ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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日本人の働き方、30年先を行くオランダ

2013年01月28日 | Weblog

2013年1月7日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「日本人の働き方、30年先を行くオランダ」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 

 毎日新聞が正月前から「イマジン 第1部 はたらく」という、労働をテーマとした連載をしている。第1回目は、「インドネシアで『セカ就』する若者」と題し、世界に向けた就職の略「セカ就(しゅう)」でやりがいを見出している日本の若者を紹介し、2回目以降は「限界見えた男社会」「女性役員、経営プラス」「従業員、半数60歳以上」「日本企業の体質、外国人が変える」と題し、女性や高齢者、外国人の社会進出をテーマとした記事を載せていた。

 そして6日付の第6回目は「『30年』先行くオランダ」と題する記事だった。冒頭から「この先、日本人の働き方はどう変わっていくのか。正規、非正規、終身、短期雇用、男と女、学歴、社歴主義――にとらわれない平等が生まれるだろうか」と疑問を投げかけ、オランダの雇用の実情を紹介している。

 これによると、オランダは「80年代、天然ガス輸出に依存する産業構造が、資源価格の下落で行き詰まり、長期不況で失業率が10%を超えた。そこで、賃金抑制を目指したい経営者側と、雇用維持を図る労組が激しく対立、政府の仲介で話し合いを重ね、1人当たりの労働時間を減らす『ワークシェアリング』を取り入れることで合意した」という。つまり、企業側にとっては、賃金は抑制しても、雇う人数を増やすので人件費は減らない。労組側にとっては正規労働者の賃金は下がるが、失業者は減る。労使共に「痛み」を伴う、現実的な解決策だったといえよう。

 その後、オランダは、パート、フルタイムで時給や待遇に差をつけるのを法律で禁じ、同一労働に同一賃金が支払われ、手当や昇進、福利厚生も長時間働く正規労働者と同じ権利が保障された。これを機に、働き方の選択肢が一気に広がったという。

 ちなみに、日本の労働者の3分の1を占める非正規労働者のうち、パート、アルバイトに次いで多い、「契約社員・嘱託」(非正規全体の18.8%、10年、総務省調べ)は、正規社員と賃金面で「雲泥の差」である。

 独立行政法人 労働政策研究・研修機構が11年3月にまとめた報告書「契約社員の人事管理と就業実態に関する研究」によると、調査対象の首都圏と九州地方の、フルタイムの契約社員の年収は、170万円(公的団体の受付相談、51歳、女性)、年収220万円(郵便会社の配達員、26歳、男性)、年収240万円(倉庫の軽作業、60代、男性)、370万円(半導体工場オペレータ、27歳、男性)、500万円(病院の人事労務担当、37歳、男性)などバラツキがあるが、「全員に共通しているのは、職場の正社員よりは賃金が低いということである」という。それでいて、そのうち半数が正社員と同様の仕事内容。

 本来ならば、有期雇用の契約社員は、先行きの雇用が保障されていないのだから、その分、正社員より多めに賃金をもらうのが筋のはずだ。それをせず、人件費を抑えることばかり考える企業は、たとえ大企業でも、いずれ人材が集まらなくなり、衰退していくということはないだろうか? 逆に、人材を求め、非正規の人件費を出し惜しみしない経営者は、同一賃金同一労働を実現し、いずれ力をつけ、大企業を凌駕する時代がくるかもしれない。(佐々木奎一)


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