この物語はファンタジーなのか?「私たちの仕事は走馬灯の絵を描くことだ。それは、人生の最後に感じるなつかしさを決めるということでもある」人生の思い出をめぐる、謎めいた旅行会社に誘われた16歳の少女のひと夏の物語。小川遙香、16歳。3歳で母に捨てられた彼女は、育ての親である祖母も亡くし、正真正銘のひとりぼっちだ。そんな彼女が出会ったのが走馬灯を描く旅をアテンドする「ブレーメン・ツアーズ」。お調子者の幼馴染、ナンユウこと北嶋裕生と共に手伝うことに。認知症を患った老婦人が、息子に絶対に言えなかった不倫の秘密。ナンユウの父が秘めていた、3歳で早世した息子への思い。様々な人の思い出を見た彼女は。人の記憶の奥深さを知る。そんな折、顔も覚えていない母から「会いたい」と連絡が来るのだが・・・。人生の最期に見る「走馬灯」を描く絵師たちの集団、ブレーメン・ツアーズ。思いがけず他人の過去を見ることができる能力があることを知った「遙香とナンユウ」は、自らの家族の過去を見るか、見ないで苦悶しつつ、傷つきながらも結局赦すことを選び取る。いつも泣かされる重松ワールド今回も何故だが涙が駄々洩れでした。死ぬ間際に見る走馬灯がつらいことばっかりだったらちょっとつらい。「ありがとうね 世話になったね。」と昨年7か月の家庭内闘病で亡くなった母は最期にどんな走馬灯を見たのだろう。そして自分はどんな走馬灯を見ることになるのか、生き方を問われていると思った。「人間には三つの力がある・・・記憶する力、でも記憶していても、それはデジタルと違って、薄れたりぼやけたりする。だから二つめ、忘れる力、になる。そして3つめは、なつかしむ力だ」(p220)
「ブレーメンとはたどり着けない場所、人生はブレーメンに向かう旅のようだ」(P364)
2023年4月幻冬舎刊
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