ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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早稲田、阪大…大学非常勤講師が語る、専任教員との待遇格差

2013年05月13日 | Weblog

2013年4月21日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「潜入! ウワサの現場」で記事
 
「早稲田、阪大…大学非常勤講師が語る、専任教員との待遇格差」
 

を企画、取材、執筆しました。
 

  大学で授業を行う非常勤講師の待遇をご存じだろうか? 1コマ当たり1か月2~3万円程度の報酬で、年収250万円以下のワーキングプアが多い。大学の専任教員との年収格差は4~5倍に達する。

 その最高学府でまかり通る格差社会の象徴・非常勤講師が、よりいっそうの雇用不安に見舞われているとして3月28日、参院議員会館で「『更新上限』問題」と題する緊急集会を開催した。

 「更新上限」問題とは、今年4月施行の改正労働契約法により、「同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換できる」とする、いわゆる「5年ルール」に伴い、「5年上限」で非常勤講師を雇い止めする、という問題である。

 実態を知るため、現地へ向かった。会場は満員でフリーランスやマスコミなどの報道関係者や大学の非常勤教職員など約200人が参加していた。

 集会で特筆すべきは、首都圏大学非常勤講師組合の志田昇・書記長が、早稲田大学で5年上限の雇い止めの動きが出ている、と語っていたことだ。その話に、参加者たちは耳をそばだてた。それは以下の内容だった。

 今年3月頃、早稲田大学が非常勤講師の雇用契約を5年上限にしようとしている、という情報を同組合は得た。そこで同月19日、組合は早稲田大学理事会と団体交渉を行った。組合側は、「5年上限の設定は、有期雇用労働者の雇用の安定という法の趣旨に反するので、撤回すべき」「手続きに疑義があるので説明を行うこと」「非常勤講師や当組合に一切の説明、通知なく行われていた」と抗議した。

 すると理事会側は、労働法に詳しい清水敏・常任理事が対応し、「5年上限設定は、法律で禁止されている訳ではなく、撤回しない」「5年上限の設定は、就業規則の制定により行う。これは過半数代表者からの意見聴取など労働基準法上の義務を遵守している」「非常勤講師にはこれから通知する」などと回答した。

 この交渉で「恐るべきことがわかった」(志田氏)という。労基法上、就業規則作成のためには、「労働者の過半数を代表する者」(以下、過半数代表者)の意見を聴かなければならないことになっている。そして、その過半数代表者は、「投票、挙手等の手続により選出された者であること」が定められている。

 早大では専任教員約2200人に対し、非常勤は約4300人もいる。つまり、本来は過半数を占める非常勤講師が知らない間に、就業規則が改正されることはあり得ないはずだ。しかし、大学の回答によると、過半数代表者信任投票は、今年2月14日~28日、ちょうど試験が終わって非常勤講師が校舎に立ち入らない期間に行われていたという。

 「これは幻の投票です。候補の受け付けもなければ、意見表明もない、投票用紙も有権者の手に渡っていない、開票結果さえも公表されていない。こんな“でっちあげの投票”を天下の早稲田大学がやったわけです。これは必ず後悔させなければいけない。そう私は思っているんです」と志田氏がいうと、会場から「そうだ!」という声と拍手が鳴り響いた。

 さらに、関西圏非常勤講師組合の新屋敷健・委員長によると、大阪大学も、非常勤講師に対し、5年上限ルールを適用するという。

 このシンポジウムから、10日後の4月8日、組合は、早大の鎌田薫総長と常任理事ら計18人を、労働基準法違反容疑で刑事告発し、東京地検が告訴状を受理した。大阪大学については、組合は現在、対応を検討中である。

 ちなみに、改正労働契約法は、有期労働契約であることを理由として不合理な労働条件が定められることのないよう、安心して働き続けることができる社会を実現することが、法の趣旨である。それが教育機関である大学が、法の精神をねじ曲げ、非常勤講師をモノのように5年で使い捨てようとしている。

 そもそも大学は、学問を修め、その見識で世の中に貢献することが期待されているはずだが、いまや、自分さえよければいい、という卑小な精神が蔓延しているといわざるを得ない。その証拠に、非常勤講師という待遇格差を是正する大学は絶無で、それを変えようとして声を上げる学生もいないのが実情である。その上、今回の5年上限問題である。もともと勉強しない学生が多くてその存在を疑問視されることもある日本の大学だが、ついに末期的な段階に入ったのかもしれない。(佐々木奎一)


 写真は、会場。
 


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