ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「地球の果ての温室で」

2023-05-27 | 読書日記

「地球の果ての温室で」(チョヨプ著 2023年1月 早川書房刊)を読みました。

韓国のSFです。

ダスト(毒を含んだ霧)が蔓延して人類が絶滅の危機に陥っている地球
にはダストに耐性のあるヒトたちが
かろうじて小さな集団を作って暮らしていた。

強いダスト耐性を持つ少女ナオミと
弱い耐性を持つ姉のアマラは
地球上をさまよううちに
森の中で温室を中心に形成されている村フリムビレッジにたどり着く。

温室に住んで
温室から一歩も出ずに
温室のあるじレイチェルは
ダスト耐性のある植物を育てて苗や種を村人たちに分け与えていた。
基本的には人工栄養に頼るものの
将来的には栽培した植物だけで生きていけるかもしれない
子どもたちに引き継いでいけるかもしれない
(そう考える人たちは学校も作った)
村には希望があった。

レイチェルとコンタクトを取れるのはジスだけだった。
時々レイチェルに対して激しく言いつのるジスの姿を
ナオミは見かけるようになる。
それは村の崩壊の予兆だったのか…
ジスとレイチェルという2人の女性の間には
いったい何があるのか……

そんなある日
あちこちで激しいダストの嵐が吹き荒れるようになった。
レイチェルは村人たちにある植物の苗を渡す。
激しい勢いで増え
森を覆い尽くす謎の植物
この植物はいったい何なのか……

ずっと語られ続けるジスよりも
ほとんど姿を表さないレイチェルが
強く印象に残ります。
ロストワールドの殺伐感と
レイチェルの醸し出す情感がみごとにマッチしている
作品です。

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
« 「本屋、地元に生きる」 さ... | トップ | 「異彩を、放て。」 ヘラル... »

コメントを投稿