリー」
主女 「ゴーン・ガール」
助男 「セッション」
助女 「6才の…」
撮影 「バードマン」
美術 「グランドBH」
衣装 「グランドBH」
音楽 「グランドBH」
歌曲  「LEGO」
編集 「6才の…」
録音 「インターステラー」
音編 「インターステラー」
視覚 「インターステラー」
メイク 「グランドBH」
外国 「イーダ」
長アニメ 「かぐや姫」
 
さて今年のアカデミー賞では波乱があるのでしょうか?
授賞式を楽しみに待ちましょう!
 
 

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