昨年(2023年)末、南アフリカ共和国は国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)に対し、昨年10月以降のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への軍事攻撃がジェノサイド(集団殺害)に当たるとして、イスラエルに軍事攻撃の停止などを求めて提訴した。今年1月11日、同裁判所で当該訴訟の審理が始まった。
①「毎日新聞web」2024.1.12「ICJでガザ情勢審理 停戦など「暫定措置」に注目集まる」
②「ロイター・日本語版」2024.1.12「南ア、ICJでイスラエルの「ガザ大量虐殺」非難 イスラエル反発」
③「ロイター・日本語版」2024.1.13「イスラエル、「ガザ大量虐殺」否定 国際司法裁で反論」
この審理には「数年かかる」と見られているが、南アはICJに対し「イスラエルへの戦闘停止緊急措置」を命じるよう求めている。そのため、まずは「戦闘停止緊急措置」の有無が焦点になりそうだ(*上記①②参照)。
ICJがどのような判断を示すかは分からない。だが、イスラエルによる昨年10月以降のガザ地区への軍事攻撃で2万3700人以上の死亡が確認されている〔*2024年1月11日現在。他に未確認死亡推定者も多数。死亡確認者のうち約7割が女性か子ども〕事実から見ても、「イスラエルはハマス戦闘員を狙って軍事攻撃したが、巻き添えで一般市民の犠牲者も出た」というレベルでは全くないはずだ。明らかに「一般市民の犠牲を事実上前提にした集団殺害・大量虐殺」であり、現在のところそれを否定する材料はないはずだ。
イスラエルは「ガザ地区の一般市民を殺傷する意図はない」「狙いはハマス戦闘員」という旨を繰り返すが、それはタテマエに過ぎない。様々な事実と状況証拠を基に検証していけば、イスラエルによる「意図的な」ジェノサイドの事実が明確になるはずだ。あとは、ICJが国際法と社会正義に基づいて公正に判断できるか否かにかかっている。
ICJは2004年、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区でイスラエルが建設した「分離壁」〔*パレスチナ側に大きく入り込んでいる!〕について国際法違反との判断を示したが、イスラエルはこれを無視し続けている(*上記①参照)。イスラエルの国際法無視の姿勢は際立っているのだ。
イスラエルの国際社会を無視する独善的姿勢は相変わらずだが、それを擁護・支持し続ける米国のご都合主義・ダブルスタンダードも、世界中から猛烈な顰蹙(ひんしゅく)を買っている。
こうした「イスラエル擁護」の姿勢は、米政府のみならず、英国政府とドイツ政府にも見られる。ただし、これら諸国などでは今、「イスラエル批判」「イスラエルを擁護する自国政府への批判」を表明する国民が激増し、政府を悩ませている。こうした批判者こそが、社会を良い方向に変革する主人公になりえるのだ。
ドイツ政府は今年1/12、今回のICJ告訴について「イスラエルに対するジェノサイドの告発を明確に拒否し、そうした告発には何の根拠もない」との声明を出した。
また英首相報道官によると、スナク首相は「南アフリカ共和国の提訴は完全に不当で間違っている、と信じている」「英国政府は、国際法の枠内でイスラエルの明確な自衛権を支持する」と述べたという。
*「BBC NEWS web」2024.1.13「Israel says South Africa distorting the truth in ICJ genocide case」(英語版)参照
英スナク首相は、上記のように「……と信じている」「国際法の枠内で……」と予防線を張っている。世論を気にし、対応に苦慮しているのだろう。批判の声をさらに上げて行けば、少しは「まともな方向」に進む可能性もあるのではないか。
だが、ドイツ政府の姿勢・言動は問題だらけだ。上記のBBC記事にもあるが、ドイツはユダヤ人虐殺・ホロコーストの歴史を反省するのは良いのだが、第二次大戦後にイスラエルがいかにパレスチナ人を迫害し、国際法違反の蛮行・虐殺を続けても、イスラエルを支持・擁護してきた。ほぼ完全に近い形で、イスラエルに取り込まれているのだ。
ホロコーストを「負の歴史」として真摯に受け止めることが、なぜイスラエルによるパレスチナ人への蛮行・ジェノサイドの擁護に繋がるのか? 意味不明だ。ホロコーストは、ユダヤ人に対する蛮行であっただけでなく、人類全体への蛮行でもあったはずだ。だからこそ、「かつて被害者のカテゴリーにいた人たち」が立場を変えて加害者になることも、普遍的・人類的観点を持つならば、絶対に許されるはずがない。
*当ブログ2023.12.4「ホロコーストは人類的な惨事だ」参照
真の反省・謝罪とは、「同じような過ちを繰り返さない」ことであるはずだ。そうした意味で考えれば、ドイツはイスラエルとの関係に於いて、間違った方向に進みつつあるのではないか。外交上または安全保障上の利害関係もあるだろうが、「社会正義」という面がクローズアップされる昨今、ドイツは国際的に大きく失点しつあるのではないか。
