ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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〝分別ある大人の万引き〟が続出するワケ

2012年05月25日 | Weblog

 
2012年4月30日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「〝分別ある大人の万引き〟が続出するワケ」
 
を企画、取材、執筆しました。
 
 
 
 4月24日付の朝日新聞朝刊に「各務原市職員を処分 スーパーで万引き容疑」という記事がある。これによると、岐阜県各務原市(かかみがはらし)は23日、スーパーで万引きをしたとして、50歳代の同市総務部主査の女性職員を停職3カ月の懲戒処分にしたという。市によると、女性職員は15日午前、同市内のスーパーで約1,400円相当の食料品など3点を盗み、「魔が差した」と話しているという。

 同種の事件は後を絶たない。例えば、静岡県富士宮市臨時職員の女性(33)は3月19日、市内のスーパーで紙パック入りスープなど食料品3点(700円相当)を盗んだ容疑で現行犯逮捕された。(3月20日付同紙朝刊)

 東京都建設局の男性主事(60)は昨年12月、埼玉県内のコンビニで缶チューハイ1本を万引きして、停職6カ月の懲戒処分。(2月15日付同紙朝刊)

 さらに、静岡市では、エリートを自負するはずの財務省で事件が起きている。同省の東海財務局財務課の男性(44)が、3月12日午後、同市駿河区内の量販店で、栄養ドリンクや菓子パンなど20点(約8,600円分)を万引きし、バッグに商品を入れたまま、店外に出ようとして私服警備員に声をかけら現行犯逮捕されたのである。(3月13日付読売新聞朝刊)

 さらにさらに、北海道網走市では、国税庁職員の男性(53)が3月18日午後7時45分頃、市内のビデオ販売・レンタル店でレンタル用DVD3枚(3万7,000円相当)を盗んだ疑いで現行犯逮捕されている。(3月19日付同紙朝刊)

 役人だけではない。岩手県盛岡市の測量会社で役員をしている女性(66)は、4月1日午後0時55分頃、市内のショッピングセンターでイチゴパックなど食料品20点(4,000円超分)を盗んだ疑いで逮捕されている。

 一体なぜ、分別もあり、お金もそれなりに所持している大人が、こんな万引きに手を染めてしまうのか。

 その点について、家族相談士・シニアカウンセラーの中尾英司氏は、アメリカ中西部・南部・南東部在住の日本人向けの生活情報誌「パビリオン」09年8月号の「中尾の家族心理学」というコーナーで、こう分析している。

 同氏はまず、一つ目の要因として「ストローク飢餓」を挙げている。ストロークとは「相手を認める働きかけ」という意味という。つまり、相手に自分の存在を認められたいから、万引きをしてしまうのだという。

 二つ目の要因は、ズバリ「ストレス発散」。万引きに成功することで「してやったり」という快感を得るというもの。しかし、またすぐにストレスは蓄積するので、結局、万引きを繰り返すことになってしまうという。

 会社の責任ある方が万引をした、というニュースが飛び込んでくることについて、同氏は「会社は厳しく処分すると言いますが、個人の責に帰して終わりにできる問題ではありません。組織内である一定の立場を得てしまってある意味無視されたり、その一方で、期待にこたえることが当然とばかりに、過大な要求ばかりなされていたり。万引きを引き起こすのは『衝動』ですから、本人にも上手く説明がつかないでしょう。いずれにせよ言えることは、その人が『孤独』であったということです」と指摘。

 そして「そのように人を追い詰めてしまった組織の風土や体質を変えていかなければ、サインはこれからも現れ続けるでしょう。トカゲのしっぽ切りで終わらせてはいけません」と結論している。

 続出する大人の万引きは、ギスギスしたストレス社会の反映なのかもしれない。(佐々木奎一)


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