ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

※ブログ下記移転しました(2015年7月以降)
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米国でも不満拡がるTPP

2013年10月28日 | Weblog

 平成二十五年十月七日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「米国でも不満拡がるTPP」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 けさの各紙は、「TPP『大筋合意』不透明に」(読売新聞)、「難航分野、見えぬ一致点」(朝日新聞)、「年内妥結、道筋示せず」(日本経済新聞)といった見出しで、インドネシアバリ島で開かれているTPPの閣僚会合が、難航して閉幕したことを報じている。TPPは年内妥結を目標としており、8日には現地で首脳会合がある。

 そのTPPについて、肝心の中身については、よくわかっていないのが実情である。こんな記事もある。それは、けさの東京新聞の「TPP 情報の開示を 日米に広がる不満」。それによると、TPPは「守秘義務契約」を結んでいるので、日米の議会では、政府が最終的な合意結果だけを示して議会に承認を求める方針のため、議会の側からはその秘密主義に批判があがっているという。

 日本では、特に農業や医療などの分野を中心に反発が強まっている。一方、米国でも、与党の民主党上院議員からも公然と不満の声が出ている。例えば消費者団体の支持を得ているウォーレン上院議員は「交渉の中身を明かにすることで国民の批判を恐れるなら、その交渉はやめるべきだ」と訴えていたりするという。

 TPPは米国の国益のため、という説もあるが、当の米国でも批難されている。これはどういうことか? これに関連してジャーナリスト堤未果氏の著書「政府は必ず嘘をつく アメリカの『失われた10年』が私たちに警告すること」(角川マガジンズ刊)に、こういう下りがある。「アメリカ国内における強力なTPP推進派は、『NFTC(全米貿易協議会)』という、ニューヨークとワシントンを拠点とする全米最古で最大規模の財界団体」という。会員企業の顔ぶれは、ボーイング、GE、ヒューレット・パッカード、インテル、マイクロソフト、モンサント、IBM、コカ・コーラ、ファイザー、オクラル、タイム・ワーナーなどなど、グローバル資本がほとんど。

 「グローバル経済が支配する世界の中で、今後ますます各国の憲法や法律、規制といったものは意味を失ってくるでしょう。国の介入は、小さければ小さいほど利益が上がる。グローバル経済の最終ゴールは、規制ゼロの“統一世界市場”だからです」(国境なき医師団のヤコブ氏の言葉)

 グローバル企業の猛威はアメリカ国民にも襲いかかっているという。「彼らが自国の患者たちに何をしているか見てみるといい。なぜ毎年、アメリカ国内で無保険ゆえに4万人の患者が死に、保険がありながら100万人の被保険者が破産し、薬の副作用で30万人が命を落とすのか。グローバル企業にとって、患者の国籍や名前など意味を持たないからだ。アメリカ人だろうが日本人だろうが、グローバル経済の前で命は“数字”なんだ。それ以上でもそれ以下でもない」(同)

 かつてフランスの知識人ジャック・アタリ氏は「21世紀の歴史」(訳: 林昌宏/作品社刊)で21世紀を予言している。それによると、今後、アメリカ帝国が終焉し、地球規模となった市場が、政府や国家さえも破壊する「超帝国」の時代がくるという。市場は現在、公共サービスが担っている教育、医療、環境に新たな収益源を見出し、傭兵が軍隊や国家警察を凌駕し、しまいには統治権まで各国政府から奪うという。

 こうして国家なき市場という前代未聞の様相となり、2050年ごろまでには、千年以上の歴史を持つ国を含め多くの国々が解体され、残存する国家も企業の代弁者でしかなく、市民の平等、公正な選挙、自由な情報などもなくなり、失業率の上昇、違法経済行為の横行、反社会勢力の拡大も促すという。

 なお、著者は、上記予言についてこう記している。「こうした地獄絵のような出来事は起こらないだろう。(略)超帝国が確立する以前に、人類はこうした見通しに抵抗することになるからである。いや、すでに抵抗している。超帝国は失敗に終わり、砕け散る。人類はこうした悪夢を避けるために、あらゆる手段で対処する」

 著者の指摘する「市場」という「超帝国」は、TPPにみられる規制緩和、グローバル化の行きつく先といえないだろうか?(佐々木奎一)


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