ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「江戸の宇宙論」

2023-06-08 | 読書日記

「江戸の宇宙論」(池内了著 2022年3月 集英社新書)を読みました。

重力
遠心力
真空
恒星
惑星
彗星
……
今、私たちが使っている言葉は
江戸時代に誕生していた!
というのだ。

長い平和は
江戸の人々を
好奇心のおもむくままに学ぶ世界へと誘った。

著者が惹きつけられた1人目は志築忠雄
長崎の通詞だった人だ。
稽古通詞になったが一年そこそこで辞めて
籠り暮らしをしながら
オランダ語の書物を読みあさり
次々に翻訳して出版した。
(実家が裕福だったらしい)
この志築が
重力や恒星などの訳語を作り出した人だ。
「ヨーロッパの説によれば太陽は不動である。
5星(水星、金星、火星、木星、土星)と地球は同じ種類であって
各々太陽を巡り、かつ自転している)」
などと書いている。
(!)

もう1人は山片蟠桃。
大阪の米問屋の番頭だった人で
忙しい生活の中で
趣味として漢詩を作ったり
志築らの書いた科学書を読んだりしていた。
(趣味!)
晩年にそれをまとめて「夢の代(しろ)」という本にして
私家版という形で残した
「天というものはもともと暗いものだが
そこに太陽のような恒星があって
その光明によって照らされる領域を明界と呼ぶ。
明界の中に大惑星が6個
つまり木・火・土・金・水星及び地球があって
太陽の周りを回り……」
などと書いている。

蟠桃は鎖国についても
自分の考えを述べている。
(私家版なので、そこは自由)
(幕府がロシアの脅威を感じはじめている時代)

著者の惹きつけられぶりが
ひしひしと伝わってきます。

 

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