読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

雫井脩介著「犯罪小説家」

2009-05-02 | さ行
題名の示す著者の意図が解ればなるほどと納得の物語なのですが・・・
新進の作家、待居涼司の『凍て鶴』に映画化の話が持ち上がり監督に抜擢されたのは人気脚本家の小野川充。彼は『凍て鶴』に並々ならぬ興味を示し、この作品のヒロインには、かつて伝説的な自殺系サイト『落花の会』を運営していたリリーこと木ノ瀬蓮美の影響が見られると、奇抜な持論を展開する。
当時ネット自殺の『落花の会』の主宰者、木ノ瀬蓮美が公園の池に死体となって浮かんだ事件だった。
待居の迷惑気味な態度にはお構いなしに、小野川は映画化のためには蓮美の死の陰に登場する男の謎を解くことが必要だとし『落花の会』を取材したことのある女性ライター野上に追跡調査を頼んでから徐々に過去の事件の内情が明らかになっていく。しかし野上はそこに会にからんだ犯罪の痕跡を感じるようになり・・・。
一見、作家の裏話的なストーリーかと思いきや、ネット心中に絡んだミステリーの様相を含んできて思いもよらぬ展開になるのだが、冒頭のつかみが悪く読みにくい。読み進めると徐々に充ちてくる不穏ないらだちの空気が濃くなりどんどん謎が深くなってきて次を早く知りたくてたまらなくなるように読み続けることに。
まさに読む者を異様な雰囲気に飲み込ながら著者のペースに引き込まれ読み終わってみると著者のしっかりとしたサスペンス仕立ての筋書きに感心することになるのだが・・・詠み人の好奇心をくすぐる心理サスペンス小説です。
2008年10月双葉社刊


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