プロコフィエフの日本滞在日記

1918年、ロシアの若き天才作曲家が、大正期のニッポンで過ごした日々

未完の作

2006-05-21 | プロコフィエフ短編
『誤解さまざま』の翻訳が終わり、日本滞在中に書いた最後の一作『許しがたい情熱』をこれから訳し始めるところです。この小説は「彼は言った…………」で終わっており、生前ついに完成することのなかった未完の作。プロコフィエフがどんな結末を用意していたのか、興味深いところです。

ところで、ロシア文学ご専門のN先生に翻訳済みの『ひきがえる』『彷徨える塔』を読んでいただいたところ、翻訳には及第点をいただけたのですが、「話の意味がよくわからない。何が言いたいのか??」とのご反応だったそう。

そうなのです! ことに『ひきがえる』はシュールでわかりづらいお話。ほかの作品にしても、大団円では終わらず、登場人物の落ち着き先がわからずじまいで、読者は「ん?」と放り出されるような一種独特の余韻があるのです。おまけに今回は未完の作とあっては、ゴールが見えず、またまた翻訳に手こずりそうです!

プリンス諸島のハーレム

2006-05-03 | プロコフィエフ短編
短編小説『誤解さまざま』を訳している過程で、1918年6月24日のプロコフィエフ日記と対応する箇所に行き当たりました。「今書いている小説のためにプリンス諸島を探そうとして」、ヨーロッパの地図を所望したのに、日本のホテルにはそれすらない、というくだりです。

この「今書いている小説」が、『誤解さまざま』のことと思われます。この作品の舞台はフランスですが、主人公の技師が「プリンス諸島にハーレムを買って5人の女と浮気する」ことを夢想するシーンがあるからです。プリンス諸島はイスタンブール近く、マルマラ海に浮かぶ島々。主人公はそれに続けて、東洋女性の神秘的な魅力について語っています。いわく「東洋の女たちだけに本物の恋ができる。心のかわりに留め金をとめたヨーロッパの不具者たちにはない、真のけだるい熱さをもっているから」。

おそらくこれは、プロコフィエフが日本女性に対して抱いた思いを反映するものでしょう。このときすでに作曲家は、何人かの日本女性と関わりをもっていたようですから!