原発再稼働に前のめりな安倍政権の姿勢を追い風に、中部電力は浜岡原発、東京電力は柏崎刈羽原発の再稼働を急ぐ。
浜岡原発は、静岡県御前崎市にある。中部電力は3~5号機の再稼働を目指していて(*1~2号機は廃炉)、今年度中に4号機の安全審査を申請する方針だ。
浜岡原発の場合、特に懸念されるのは、以下のような点だ。
(1)予想される東海地震の想定震源域の真ん中にあり、より広い範囲の南海トラフ巨大地震の影響も計り知れない、
(2)周辺地域の人口が多く、近隣に工業地帯が広がり、東海道新幹線や東名高速道路などの交通の大動脈も近い。
「中日新聞」「東京新聞」2013.9.27社説「再稼働申請 電力会社に申し上げる」
「毎日新聞」2013.9.27社説「浜岡原発 再稼働申請は考え直せ」
一昨年の2011年9月26日、浜岡原発のある御前崎市に隣接する牧之原市の市議会は、「浜岡原子力発電所は、確実な安全・安心が将来にわたって担保されない限り、永久停止にすべきである」との決議案を可決し、西原茂樹市長は「浜岡原発永久停止」に賛成の意を示した。
私は翌月、浜岡原発問題について牧之原市・御前崎市・菊川市を中心に取材し、ルポを執筆した。
「週刊金曜日」2011.11.4号 星徹「浜岡原発廃止への包囲網 広がるか「永久停止」求める声」
取材して分かったこと、感じたことは、以下のようなことだ。
①原発があり稼働することの「うまみ」は、立地する御前崎市に集中している。同市の2011年度当初一般会計予算(歳入)に占める原子力関連は、約42%にもなる。市民の就労も、原発関連企業に多くを頼っている。
②それに比べて、周辺の牧之原市・菊川市・掛川市などにとっては、得るもの(原発関連交付金・就労など)は微々たるもの。逆に、失うものの方が大きい。
(a)市内の企業・工場などが、原発リスクを考慮して移転してしまう可能性。
(b)原発事故による放射能汚染や風評被害で、主要産業の茶栽培にダメージを受ける可能性。
③隣接市の議会において、「浜岡原発再稼働に賛成が自民党系、反対が民主党系」という構図は成り立たない。両党系の中で、賛成・反対が混在している。民主党系でも、電力・原発関連企業系の労組を支持母体にしていれば、「賛成」に傾く。他方で、自民党系でも、農協関連を支持母体にしていれば、「反対」に傾きがちだ。
中部電力は浜岡原発について、静岡県と御前崎市・牧之原市・菊川市・掛川市の4市と安全協定を結んでいる。再稼働を申請する場合、これら自治体への「事前通報」の義務はあるが同意を必要とはしない、と中部電力側は解釈しているようだ(「中日」「東京」社説より)。しかし、再稼働に踏み切るためには、これら自治体の了解を得ることが、実質的に必要となるのではないか。
浜岡原発が再稼働され、事故がなければ、中部電力と立地自治体の御前崎市には大きな利益となる。しかし、周辺自治体にとっては、得るものが少なく、リスクばかりが見えてくる。
そしてもし大きな事故が起これば、賛成・反対に関係なく、人も産業も壊滅的な被害を受けることになる。地震の多い日本の中でも、最も巨大地震が心配される地域で、原発再稼働という賭けをするのか。合理的判断とはとても言えない、と私は思う。
浜岡原発は、静岡県御前崎市にある。中部電力は3~5号機の再稼働を目指していて(*1~2号機は廃炉)、今年度中に4号機の安全審査を申請する方針だ。
浜岡原発の場合、特に懸念されるのは、以下のような点だ。
(1)予想される東海地震の想定震源域の真ん中にあり、より広い範囲の南海トラフ巨大地震の影響も計り知れない、
(2)周辺地域の人口が多く、近隣に工業地帯が広がり、東海道新幹線や東名高速道路などの交通の大動脈も近い。
「中日新聞」「東京新聞」2013.9.27社説「再稼働申請 電力会社に申し上げる」
「毎日新聞」2013.9.27社説「浜岡原発 再稼働申請は考え直せ」
一昨年の2011年9月26日、浜岡原発のある御前崎市に隣接する牧之原市の市議会は、「浜岡原子力発電所は、確実な安全・安心が将来にわたって担保されない限り、永久停止にすべきである」との決議案を可決し、西原茂樹市長は「浜岡原発永久停止」に賛成の意を示した。
私は翌月、浜岡原発問題について牧之原市・御前崎市・菊川市を中心に取材し、ルポを執筆した。
「週刊金曜日」2011.11.4号 星徹「浜岡原発廃止への包囲網 広がるか「永久停止」求める声」
取材して分かったこと、感じたことは、以下のようなことだ。
①原発があり稼働することの「うまみ」は、立地する御前崎市に集中している。同市の2011年度当初一般会計予算(歳入)に占める原子力関連は、約42%にもなる。市民の就労も、原発関連企業に多くを頼っている。
②それに比べて、周辺の牧之原市・菊川市・掛川市などにとっては、得るもの(原発関連交付金・就労など)は微々たるもの。逆に、失うものの方が大きい。
(a)市内の企業・工場などが、原発リスクを考慮して移転してしまう可能性。
(b)原発事故による放射能汚染や風評被害で、主要産業の茶栽培にダメージを受ける可能性。
③隣接市の議会において、「浜岡原発再稼働に賛成が自民党系、反対が民主党系」という構図は成り立たない。両党系の中で、賛成・反対が混在している。民主党系でも、電力・原発関連企業系の労組を支持母体にしていれば、「賛成」に傾く。他方で、自民党系でも、農協関連を支持母体にしていれば、「反対」に傾きがちだ。
中部電力は浜岡原発について、静岡県と御前崎市・牧之原市・菊川市・掛川市の4市と安全協定を結んでいる。再稼働を申請する場合、これら自治体への「事前通報」の義務はあるが同意を必要とはしない、と中部電力側は解釈しているようだ(「中日」「東京」社説より)。しかし、再稼働に踏み切るためには、これら自治体の了解を得ることが、実質的に必要となるのではないか。
浜岡原発が再稼働され、事故がなければ、中部電力と立地自治体の御前崎市には大きな利益となる。しかし、周辺自治体にとっては、得るものが少なく、リスクばかりが見えてくる。
そしてもし大きな事故が起これば、賛成・反対に関係なく、人も産業も壊滅的な被害を受けることになる。地震の多い日本の中でも、最も巨大地震が心配される地域で、原発再稼働という賭けをするのか。合理的判断とはとても言えない、と私は思う。