信じていた恋人に騙され、職場も辞めお金も少なくなり、居場所さえも失った25歳のエミリ。藁にもすがる思いで10年以上連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。心に傷を負ったエミリは、人からの親切を素直に受け入れられない。しかし、淡々と包丁を研ぎ、食事を仕度する祖父の姿を見ているうちに、小さな変化が起こり始める。食に対する姿勢、人との付き合い、もののとらえ方や考え方など。周囲の人たち、そして疎遠だった親との関係を一歩踏み出そうと思い始める。「毎日をきちんと生きる」ことは、人生を大切に歩むこと。人間の限りない温かさと心の再生を描いた、癒やしの物語です。
『古来、日本に伝わってきた浦は、心を意味する言葉なのだ・・・・外見を「表」とし、内面を心を「うら」とした。・・・「うらやましい」は「心がやましい」・・・「恨めしい」は「心が女々しい」「裏切る」は「心を切る」「うら寂しい」は「心が寂しい」「裏読みは」「心を読む」ことを言う。心=裏=浦=美しいもの。略すと「心=美」となる。・・・心が美しく保たれていること。日本人ってのは、昔から、その状態がこそがいちばん自然で、気分がいい状態だと』(P254)・・・一番気に入った文章でした。2016年4月角川書店刊
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