私たちは、「ドイツが嵌(はま)り込んだ土壺(どつぼ)」の様(さま)をつぶさに検証し、同じような過ちを犯さぬよう気をつける必要がある。
①「毎日新聞web」2024.1.12「ICJでガザ情勢審理 停戦など「暫定措置」に注目集まる」
②「ロイター・日本語版」2024.1.12「南ア、ICJでイスラエルの「ガザ大量虐殺」非難 イスラエル反発」
③「ロイター・日本語版」2024.1.13「イスラエル、「ガザ大量虐殺」否定 国際司法裁で反論」
この審理には「数年かかる」と見られているが、南アはICJに対し「イスラエルへの戦闘停止緊急措置」を命じるよう求めている。そのため、まずは「戦闘停止緊急措置」の有無が焦点になりそうだ(*上記①②参照)。
ICJがどのような判断を示すかは分からない。だが、イスラエルによる昨年10月以降のガザ地区への軍事攻撃で2万3700人以上の死亡が確認されている〔*2024年1月11日現在。他に未確認死亡推定者も多数。死亡確認者のうち約7割が女性か子ども〕事実から見ても、「イスラエルはハマス戦闘員を狙って軍事攻撃したが、巻き添えで一般市民の犠牲者も出た」というレベルでは全くないはずだ。明らかに「一般市民の犠牲を事実上前提にした集団殺害・大量虐殺」であり、現在のところそれを否定する材料はないはずだ。
イスラエルは「ガザ地区の一般市民を殺傷する意図はない」「狙いはハマス戦闘員」という旨を繰り返すが、それはタテマエに過ぎない。様々な事実と状況証拠を基に検証していけば、イスラエルによる「意図的な」ジェノサイドの事実が明確になるはずだ。あとは、ICJが国際法と社会正義に基づいて公正に判断できるか否かにかかっている。
ICJは2004年、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区でイスラエルが建設した「分離壁」〔*パレスチナ側に大きく入り込んでいる!〕について国際法違反との判断を示したが、イスラエルはこれを無視し続けている(*上記①参照)。イスラエルの国際法無視の姿勢は際立っているのだ。
イスラエルの国際社会を無視する独善的姿勢は相変わらずだが、それを擁護・支持し続ける米国のご都合主義・ダブルスタンダードも、世界中から猛烈な顰蹙(ひんしゅく)を買っている。
こうした「イスラエル擁護」の姿勢は、米政府のみならず、英国政府とドイツ政府にも見られる。ただし、これら諸国などでは今、「イスラエル批判」「イスラエルを擁護する自国政府への批判」を表明する国民が激増し、政府を悩ませている。こうした批判者こそが、社会を良い方向に変革する主人公になりえるのだ。
ドイツ政府は今年1/12、今回のICJ告訴について「イスラエルに対するジェノサイドの告発を明確に拒否し、そうした告発には何の根拠もない」との声明を出した。
また英首相報道官によると、スナク首相は「南アフリカ共和国の提訴は完全に不当で間違っている、と信じている」「英国政府は、国際法の枠内でイスラエルの明確な自衛権を支持する」と述べたという。
*「BBC NEWS web」2024.1.13「Israel says South Africa distorting the truth in ICJ genocide case」(英語版)参照
英スナク首相は、上記のように「……と信じている」「国際法の枠内で……」と予防線を張っている。世論を気にし、対応に苦慮しているのだろう。批判の声をさらに上げて行けば、少しは「まともな方向」に進む可能性もあるのではないか。
だが、ドイツ政府の姿勢・言動は問題だらけだ。上記のBBC記事にもあるが、ドイツはユダヤ人虐殺・ホロコーストの歴史を反省するのは良いのだが、第二次大戦後にイスラエルがいかにパレスチナ人を迫害し、国際法違反の蛮行・虐殺を続けても、イスラエルを支持・擁護してきた。ほぼ完全に近い形で、イスラエルに取り込まれているのだ。
ホロコーストを「負の歴史」として真摯に受け止めることが、なぜイスラエルによるパレスチナ人への蛮行・ジェノサイドの擁護に繋がるのか? 意味不明だ。ホロコーストは、ユダヤ人に対する蛮行であっただけでなく、人類全体への蛮行でもあったはずだ。だからこそ、「かつて被害者のカテゴリーにいた人たち」が立場を変えて加害者になることも、普遍的・人類的観点を持つならば、絶対に許されるはずがない。
*当ブログ2023.12.4「ホロコーストは人類的な惨事だ」参照
真の反省・謝罪とは、「同じような過ちを繰り返さない」ことであるはずだ。そうした意味で考えれば、ドイツはイスラエルとの関係に於いて、間違った方向に進みつつあるのではないか。外交上または安全保障上の利害関係もあるだろうが、「社会正義」という面がクローズアップされる昨今、ドイツは国際的に大きく失点しつあるのではないか。
私たちは、「ドイツが嵌(はま)り込んだ土壺(どつぼ)」の様(さま)をつぶさに検証し、同じような過ちを犯さぬよう気をつける必要がある。