ボナンザVS勝負脳-最強将棋ソフトは人間を超えるか---保木邦仁・渡辺明
余計なことかもしれないけれど一応解説をすると、ボナンザというのは、本職は分子制御の研究者である保木邦仁氏が開発したコンピュータ将棋のアルゴリズムのことである。去年の3月に、このボナンザが当時の竜王である渡辺昭氏と公式戦として対決をした。
この手の話で有名なのは、IBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンに勝利したことだ。といってもこのエピソードは既に10年前の話である。
現時点では、チェスやオセロに関してはコンピュータの前に人間はもはや歯が立たない。そして、将棋に関しては、この公式戦で渡辺竜王が勝った。つまり、将棋ではまだまだコンピュータは人間の敵ではないということである。
ただ、本書を読むとそれなりにボナンザは善戦したようだ。もっとも、接戦になってしまった理由はボナンザの強さというよりは、どちらかというと渡辺竜王のミスが引き起こしたことのほうが大きいようである。コンピュータが安定的な勝利を重ねるようになるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
データベース化された定石をすばやく引用してきたり、終盤の寄せや詰めはコンピュータの得意とするところだが、大局観を一瞥で把握するところがやはりウィークポイントなようだ。「大局観」というのは木よりも森を見る態度のようなことだが、積み上げで理詰めをしていく線形思考型のコンピュータとはなかなかそぐわないのだろう。大局観がより重要視されるのは囲碁だが、コンピュータ囲碁はまだまだ非常に弱い。スパコンを並列で潤沢に用いて総当り計算しながらやってもそれでも勝てない(19×19盤)。
ボードゲームを離れて、戦争でもビジネスでも、もし、人間がコンピュータに最後まで勝るとすればそれは「大局観」なのかもしれない。
それにしてもボナンザの開発者である保木氏が1975年生まれ、渡辺竜王は1984年生まれ。才気走った2人の鼻息が聞こえてきそうな文章だ。全幅検索(全パターンの総当り検索ということ・・実際は枝刈りもしているが)という力技を極めていく保木氏も、徹底的にボナンザの思考ルーチンの癖を見抜こうと事前の対策をうつ渡辺竜王も、これこそ己の得意領域にすべてをかけた真剣勝負だと思う。
余計なことかもしれないけれど一応解説をすると、ボナンザというのは、本職は分子制御の研究者である保木邦仁氏が開発したコンピュータ将棋のアルゴリズムのことである。去年の3月に、このボナンザが当時の竜王である渡辺昭氏と公式戦として対決をした。
この手の話で有名なのは、IBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンに勝利したことだ。といってもこのエピソードは既に10年前の話である。
現時点では、チェスやオセロに関してはコンピュータの前に人間はもはや歯が立たない。そして、将棋に関しては、この公式戦で渡辺竜王が勝った。つまり、将棋ではまだまだコンピュータは人間の敵ではないということである。
ただ、本書を読むとそれなりにボナンザは善戦したようだ。もっとも、接戦になってしまった理由はボナンザの強さというよりは、どちらかというと渡辺竜王のミスが引き起こしたことのほうが大きいようである。コンピュータが安定的な勝利を重ねるようになるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
データベース化された定石をすばやく引用してきたり、終盤の寄せや詰めはコンピュータの得意とするところだが、大局観を一瞥で把握するところがやはりウィークポイントなようだ。「大局観」というのは木よりも森を見る態度のようなことだが、積み上げで理詰めをしていく線形思考型のコンピュータとはなかなかそぐわないのだろう。大局観がより重要視されるのは囲碁だが、コンピュータ囲碁はまだまだ非常に弱い。スパコンを並列で潤沢に用いて総当り計算しながらやってもそれでも勝てない(19×19盤)。
ボードゲームを離れて、戦争でもビジネスでも、もし、人間がコンピュータに最後まで勝るとすればそれは「大局観」なのかもしれない。
それにしてもボナンザの開発者である保木氏が1975年生まれ、渡辺竜王は1984年生まれ。才気走った2人の鼻息が聞こえてきそうな文章だ。全幅検索(全パターンの総当り検索ということ・・実際は枝刈りもしているが)という力技を極めていく保木氏も、徹底的にボナンザの思考ルーチンの癖を見抜こうと事前の対策をうつ渡辺竜王も、これこそ己の得意領域にすべてをかけた真剣勝負だと思う。