平成二十六年一月二十七日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「多発する踏切を渡り切れずはねらる事故」
を企画、取材、執筆しました。
けさの産経、毎日、東京、日本経済新聞は、神奈川県座間市内で起きた踏切事故を報じている。それによると、同市相模が丘1の小田急小田原線相模原2号と呼ばれる踏切内で、近くに住む無職の堺茂子氏(84)が、本厚木発新宿行き普通列車にはねられ死亡した。カメラ映像によると、堺氏が踏切に入って7秒後に電車来るときの警報機が鳴り遮断機が下り始め、30秒後に中央付近にたどり着いて立ち止まっている間に電車が来た。堺氏は足が不自由で普段から杖をついており、時間内に踏切を渡れず、はねられたとみられているという。
同様の事件は後を絶たない。例えば昨年8月23日午後6時50分頃には、横浜市鶴見区生麦のJR京浜東北線・鶴見―新子安間の生見尾(うみお)踏切で、同区在住の無職の斎藤庄一氏(88)が、大宮発大船行き普通電車にはねられ死亡。斎藤氏は妻(83)と踏切を渡っている最中に警報機が鳴り始め、妻は急いで渡りきったが、斎藤氏は間に合わなかった。
同月2日午後0時50分頃には、神戸市北区有野町有野の、神戸電鉄三田線福谷口第2踏切で、近くの障害者支援施設に入所する無職の幡中正彦氏(77)が、三田発新開地行き普通電車にはねられ死亡。幡中氏は車椅子の車輪が線路の隙間に挟まり転倒したとみられている。
踏切事故を減らすにはどうしたよいか。それに関連してこんな記事がある。それは毎日新聞神奈川版朝刊13年9月7日付の「現場から 88歳犠牲、横浜・鶴見の踏切事故 長い距離、高齢者に酷 横浜支局記者・一條優太」という記事。
それによると、上記の横浜市の生麦で起きた生見尾(うみお)踏切死亡事故の現場は、横断する距離が長い上に、ラッシュ時はほとんど遮断機が下りている「開かずの踏切」。実際に、事故が起きた午後6時台の現場では、踏切を渡り終える前に遮断機が下りる人が複数いて、歩行者たちからは「危ない踏切」「年寄りは命懸け」「すぐに遮断機が下りてしまうので怖い」といった声が上がっていたという。
この踏切は、商店街の買い物客や通勤者ら1日平均約3600人が通行する生活道路で、この踏切以外に人や車が南北に横断できる道は付近にないという。踏切の上には高さ約7メートルの跨線橋(こせんきょう。線路の上にかける橋)があるが、40段以上の急な階段を上らないといけないため、「足が痛くなるので使えない」という高齢者は多い。
そのため、跨線橋を管理する横浜市には5年以上前から「エレベーターを設置してほしい」という地元の要望が寄せられているが、跨線橋の中ほどに11段の階段があり、車椅子やベビーカーは通れないため、市道路局は「エレベーターがあってもバリアフリーにならない」と設置に否定的という。
では跨線橋自体を架け替えた場合はどうかというと、用地確保が容易でない上、工費は「少なくとも10億円超」(市道路局)で、市内には他にも危険な踏切があるため架替え案が具体化することはないのだという。
なお、記事では踏切事故に詳しい芳賀繁・立教大教授(交通心理学)が「お金がかかっても跨線橋を架け替えるべきだろう」と指摘した上で、「架け替えが実現するまでの安全対策は住民と市、JRが知恵を出し合って検討すべきだ。例えば、地域のボランティアがラッシュ時に横断する高齢者らに付き添い、市やJRがその取り組みを支援する形も考えられる。要求し合うばかりでは、話が前に進まない」と述べている。
財政難と超高齢化に直面する日本は、もっと助け合いの精神で知恵を出し合う必要があるのかもしれない。(佐々木奎一)