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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

重松清著「リビング」

2009-07-04 | 重松清
連作短篇『となりの花園』の春夏秋冬の四季の出来事風景をDINKS夫婦と
お隣さんとの関係を縦糸に、微笑ましくて、ほの哀しい毎日のくらしを横糸に1冊の本に仕上っています12の短編物語集。
結婚して10年ぼくたち夫婦は引っ越し運が悪い。11回の引越しを経て今回のマイホーム新居は完璧、だったはずなのに・・・
雑誌社の編集部に勤める夫と自宅のSOHOで仕事する妻・・・
二人は時に互いにぶつかりながらも、隣家との近所付き合いの中で、共に生きることを確かめあっていく。・・・『となりの花園』
鯉のぼりをめぐる子連れ夫婦とバツイチカメラマンのショートドラマ・・・「いらかの波」
ひいばあちゃんの千代と一世紀近い付き合いの八千代ばあちゃん・・・「千代に八千代に」
離婚を決めたものの踏み切れない二人の夫婦の会話で、ふと思い出した亡き母親の口癖・・・「ミナナミナナヤミ」
旦那と子供を置いて高校の同窓会へ行く話・・・「一泊ふつつか」
本家との騒動を描いた・・・「分家レボリューション」
プチグレしていた高校時代、誰もがあこがれた矢沢永吉。思い出のエーちゃんのコンサート。そんな仲間がまた再会する ・・・「YAZAWA」。
離婚・リストラとりあえずのつもりで再就職した探偵事務所の初仕事・・・「息子白書」
両親の離婚を少年が自分なりに受け止める明るくてどこか切ない・・・「モッちん最後の一日」。
どの物語も読後感がさわやか。
「思い通りにならない人生や人間関係も、少しの我慢と発想の転換又違ったものになる。」といういつもの重松ワールドが楽しめます。
2000年12月中央公論社刊
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重松 清 著「かあちゃん 」

2009-06-24 | 重松清
8つの物語の各章の登場人物の一人が次の主役となり連鎖して展開される母と息子の物語。
そこに登場する様々な、かあちゃんたちが読んでいて涙腺を刺激され心を揺さぶる。けっして、電車の中や多数がいる中では読まないで。
ヒロシの父は、運転中交通事故で亡くなった。
助手席で同乗していた上司と一緒に。
被害者であると同時に加害者家族にもなってしまったかあちゃん。
其の時以来、ヒロシの母は自分が楯になって、一切の罪を一身に背負い、懺悔する日々が始まった。
夫を事故で亡くした後かあちゃんは笑わなくなった、ヒロシを一人で育て楽しみ事も全て拒みながら加害者家族を忘れずに生きて来た人生。
そして二十数年の歳月を経てヒロシは被害者家族の娘や孫である少年に出会う。
少年は、あるいじめに加担していた・・・いじめで誰からも助けてもらえなかった中学生のあいつは、自殺を図り、学校を去った。
残された僕たちは、それぞれの罪を背負い、罰を受けて、一人の年老いた「かあちゃん」に出会う。
そして、かあちゃんと出会う事で何かが変わって行く・・・
加害者の贖罪、母ちゃんの強さと弱さ、母親という存在を今の社会のあらゆる角度から眺めることで、現代日本社会の抱える問題点を焙りだしている。
母が子どもに教えてくれたこと、子どもが母に伝えたかったことを描いた、感動の温かくて切ないストーリーです。
『生まれてきた瞬間、いちばんそばにいてくれるひと、あなのおかげで僕はひとりぼっちではありません』(本分より)
『けんかや起きてしまったことは謝ることが出来るが、人を無視した行いは謝ることが出来ない。その行いを忘れずに心にとめて生きることしか・・・』

2009年5月講談社 刊
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重松清著 『ステップ』

2009-06-10 | 重松清
母親のぬくもりさえ記憶できない1歳半の美紀を残して結婚3年目で妻が逝った。
幼い娘を一人で育てていく父親の心模様を娘の小学校卒業までを描いた九つの連作短編。
二人と関わる人々とのなにげない日常風景。再婚を勧めつつ見守る義父義母、義兄夫婦。
「男手一つ」の子育ては決して楽じゃない。会社の上司や仲間に無理頼んで娘を保育園に送り迎えし、毎朝毎晩料理も作った。・・・ケロ先生。
小学校で「お母さんの絵」を描く図工の授業をどう乗り切るか・・・ライカでハロー・グッドバイ。
再婚したら美紀は受け入れてくれるだろうか・・・ホップ、ステップ。
娘を亡くした義父母との微妙な関係も含めその心の悩みはリアルだ・・・キュウリの馬に乗って/サンタ・グランパ/彼岸過迄。
だからこそ家族って何だろうと考えさせてくれる。
美紀の小学校卒業を控え僕はこう思う。「悲しみを胸に抱いたまま生きていくのは、決して悲しいことではない」と
・・・つらい思い出は、生きる優しさを育てる。・・・ジャンプ。
又重松ワールドに泣かされましたほっこりと温かい読後感もまたいい。
題名のステップはホップに続く二段目の跳躍や物事の進行上の段階の意味の他
stepfamily等の使い方で、血縁のない親子・兄弟などの関係を中に含んだ家族の意味があるので両方の意味を含んだ題名なのだろうか。
2009年3月中央公論新社刊
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重松 清著「サンタエクスプレス 季節風 冬」

