2011年10月14日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「震災で急増した自転車と放置される事故対策」
を企画、取材、執筆しました。
キーワードは「自転車対策」…。
けさの毎日新聞に「銀輪の死角 震災後事故5%増」という記事がある。これによると東日本大震災の起きた3月以降の半年間で、都内の通勤・通学中の自転車事故が2,129件で前年比5%(96件)増加していることが警視庁のまとめで発覚したという。「震災後に電車などの交通がマヒし、自転車利用者が増えたことが件数に反映された」(警視庁)。つまり、帰宅難民化を避けるため、自転車ユーザーが増えたというわけだが、他にも節電や節約、健康、温暖化防止、災害といった増加要因は目白押しなので、今後も増え続けることが予想される。
ただでさえ、99年から09年の10年間で、自転車の対歩行者事故は3.7倍に激増し、自転車同士の事故も4.4倍に急増している(警察庁調べ)というから、さらに増えるということは、もはや自転車事故対策は避けて通れないテーマといえよう。
ではどうすればよいのか? そのヒントは、同紙が昨年から長期連載している「銀輪の死角」に載っているといえそうだ。同連載によると、まず、自転車は道路交通法上、「車両」になるので、本来なら車道通行が原則だ。が、現実は、車道が狭く、その上、車が自転車を考慮せず走行していて危ぶないので、やむをえず歩道で自転車を運転して事故を起こすケースが多発しているという。
であるが故に、ベストは、道路を拡張して自転車専用路を設けることといえそうである。だが、財政難や、工事にかかる時間を考えると現実的とはいえない。
そこで次善の策としてこんなことがある。国交省の国土技術政策総合研究所の大脇鉄也主任研究官の試算によると、全国の都市部にある国道や県道など幹線道路計約3万㎞のうち、「幅1m以上の歩道があり、必要な車線(1車線標準幅3メートル)を確保しても車道両端に各1.5m以上の余裕がある主要道」は約8,100㎞もあり、その大部分は車道の両端に線を引くだけで、自転車と車の分離が可能という。
車道に線を引くだけで事故は大幅に減らせる――。実際、フランスでは、街中の道路に白くペイントされた自転車マークがあり、交差点にも矢印と一緒に描かれている。さらに市街地には車の制限速度を時速30㎞キロ以下に抑える「ゾーン30」もある。その結果、フランスは20年間で自転車乗用中の死者数を8割も減らすことができたという。自転車事故の防止とは、実は“車の運転規制”が要であることを物語っているといえそうだ。
日本各地で今日も、自転車事故は起きているに違いない。本来なら、事故を防ぐため、できることからすぐに実行して手を打っていくのが政治の役割のはずだが、国や自治体は本来の役割を果たしている、といえるだろうか?