2011年1月9日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「ネット上の『祭り・炎上』にみる正義の危険性」
を企画、取材、執筆しました。
キーワードは「正義」…。
5日付の朝日新聞夕刊で、月読寺(東京都)・正現寺(山口県)住職の小池龍之介氏が「正義が招くネット上のイジメ」と題するコラムを掲載している。そこで小池氏はこう記している。
「“正義”というものの危険性を考えるとき、インターネット上で日々ブチまけられている、大量の攻撃的な言葉が役に立ちます。ただし反面教師として。政治家や芸能人らのちょっとした失言や問題が露見しますと、しばしばネット上では“祭り”と呼ばれる大騒ぎとなり、皆が寄ってたかって、有名人をボコボコにバッシングするようです。多いときには、数万件もの発言が一挙に連鎖していくそうです。(略)たとえば、『こんなヤツに生きる資格なんてない。死ね』ですとか、『こんなことを言う人だったなんて知りませんでした。実はクズだったんですね』などといった具合に、本人を目の前にしていたら、決して口にしないキツイ言葉が連発される」。
ちなみに、つい先日も、この言葉をほうふつとさせる出来事があった。元政治家がツイッターで発言して“祭り”状態になり“炎上”したのである。それは大みそかから年明けにかけてのこと。NHKの元スポーツキャスターで元自民党参院議員の東海由紀子氏(42)が、NHK「紅白歌合戦」に出場した「猪苗代湖ズ」という福島県出身のバンドが歌い終えた後、自身のツイッターで「猪苗代湖ズって何なの? 震災口実にしたオヤジバンドの域を出ていない」とつぶやいたことに端を発する。
ネット上ではこの発言に対し、「キチガイババアだな」「炎上して当然だろゴミカス消えろ」「バカ女は黙ってろ」「最低&売国奴 こんな奴がいるから日本は一つにならない」といった罵倒を浴びせる人もいた。
このように口汚く罵ることができるワケについて、前出のコラムで小池氏は、「『自分は悪い人間を追いつめる、正しい側に立っているのだ! 』という大義名分が得られるからでしょう」と分析し、その本質を「直接に被害を受けたわけでもない赤の他人が大量に集まって、たったひとりをたたき続けるという、イジメ行為です(略)、“悪”を見つけると、正義の使者となったつもりになれるだけに、イジメの快感へのストッパーが外れてしまうのです」と記している。
なお、昨今の正義の危険性については、コラムニストの小田嶋隆氏も著書「その『正義』があぶない。」でこう警告している。「正義は、それに反するものを排除もし、自分たちの陣営に与しない人間を敵視するための装置になる。(略)つまり、正義は、思考停止ワード(略)なのである」とし、「人々は、議論ではなく、『正義』(←『議論の余地のない正しさ』は、議論を圧殺する)それ自体を求めるようになった」と指摘している。
こういうギスギスした時代だからこそ、ネット上でまかり通る、正義を振りかざした集中個人攻撃を鵜呑みにせず、自身の“曇り無きまなこ”で物事を冷静に判断していくよう努める必要があるのでないか。