ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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横行する「過労死」防止法を求める集会に潜入!

2014年02月20日 | Weblog

 平成二十六年一月九日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「潜入! ウワサの現場」で記事
 
「横行する「過労死」防止委法を求める集会に潜入!」
 
を企画、取材、執筆しました。

 


 働き過ぎが原因で死亡する「過労死・過労自殺」が後を絶たない。最近報じられたケースでは06年1月に過労自殺した神戸製鋼社員の事件や、05年7月に過労自殺した日本政策金融公庫社員の事件、04年3月に過労死した東急ハンズ社員の事例や、後述の遺族の証言のケースなどが明かになっている。

 また、厚労省の統計によると、直近の過労死・過労自殺(自殺未遂含む)の労災請求件数は、10年441件、11年504件、12年454件。うち労災認定されたのは10年178件、11年187件、12年216件となる。

 このように「カローシ」(※海外でもカローシとして有名)が横行するなか、「『過労死防止基本法』の制定を実現するつどい」と題するシンポジウムが2月4日午後2時半から、永田町の衆議院第一議員会館で行われた。主催はストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会。現地へ向かうと、平日昼間にもかかわらず、会場は200人超が参加していた。

 シンポジウムで特に印象に残ったのは、遺族の話だった。愛知県名古屋市の母A氏は、娘の綾氏を21歳という若さで過労自殺で亡くした。綾氏は学校から斡旋された青果卸の事務が職場だった。しかし、この会社は毎年入社後数か月で新入社員が辞める会社だった。綾氏は社内でいじめに遭い、会社に改善を訴えたが、いじめは続いた。その後、綾氏は部署異動となった際、社内のお局から「ざまーみろ」と罵られたり嫌がらせがエスカレートするなかで、新部署の担当者から大量の引き継ぎを受け、前の部署の仕事も重なるハードワークを強いられた。そうしたなか異動直前にシステム変更で、引き継がれたものはリセットされてしまった。このことは会社はわかっていたが何のフォローもなかった。

 それでも、綾氏は働くつもりでいたが、心身の疲労の限界を超え12年6月21日に自殺。13年12月に労災認定された。

 静岡県磐田市立東部小学校の教員として04年4月に新規採用された木村百合子氏(当時24歳)は、4年生のクラスの担任となり、希望に満ちたスタートを切った。

 しかし、担当したクラスには、多動性・衝動性の顕著な児童がいて、百合子氏は指導に行き詰まった。ほかにも百合子氏の指示に従わない生徒が出始め、学級崩壊状態に。

 先輩教師に相談したり、指導方法を改善したりしたが、一向に状況はよくならなかった。それどころか、学校の管理職は「お前の授業が悪いから荒れる」「アルバイトじゃないんだぞ」「問題ばかり起こしやがって」と罵倒する始末。

 同年9月には、保護者から「ちゃんと子どもの話を聞いていますか」などと書かれたクレームの手紙を受けった。その翌日、百合子氏は焼身自殺した。

 その後、遺族は公務災害によるものと訴えたが、認定は降りず、裁判で争うこととなり、静岡地裁、東京高裁で公務災害と認定され、12年7月、ついに判決は確定した。

 また、08年4月に、飲料水メーカーの商品を自動販売機に配送する会社に採用された中村氏の息子B氏は、早朝から夜遅くまでサービス残業で働かされ、会社のリーダーからは「バカ」「アホ」「死ね」と暴言を吐かれる日々を送った。同年7月には繁盛期のなか35度を超える炎天下で働き、「倒れそうです」と上司に訴えたが無視された。翌月、B氏はうつ病を発症し、自殺した。その後、遺族は労災申請し、22年6月に労災認定された。

 父親の中村氏はこう語る。「過労死、過労自殺で亡くなった人たちや、言葉では言い表せないほど、悲しみや悔しさで苦しんでいる遺族達の思いを無駄にしないためにも、この過労死防止基本法の成立は、彼らの望んでいる社会に、少しでも近づくための第一歩になると思います。皆さん、どうぞよろしくお願いします」

 なお、昨年11月、過労死防止基本法を求める実行委員会が結成され、同法制定を目指す署名を集める運動が始まった。署名数は1月17日現在522,300筆に達している。さらに全国の76の地方議会で「過労死防止基本法の制定を求める意見書」が採決されている。(13年12月27日現在)

 国会の動きとしては、昨年の臨時国会で、「過労死等防止基本法案」が衆議院に提出され、当初は採決を予定していたが、秘密保護法を巡り紛糾するなかで、継続審議となったため、今年の通常国会で、改めて超党派で議案を出して成立を目指すこととなった。

 そのため、シンポジウムには60人以上の国会議員が出席した。超党派議連の代表世話人である馳浩・衆院議員(自民党)や、同事務局長の泉健太・衆院議員(民主党)を筆頭に、与党の公明党や、野党である日本維新の会、結いの党、みんなの党、共産党、社民党、生活の党とまさに超党派の議員たちが来て、一人一人もれなくマイクを持ち、計1時間以上にわたって、なんとしても法律を制定させる、という趣旨の挨拶を重ねていた。

 なお、法案の成否を握る自民党では、昨年11月以降、自民党雇用問題調査会に「過労死等防止に関するワーキングチーム(WT)」(座長・森英介衆院議員)を立ち上げ、厚労省や遺族、日本経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会や、連合、全国知事会などにヒアリングを重ねている。

 ちょうどシンポジウム当日2月4日にもヒアリングがあり、その場に、ワタミ会長で自民党参院議員・渡邉美樹氏も出席していたという。いうまでもなくワタミには過労自殺した社員がいて、ワタミはブラック企業の代名詞のように巷では言われている。シンポ主催者の過労死防止基本法制定実行委員会・岩城穣事務局長によると、渡邉氏はその場で「この法律の制定に私は賛成をしたい。是非、成立をさせて欲しい。自分の会社では過労死は起きましたが、これについては一生償っていきたい。経営者は決して敵ではない。過労死防止の取り組みに巻き込んでいってもらいたい」という趣旨の発言をしていたという。

 このように目下、法案成立に向かっている情勢に見受けられる。しかし、恒常的な過労死レベルの時間外労働でもっている企業は実に多い。果たして財界やその意を組んだ国会議員や官僚連、大手記者クラブメディアが、このまま黙っているのか疑問符がつく。

 今国会で過労死防止を明確に謳う法律がちゃんとできれば、過労死をなくすための一歩前進になるのはたしか。それゆえに今後の動向を注視したいところだ。(佐々木奎一)

 

 写真は最前列の机に積まれた署名。

 

 


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1 コメント

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Unknown (名古屋市の母A)
2014-03-20 17:29:10
初めまして。過労死の集会の記事を遅ればせながら拝見させていただきました。
私の娘の話を書いてくださり、ありがとうございます。

本日、名古屋地裁にて相手側の会社と女性先輩2人に対して提訴いたしました。
労災は認定されても、会社側・女性先輩からの謝罪は2年近くなる今でもまったくありません。

これから、娘の綾に対して誹謗中傷を並べてこられると思うと提訴することもためらいましたが、やはり許すことが出来ず、提訴に踏み切りました。
損害賠償請求でしか、提訴できないもどかしさはどうしてもぬぐえません。仮に勝訴したとしても娘は私のもとに戻ってこないからです。
「勝手に死んだんだ」と大声で話せるような人間、従業員をまともに指導できない会社の取締役に人の命の重さがどれだけのものなのかを、解らせるまで頑張るつもりでいます。
突然、コメントを入れてしまい申し訳ありません。

あなた様の今後のご活躍を期待しております。
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