ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「花屋さんが言うことには」 日常の謎ミステリ風味の絶対安全本

2022-04-22 | 読書日記
「花屋さんが言うことには」(山本幸久著 2022年3月 ポプラ社刊)を読みました。



主人公の紀久子は
2年勤めたブラック企業をやっと辞めて
次の仕事が決まるまでの間
(グラフィックデザインの仕事をしたいと思っている)
駅前の花屋の店主・外島李多(とじまりた)に誘われてアルバイトをすることになる。
(李多は女性)

花屋のお仕事小説(ちょっと日常の謎ミステリ風味)なので
花と花言葉のうんちくがたっぷり。
加えて
どの人物にも奥行きがあるところがいい。

もと高校の国語教師で今は花屋でアルバイトをしている光代は
短歌や俳句に詳しくて店頭の黒板に毎日
花にちなんだ短歌や俳句を書いている。
ヒマワリをたくさん並べた日は
「列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし 寺山修司」
というふうに。

もう一人のアルバイトの芳賀は農大の研究助手で岩登りが得意。

自分たちのチームで開発したフリル菊を店に置いて欲しいと頼む研究者の伊福部

伊福部の開発チームのリーダーだった森教授

花が大好きな幼稚園児の蘭くん

東京の郊外の一軒家で植物染に取り組んでいる寒河江さん

老舗和菓子屋の店長の結城さん

足のない人物(幽霊)も登場したり
……

物語が進むにつれて
紀久子の花の知識が増えていき
知人が増えていき
ちらほらとグラフィックデザインの仕事も舞い込むようになる。

絶対安全本が読みたいときにおススメです。

それにしても、花屋さんは
肉体労働だなぁ。




コメント    この記事についてブログを書く
« 「塞王の楯」 成長小説+仕... | トップ | 「手づくりのアジール」 山... »

コメントを投稿