ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

※ブログ下記移転しました(2015年7月以降)
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大津いじめ事件で教育制度を批判する首長の実情

2012年08月06日 | Weblog

 

2012年7月20日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「大津いじめ事件で教育制度を批判する首長の実情」
 
を企画、取材、執筆しました。


 
 

 大津市立中のいじめ自殺事件が連日報道されている。そのなかには「教育委員会の制度が悪い」と批判する論調の記事もある。

 例えば、けさの産経新聞の「今、学校で 大津の中2自殺 中」という連載記事。そのなかでこんな下りがある。「教育委員は教育の専門家ではない地域住民から選ばれ、月1~2回の定例会で教育行政を行うが、実際に業務を行うのは教育長を中心とした事務局職員で、多くは教員出身。『委員会は事務局の決定を追認するだけの名誉職』などと形骸化が指摘されてきた。今回のケースも、自殺後の委員会で報告があったにもかかわらず、委員会からは質問や意見は一切出なかった」

 また、昨日の読売新聞夕刊で、越直美・大津市長は、同紙のインタビューで、「大津市教育委員会の対応のまずさの遠因に、教育委員会制度の矛盾がある」と指摘し、「市民に選ばれたわけではない教育委員が教育行政を担い、市長でさえ教職員人事などにかかわれない。民意を直接反映しない無責任な制度はいらない」と述べ、国に制度改革を求める意向を示したという。

 また、昨日付の毎日新聞電子版によると、高松市で昨日開催した全国知事会議で、大津市立中の事件が取り上げられ、教育委員会制度の見直しを求める意見が相次いだという。

 滋賀県の嘉田由紀子知事は「首長部局と教育委員会の権限配分を見直し、連携を強化する必要がある」と話し、岡山県の石井正弘知事は「自治体と教育委員会の関係は、自治体が選択できるようにすべきだ」と主張したというのである。

 このような批判が首長の口から続々と飛び出ている。ちなみに、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第4条によると、教育委員は、「地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する」ことになっている。また、同第7条によると、教育委員が「職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合」は、首長が議会の同意を得て、罷免することができることになっている。

 要するに、首長は、教育委員会が形骸化した場合、委員の人事の刷新を通して組織を機能させる権限を持っている。

 なお、教育委員会のシステムを批判している上記3自治体の教育委員会HPをみてみると、大津市と岡山県は、教育委員会メンバーの名前すら公表していない。滋賀県は名前だけは公表しているが、メンバーの顔写真や職業、前歴は一切開示していない。

 教育委員会制度を機能させるには、まず、どういう人物が教育委員に就いているのか住民に知らせる必要があるのではないか。そこから一体感も生まれてくるはずだからである。それさえせずに、「今の制度は民意を反映していない。こんな制度はいらない。国が悪い」と文句を言う首長は、資質が問われているのではないか。(佐々木奎一)

 


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