ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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現代のベートーヴェン…佐村河内守の虚像暴露会見

2014年02月18日 | Weblog

 平成二十六年二月七日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「現代のベートーヴェン…佐村河内守の虚像暴露会見」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 けさの各紙は大々的に、作曲家・佐村河内守(さむらごうちまもる)氏のゴーストライターん゛謝罪会見をしたことを報じている。

 佐村河内氏とは、つい数日前までの社会認識では、被爆者を両親として広島に生まれた被爆二世で、4歳から母親よりピアノの英才教育を受け、10歳でベートーヴェンやバッハを弾きこなし「もう教えることはない」と母親から告げられ、以降、作曲家を志望。しかし、17歳のとき、原因不明の偏頭痛や聴覚障害を発症。高校卒業後は、現代音楽の作曲法を嫌って音楽大学には進まず、独学で作曲を学んだ。その後、完全に聴力を失い全聾(ろう)となりながらも、絶対音感を頼りに作曲を続け、03年秋、『交響曲第1番《HIROSHIMA》』を完成させ、クラシックCDでは異例の販売枚数17万枚を突破。他にも数々の作曲をし、マスコミでは「現代のベートーベン」ともてはやされていた。(参考:サモンプロモーションHPより)

 だが、「週刊文春」14年2月13日号(2月6日付発売)で、佐村河内氏のゴーストライターとして作曲をしてきた人物が実名告発したことにより、虚像が暴かれた。

 そのゴーストライターの桐朋学園大非常勤講師・新垣隆氏が、昨日、記者会見を開いた。各紙によると、新垣氏は、18年前、知人を通じて、映画音楽の制作を頼まれたのを機に、佐村河内氏との付き合いが始まった。佐村河内氏は、ピアノの演奏は「非常に初歩的な技術」しかなく、譜面すら書けなかったという。耳も実際は聞こえており、新垣氏が録音したものを佐村河内氏が聴いてコメントしていた。

 佐村河内氏が虚像のままどんどん売れていくなか、新垣氏は、昨年7月と12月に、もう辞めたいと伝えたが、佐村河内氏は「あなたが曲を書かないと、私は自殺する」と発言したので躊躇した。

 しかし、ソチ五輪で男子フィギュアスケートの高橋大輔選手が佐村河内氏の「バイオリンのためのソナチネ」を使うことに決まったのを機に、新垣氏は、「高橋選手に偽りの状態のまま踊っていただくのはよくないと思った。後に発覚すれば、高橋選手が偽りの曲で演技したと非難されると思った。高橋選手には真実を知ったうえで堂々と戦ってほしい」と考え、謝罪会見に踏み切ったのだという。

 なお、毎日新聞の記事「専門家『詐欺』指摘も」によると、著作権法に詳しい福井健策弁護士は、佐村河内氏の行為について「聴力がないという障害を克服し、独力で曲をつくったという『物語』があってこそ、人々はCDを購入し、主催者はコンサートを企画した。その本質的な部分を欺いた責任は逃れられない」と述べ、詐欺罪が成立する可能性があると指摘している。

 ちなみに、各紙は今回の佐村河内事件を巡り、著作権という言葉を盛んに使っている。しかし、メディアは、そもそもの情報ソースが週刊文春だったことにはほとんど触れていない。今回に限らず、情報源が他の媒体だった場合、そのことを明記せず、さも自分で取材したかのように記事にするのが、マスコミの常である。そのような盗人猛々しいさまは、佐村河内氏と本質的に変わらないのではないか。

 例えば学者が論文を書く時は、引用するのが当然だが、メディアにはそういう著作権意識は絶無に等しい。そういうこの国の土壌が、佐村河内氏という偶像を生み出したといえないだろうか?(佐々木奎一)


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