読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

北森鴻著「うさぎ幻化行」

2010-08-11 | か行
平成22年1月25日心不全により他界した著者の遺作。(出版社にくしくも原稿が届いた日に他界)
飛行機事故により突然この世を去ってしまった、父の前妻の連子だった義兄・最上圭一。
優秀な音響技術者だった彼は、「うさぎ」に不思議な“音のメッセージ”を遺していた。
圭一から「うさぎ」と呼ばれ、可愛がられたフリーライターのリツ子は、早速メッセージを聞いてみたが・・・。
環境庁が選定した、日本の音風景百選を録音したものと思われ
るが、どこかひっかかる。
謎を抱えながら、録音されたと思しき音源を訪ね歩くうちに、もう一人の「うさぎ」の存在と奇妙な矛盾に気づく。
うさぎは自分以外にももう一人居た。もう一人の「うさぎ」は義兄の恋人と思われる女は何処に?それは誰なのか?
音風景を巡る謎を、旅の情感を絡めて描くミステリー連作長編。
音を文章で表して読む人を納得させるのは難しいそうだが著者は苦労しつつ文章化して読者の想像力に訴えかけて展開される。
音に絡んだ個々の謎を解きながら第九話の「うさぎ二人羽織」でそれらが繋がって見事などんでん返しを味わえさせてくれる。
さらにラストは余韻を残しまたしても読者の想像力に任せて終る。
音響技術者だった義兄と義妹リツ子の関係も、恋人との関係も詳しくは書かれてなくて推理想像に任せる著者独特の書き方が読後感の非爽快感なのかも。
北斗星・トワイライトエクスプレスといった夜行列車の旅に絡むミステリーは楽しめた。
文中の大阪駅の名物「虎党弁当」(212P)も食べてみたかったが現時点では最近廃業されたと残念。
北森氏のご冥福をお祈りします。
2010年2月東京創元社刊



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「特攻野郎Aチーム」 | トップ | 黒百合 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

か行」カテゴリの最新記事