プロコフィエフの日本滞在日記

1918年、ロシアの若き天才作曲家が、大正期のニッポンで過ごした日々

フジヤマ

1918-06-29 | 日本滞在記
1918年6月29日(旧暦6月16日)

 朝、急行列車の展望車両に乗って、東京に向かった。美しく洒落た日本を満喫しながら再び日中移動する。土地という土地は、いい場所もさほどよくない場所も、ヨーロッパではお目にかかれないほど丹念に愛情こめて耕されている。カーブにさしかかったときにほんの何度か、フジヤマが霧のなかから姿を現した。円錐形で暗い感じだ。実物が見られて嬉しい。

 東京ステーションホテルの同じ部屋に泊まった。ロシアからは手紙一通来ていない。チェコスロバキア軍団によるシベリア鉄道〝封鎖〟のせいで、何も期待できそうにない。