面白いと聞いたので
「射手座の香る夏」(松樹 凛著 2024年2月 東京創元社 345p)を読みました。
SFです。
これがデビュー作?
とは信じられない。
「射手座の香る夏」
「十五までは神のうち」
「さよなら、スチールヘッド」
「影たちのいたところ」
と
全4編が読める。
情景が目の前に現れる正確な描写
の中に
著者の素がふっと現れる
のが魅力だ。
「いやいい。
大人の階段を上るのは
一日に一歩だけでいい」(「十五まで神のうち」の蒼)
「あたしは
あたし以外の人たちが
みんな喧嘩をしていてほしい。
世界が平和にならないでほしい。
そうすれば
きっとみんな
あたしにだけは優しくしてくれるから」(「影たちのいたところ」のソフィー)
時代を感じさせる出来事が
さりげなく差し挟まれているのがリアリティを生んでいる。
リーマンショック
大震災と原発事故
EU離脱
……
人物の「紹介」の仕方もたくみだ。
「もうすぐ十四歳なんだから
お前も留守番くらいできるだろう」
(14歳なのね)
「出かけるなら
ちゃんと眼鏡をかけなさい」
(眼鏡なんだ)
「見ればわかるでしょ。
(癖毛が)嫌いなの。
学校じゃいつも揶揄われてばっかり。
赤毛だし」
(癖のある赤毛なんだ)
……
と、こんな要素に分解して読むような作品ではなく
丸ごと飲み込む作品です。
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