読書の記録

評論・小説・ビジネス書・教養・コミックなどなんでも。書評、感想、分析、ただの思い出話など。ネタバレありもネタバレなしも。

大問題‘08

2008年08月29日 | コミック
 大問題‘08---いしいひさいち・峯正澄

 いしいひさいちの「大問題」は、はっきり言って「日本の論点」の100枚上手だと思う。絶妙なポイントのずらしは、実は物事の本質をついているからできるのであって、その慧眼は凡百のほにゃらら評論家のおよぶところではない。

 だいたい、いしいひさいちは僕が物心ついたとき、既に「がんばれタブチくん」や「おじゃまんが山田君」の人として、有名人だった。僕はまったくプロ野球の興味のない人だったのだが、それでも、タブチくんはじめ、ヒロオカやヤスダは強烈に叩き込まれた。
 それから幾星霜。おそるべき仕事量だ。かつて調べてみたらそのときは、新聞連載ふたつ、週刊誌連載ふたつ、月刊誌連載みっつをこなしていた。どうやったらそんなことできるんだろう。しかも、ほとんどと言ってよいほどクオリティが崩れない。「鏡の国の戦争」「忍者無芸帖」「地底人」「名探偵退場(コミカルミステリーツアーの前身)」「バイトくん」。やがて「B型平次」や「文豪春秋」、「CNN(PNNの前身)」「経済外論」「ののちゃん」。異色の「現代思想の遭難者たち」。いったいどういう頭と腕をしたら、この仕事量をこの長い間こなせるというのか。実はいしいひさいちというのは何人かの集合体なのではないか。だからメディアに出ないのではないか???

 ところで、「大問題」には峯正澄のエッセイ風時事解説がついている。amazonのレビューなどみると、峯正澄のパートに関してはわりと辛口な評価が多いのだが、僕はこちらもけっこう好きである。なんだかアンニュイな、やさぐれた、でもちょっぴり哀しみと同情を含んだ善意な時事批評で、男性エッセイによくありがちな、世の中けしからん、まったくなげかわしい節(これの元祖は鴨長明「方丈記」だ、というのが清水義範の説)とは一線を画している。

 
 

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