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人喰鉄道

2008年06月27日 | 小説・文芸
 人喰鉄道---戸川幸夫---小説

 鉄道紀行作家の宮脇俊三氏に「人喰鉄道・サバンナを行く」というケニアの鉄道旅行記があって(「汽車旅は地球の果てへ」所収)、そこで、この戸川幸夫の「人喰鉄道」が紹介されていた。
 興味をもって、機会があれば読んでみたいと思っていたのだがめぐり合わせが悪く、ようやくランダムハウス講談社文庫から出たのを手にとった。

 いまからおよそ100年前、開拓時代のアフリカはケニヤでの鉄道建設の話である。イギリス人の責任者や技術者と、インド人や原住民の労働者とその家族4000人が、工事に携わった。

 言うまでもないが、この時代の鉄道建設は、過酷な労働環境と肉体労働で成し遂げられており、そこを焦点に書けば、またずいぶん違う物語になるが、この小説ではあくまで、現場最高責任者であるパターソンの視点で書かれており、プロレタリア的な文脈は少ない。それよりも、ここでの最大のテーマは、アフリカという世界の猛威である。人喰いライオンとの長い戦いがストーリーの中心だが、それだけではない。病の流行、労働者の反乱、原住民との衝突、大嵐やイナゴの襲来。こういったものを経て、未開地の鉄道建設は進められる。

 小説ではあるが、このウガンダ鉄道の建設が人喰いライオンとの死闘であったことは事実らしい。
 本来、ライオンには人間を襲って喰らう習慣はないが、あるきっかけが元で、人間の味を覚えてしまえば、ライオンにとってこんなに楽なハンティングはないということで、人喰い専門のライオンになってしまうらしい。しかも群れで行動するライオンは、その人食いの習慣を、他のライオンにも広めてしまうそうである。

 ライオン退治をはじめ、ひとつひとつのエピソードは、意外にもあっさりとした筆致で書かれる。にもかかわらず、長大な小説である。それだけ、いろいろな事件が起こるということだ。もし、ひとつひとつの事件をさらに詳細に突き詰めて描写していけば、山崎豊子ばりの大河になるだろうが、ヒューマンドラマを最小限に抑え、妙にあっけらかんと突き抜けたところが、広大な台地と矮小な人間群の対比と言えなくもない。
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