2022年3月1年ぶりのお雛様
毎日新聞の「今日の本棚」に「給料はあなたの価値なのか」
(ジェイク・ローゼンフェルド著)が紹介されている。
大半の人々が大学をでて会社にはいる。そこで自分の時間(正確には
能力)を会社に売り、その代償として給料を手に入れる。この
システムは他の動物にはないシステムだ。
この本ではこの給料は各人が組織に貢献した成果に相当する(人的資本論)
、ないし仕事固有の重要性を反映するとされる。給料は個人の働きや職種
の重要性という「価値」を反映しているという常識に、社会学者が果敢に
異を唱えている。
自分の仕事に対してなぜ賃金をもらえるのかという問いに対して、
アメリカでは学者も働く人も給与を決める人も、個人の成果が重要だし
重要であるべきだと考えている。問題はそれが正しいかどうかだ。
答えは「ノー」だ。
本書では給料をきめるのは個人の成果や個人の技量などの価値ではなく、
「権力」、「慣性」、「模倣」、「公平性」の4つだとしている。給料を
決める「権力」について、20世紀半ばでは、労働者の利益は組合が代弁し、
大卒でなくても健康保険や福祉厚生を含め十分な給料が支払われていた。
経営者と労働者が利益を分け合った時代(経営者企業)であった。ところが
ここに経営者の首をすげ変えたり、報酬を左右する株主が現れ
(株主資本主義)、労働者が発揮して収益を上げた分も自分たちの懐に
いれるようになり、労働者は「権力」を剥奪されていった。増えない給料は
一旦決まると賃金体系は「模倣」されて業界に波及し「慣行」(慣性)
となる。ではあがらない給料は「どうしたらいいのか」に対し、「最低賃金
の値上げ」、「ミドルクラスの拡大」、「天井の引き下げ」の3つを提案
している。
最後に「給与は個人の成果や職業の特性によるものでなく、ノーベル経済
学者のポール・クルーグマンが言うように「単純に需要と供給によるもの」
であると同時に「社会的な力と政治権力によるもの」であることと定義しな
おせば、自分の能力が足りないと嘆く必要も、自尊心を傷つけることも、
幸運にもたくさんもらっている人が優越感を持ってうぬぼれることも
亡くなるだろう」と結んでいる。
あらためて自分の価値を思う。衆目のオリンピック金メダルも価値だし、
自分で決めた基準を達成するのも自分なりの価値だ。日常の中の志。
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