プロコフィエフの日本滞在日記

1918年、ロシアの若き天才作曲家が、大正期のニッポンで過ごした日々

ダーチャの思い出

1918-06-20 | 日本滞在記
1918年6月20日(旧暦6月7日)

『白い友人』を少しずつ書き始めた。これまでのなかで一番出来がいいと思うし、真面目で詩的な内容を滑稽に書いてみることになると思う。

 ここは仕事をするのに最適な場所だが、なかなか仕事に戻れない。去年の夏を懐かしく思い出す。のんびりとくつろぎ、どこに急いで行くわけでもなし、自分の仕事と快いダーチャ〔別荘〕での生活を楽しんでいたものだ。一方ここでは、私は通りすがりでしかなく(この一年というもの、目的に向かって常にあわただしかった)、集中することも没頭することもできない。ところで私が達した結論は(恥ずかしながら!)、私はお金が好きなのだ。おそらくこの旅のあと、お金が入ることだろう。

訳注:『白い友人』は、後年発表された短編集のなかには含まれていない。