ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「ミライの源氏物語」 

2023-05-04 | 読書日記

ベニバナイチゴが咲いています。

「ミライの源氏物語」(山崎ナオコーラ著 2023年3月 淡交社刊)を読みました。

大学の卒論で源氏物語に取り組んだ
という著者が
読みの新しい切り口を提案している。
そこが面白い。

「夕顔」の切り口は「貧困問題」
著者は「貧しさは文学愛好者の大好物です」と言っている。
なるほど
そういえば小学生のころ
家にあった日本文学全集の
自然主義文学の「貧しさ」にはまったものだった。
紫式部の筆も「貧しさ描写」に走っている。
貧しさと文学の近さに著者は気づかせてくれる。

「女三宮」の切り口はトロフィーワイフ。
年をとった源氏は
自分の中に欠落を感じるようになる。
それを埋めてくれるものとして、ついトロフィーワイフを求めてしまう。
兄天皇の皇女という、この上もない高貴な身分の女三宮は
まだ13才の少女だ。
女三宮はうっかり端近な所にいて
柏木に姿を見られてしまう。
そして、女三宮に夢中になった柏木に踏み込まれて性暴力を受け
妊娠してしまう。
読者たちに評判の悪い女三宮を著者は庇う。
13才の少女がうっかりしていたからと言って
望んでもいない妊娠を自分のせいだと引き受けなくてはならないだろうか
と。

「末摘花」とルッキズム
「六条御息所」とマウンティング
「雨夜の品定め」とホモソーシャル
……

新しい視点でものを見る面白さを
味わうことのできる一冊です。

 

 

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