読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

壇上志保著『ガラスの煉獄―女刑務官あかね―』

2010-11-25 | た行
元刑務官という著者の女子刑務所物語。
北九州の女子刑務所で、作業課の刑務官を務める三上茜は、食器や花器などのガラス製品を作る、受刑者のガラス作業の監督、指導を行っている。
茜は、指導教官だった木島浩二、そして幼なじみの在日朝鮮人女性江崎涼と、それぞれ秘密の関係を持っている。
茜が一人の天才受刑者鈴木トモを見出してからの注目で上層部を色めきたたせた。
刑務所の組織やしきたり、部署間の協力と対立の図式、受刑者同士の複雑な確執など、知ることのなかった内部情報に興味がいった。
そんな独特の雰囲気を巧みに盛り込みつつ、テンポよくサスペンスタッチで展開される。
受刑者が密かに外部へ発信していた暗号文や、第三者に渡ってはならない仮釈放情報が漏れているとか、複雑な人間関係や女性しかいないから当然の性の問題等。
やがて見えない意図的策動に、あかねが運営する刑務所内のガラス工房を少しずつ蝕ん
でいきそして突然の惨劇がおきる。
高級硝子器の流通に見え隠れする北朝鮮の影、刑務官たちの暗闘、県警の絡む不可解な策動など。
日常の仕事とともに、茜の私生活が並行して描かれるが、話が唐突に過去にもどるため読みにくい。
木島よりも、涼と茜の愛憎半ばする関係が核になり、ガラス作業を巡る事件はむしろ従といった感じで展開される。
在日朝鮮人問題や不倫・男女関係の描写や心理状態も中途半端だが、特殊な塀の中が覗けて儲けた気分。

2010年9月 新潮社刊


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