ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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被害大きければ大きいほど役に立たない「消費者集団訴訟法」成立

2014年01月30日 | Weblog

 平成二十六年一月十日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「被害大きければ大きいほど役に立たない「消費者集団訴訟法」成立」
 
を企画、取材、執筆しました。


 昨年末の臨時国会では特定秘密保護法案の動向が連日報じられたが、その陰でひっそりと成立した法案がある。それは「消費者裁判手続き特例法(消費者集団訴訟法)」という法律。

 この法律は、米国の「クラスアクション」を意識している。クラスアクションとは、被害を受けた消費者が、同様の立場にある人々(クラス)を代表して提訴する制度。例えば、ある商品で被害を受けた場合、被害者たちのもとに裁判の通知が届く。それをみて不参加の意思表示をしない限り、自動的に原告の一人に名を連ね、損害賠償の金額はどんどん跳ね上がっていく。そして和解や原告勝訴で、企業が多額のお金を支払うことになった場合、そのお金は弁護士報酬や、原告への支払いに分配される。

 クラスアクションは場合によっては、原告は数百万人、損害賠償額も数兆円に上ることもある。消費者擁護の立場が鮮明な制度だが、反面、企業にとっては、一つの裁判で敗訴すると、一気に破綻するリスクもはらむ制度でもある。そのため、企業寄りの日本で導入されるのか注目されていたが、ふたを開けてみると、どうなったであろうか。

 そのことをけさの朝日新聞が報じている。それは「泣き寝入り減らせるのか 消費者の救済制度、施行へ」という記事。

 それによると、昨年末に日本で成立した消費者集団訴訟法は、「1人当たり数万円から数十万円の少額の消費者被害を一括して救済するための民事訴訟法の特例法。裁判は2段階に分かれる。まずは国から認定を受けた『特定適格消費者団体』が提訴し、被害を起こした事業者にお金を支払う義務(共通義務)があるかどうかを争う。消費者団体が勝訴した後、2段階目で被害者が参加し、賠償額を算定する。参加表明をしなかった被害者は救済されない」というもの。

 過去の事例にあてはめてみると、07年に英会話学校大手の旧NOVAが倒産し、約30万人の受講生が、計約560億円を受講料として前払いしていた。この場合、新たな制度では、被害者側が集団訴訟で勝訴した場合、返還されるという。

 一方、「役に立たなそうなケースもある」として、こう書いてある。「カネボウ化粧品の美白化粧品で肌がまだらに白くなる白斑問題。1万人以上が被害を受けた。ただ新制度では、化粧品の実費だけが救済対象で、商品による身体的損害の賠償は対象にならない。欠陥商品によるケガの治療費や慰謝料を求める場合は、個別に裁判を起こす必要がある」。

 つまり、消費者が被害商品に支払った代金分しか返還されないルールというわけ。例えば、年末にマルハニチロホールディングスの子会社「アクリフーズ」が製造した冷凍食品から農薬マラチオンが検出され、ピザ、コロッケ、フライ94品目約640万袋が自主回収の対象になり、1月9日午後5時現在で全国の健康被害者数は1672人に上っている。

 この事件を消費者集団訴訟法にあてはめると、被害者たちは冷凍食品の代金分しか返還されないことになる。

 なお、この法律は今後3年以内に施行され、施行から3年後に見直すことが付則で決まっているという。消費者が泣き寝入りしないで済む制度に変えていく必要があるのではないだろうか。(佐々木奎一)


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