2009-05-15 | 重松清
季節ごとに出版されてきた「季節風」シリーズの完結篇。
季節の記憶と1人ひとりの物語がゆたかに融けあった素敵な感動短篇集です。
出産のために離れて暮らす母親を慕う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた表題作 ・・・ 『サンタ・エクスプレス』
『あっつあつの、ほっくほく』高校2年生の時の焼き芋屋のオジサンとの思い出
『コーヒーもう一杯』親にも大家にも内緒で、2歳年上の彼女と同棲する19歳の大学生。洗濯機もないアパートに手回しのコーヒーミルを導入した彼女の好みはマンデリンだった。
『冬の散歩道』桜並木の公園にもなっている川沿いの遊歩道で、疲れ切ってベンチに座り込んでいる30すぎの男
『ネコはコタツで』年老いた父親が死んで、四十九日の法要が終ったあとから母親がめっきり老け込んだ。年末にはどっさり届いたはずの漬け物も今年は来ない。送ってきたお餅はいつもと違っていた。久しぶりに母親に会いに行った中年の男。 『火の用心』下町の町内会の「火の用心」の夜回り当番をつとめる二人の女子高生。
『その年の初雪』転校を三回している小学4年生のまたの転校
『一陽来復』短い文章の中に上手く描いた小品。コンビニで交差した4歳になるひとり娘と暮らす離婚したての女性など3組の節分の日の出来事。
『じゅんちゃんの北斗七星』大好きな友だちだった少年の記憶をたどる40代後半の男。
『バレンタイン・デビュー』息子のバレンタインデーをはらはらしながら見守る父親。
『サクラ、イツカ、サク』合格発表を見にきた受験生をカモにバンザイ攻撃で小金を巻き上げる大学2年生の一年前の思い出。
『ごまめ』ほか寒い季節を温かくしてくれる12の冬の物語。
2008年12月 文藝春秋 刊
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重松 清著「かっぽん屋」

2009-03-08 | 重松清
直木賞受賞して売れっ子の作家になる前の短編が8編収録されている。
「かっぽん」と言う言葉は、SEXを表す隠語・方言で、著者の重松氏の出身地方の言葉。
表題の「かっぽん屋」は、15歳の頃頭にあることといったらただひとつかっぽん。高校生になって入部したサッカー部を三日で退部したそんな時ある日、「かっぽん屋」があるというの噂が乱れ飛んだ。憧れと妄想に身を持て余すした思春期の少年たちの、ひたすらな性への関心憧れをユーモラスに描いた青春の痛みを描いた短編。
「すいか」・・・友達に連れて行かれたすいか畑。そこで繰り広げられる二人の男女の営みを盗み見た小学生の話。
「ウサギの日々」・・・中学に入学して入ったサッカー部で1年生は来る日も来る日もうさぎ跳びばかりさせられた思い出。
「五月の聖バレンタイン」・・・17歳の時に交通事故で亡くなった姉の13回忌に姉の元彼もやってくると言う。
以上レコードのAB面に擬えてA面収録短編。
B面は、田村章/岡田幸四郎といったペンネームで書いた映画のノベライズやテレビドラマの『世にも奇妙な物語』のストーリーなどノンフィクションライター、コラムニストとしての作品。
「失われた文字を求めて」・・・『ピッタリの仕事だと思ったのだが』本を読んで内容を要約する仕事についた読書好きの男の苦悩を描いた作品。
「大里さんの本音」・・・いつもおとなしくて目立たない大里さんが、事故で頭を打った事から人格が変わってしまい・・・。
「桜桃忌の恋人’92」・・・太宰治の研究の第一人者の大学教授は桜桃忌が近づくにつれて、日頃以上に無口になていく原因は。
「デンチュウさんの傘」・・・いつも自分の持ち物が他人の物とスリ替わってしまう田中さんが取り違えたのは子供からもらった大事な傘だったのだから大変。
巻末には貴重なロングインタビュー2本も収録されている。
2002年6月 文春文庫 刊
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重松清著「少しだけ欠けた月 季節風 秋」

2009-02-28 | 重松清
暑気が通り過ぎて空が澄んでくると、どこかもの寂しい季節がやってきます。
ひと恋しい秋・・・季節シリーズ第3弾
離婚が決まって最後に家族揃ってレストランでの外食。
満月でない少し欠けた月は、すべてが終わってしまった後の家族に似ていた。
・・・表題作他計12の短編集。
1、オニババと三人の盗賊、2.サンマの煙、3.風速四十米 
4、ヨコヅナ大ちゃん 6、キンモクセイ 7、よーい、どん!
8.ウイニングボール 9.おばあちