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「みんなで過労死を考えるつどい ~ブラック企業対策としての過労死防止基本法~」の報告です!(前半)

2013-05-30 16:51:44 | 活動紹介

先日、5月11日に、京都で「みんなで過労死を考えるつどい」が開催されました。
今回はイベントに参加した学生からの報告です。長くなりましたので、前後半で分割しています。

5月11日、京都アスニーで過労死防止基本法制定・京都実行委員会による「みんなで過労死を考えるつどい」が開かれました。


開会の挨拶では、京都実行委員会の委員長、脇田滋龍谷大学教授が、安倍政権で議論されている解雇規制緩和や裁量労働制など、状況の悪化に対する懸念を表明しました。大手放送局がタレントに炎天下でマラソンをさせ、タレントが重度の熱中症で倒れたことが「自己責任」とされた事件に触れ、「まとも」とされる企業でも労働者を軽く見ている状況に対して声を上げていく必要性について訴えました。


次に、労働相談を受けているNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんが「ブラック企業 日本を食いつぶす」というテーマで講演しました。
(NPO法人POSSEのHPはこちら→http://www.npoposse.jp/

POSSEには、年間1000件をこえる相談が寄せられています。多くの若者は、自分が悪かったのだが自己都合退職になっては失業保険で不利になりどうにも生活していけない、と相談に来る。しかし、よく聞いてみると相談の背景には賃金未払いや長時間労働・パワハラがあり、会社の方に問題があることが多い。そこで、POSSEではその人が直面している問題を解決する方法を紹介し、解決までサポートしているのだそうです。しかし、相談が来るのは社会で起こっている問題のうちの氷山の一角でしかない。だからこそ、NPOは社会化、政策提言、問題提起をしていかなければならないと今野さんは強調します。

今野さんによると「ブラック企業」とは、まず第一に正社員の問題であり、第二に労働者が大量に採用され辞めていく、すなわち働き続けることができないという問題だということです。若者が、企業の新しい労務管理のあり方のせいで苦しんでいるのに、「若者が弱くなった、甘えている」といった言説によってそれが覆い隠されている、現場に向き合おうとしている人がいない、と怒りをこめて話していました。

ブラック企業は、辞める理由によって3つのタイプに分類できるそうです。

1つ目は、大量に採用した中から会社にとって都合のいい人間を選び取るために、社員を自己都合退職に追い込むというタイプ。POSSEに相談のあった派遣IT会社や、ウェザーニューズの過労死はその代表例にあたります。長時間労働をさせても生き残る人間だけを選別し、耐えられなかった者にはものすごい人格否定・人権侵害を行ってうつ病にしむけ、自分から辞めさせるのだそうです。

2つ目に、意図的に辞めさせるのではなく、過労やうつで働けなくなるまで、徹底的に社員を使いつぶす。つぶれたらまた雇ってを繰り返す。日本海庄ややワタミといった過労死を出している企業もこのタイプです。日本海庄やでは基本給に過労死ラインの月80時間分の残業代が組み込まれているほど長時間の残業が当たり前になっていますが、このような「固定残業代」制度で運用している企業は全く珍しくないそうです。

3つ目に、上司のパワハラなどがひどくても、会社自体もそれを容認しているといったような企業があります。いずれのタイプも新卒の価値の低下を示しており、若者を働けなくなるまで、時には死ぬまで使い潰すことをなんとも思っていない、ということをリアルな相談例を挙げながら話していただきました。

他の講演やインタビューでも、今野さんは「違法企業や過労死は昔からあったのでは?」と聞かれることがあるそうです。しかし「ブラック企業」はこれまでの企業とは異なると今野さんははっきり言います。

もっとも違うのは「使い捨てる」ことであり、さらにそれが新興企業・大企業で堂々と行われているということです。大企業に入れば良い生活が保障される、といった日本社会の期待を裏切って、若者を使いつぶして不況と言われる中でもずっと利益を上げている。決してグローバリゼーションや不況で企業が仕方なくやっているというわけではないのだそうです。

ブラック企業は業績を上げているがゆえに時に「非常に優れた企業だ」と褒められさえしますが、実は彼らは企業と社会、労働者の間の信頼を壊し、大きな社会不安を生み出していると今野さんは言います。ブラック企業の社会的弊害は大きく、若者がうつ病にされて医療費が増加する、結婚・出産・育児を困難にする、低賃金で消費が縮小していく、というように日本社会の成長を害する重大なものだということです。

ブラック企業が出てきた背景には日本型雇用の雇用保障を前提にした企業の強大な人事権、命令権限がある、と今野さんは話します。ブラック企業は雇用保障をせず、強い命令権をただ人件費削減で儲けるために使っている。しかし、日本型雇用でも過労死が多発しており、かつてのあり方に戻せばいいという訳ではないのだそうです。

また非正規雇用についての問題解決の方法として「正社員化するべきだ」ということがよく言われていますが、正社員の仕事がブラック化しているためそれでは解決にならないと話していました。家計自立型の非正規が非常に増えており、彼らはブラック企業の正社員との労働条件切り下げ競争に追い込まれ、今では正社員以上の長時間労働やきついノルマを強いられているそうです。

ブラック企業の正社員や非正規の過酷な働き方の解決のためには、過労死防止基本法や労働時間そのものの規制がによる根本的な対策が必要だ、と今野さんは力説されていました。

それに加えて、今野さんは非正規の利害・ブラック企業被害者の利害主張をまとめられる中間団体を作ることを進めていきたいと話していました。中間団体が当事者を助ける力になり、今度は当事者自らが他の人を支える力になっていく。より多くの人が助けを求めて集まり、より多くの声を政治に対して主張していく。そんな循環をつくり、ブラック企業や過労死をなくしていきたい、と今野さんはこれからの展望を熱意を込めて語り、1時間半の講演を終えました。


熱い思いの込められた、そして実際に変えていくための考え方のつまった、大変興味深いお話だったように感じました。若者の過労死が増えている中、その原因となっているブラック企業をなくしていくことが重要だと思いました。

(学生 I.S.)


今野さんの講演で例示された過労死の事例については過去のブログ記事で詳しく取り上げていますので、こちらをご参照ください。
ウェザーニューズ→http://blog.goo.ne.jp/stopkaroshi/e/85c4dd88b85f84a404eafd2fd33b3bf7
日本海庄屋→http://blog.goo.ne.jp/stopkaroshi/e/83eebe6cf239a7f0f1693d7874bab2d7
ワタミ→http://blog.goo.ne.jp/stopkaroshi/e/2d4a73fb2c7ae52df8db3a22617748af
後半に続きます。

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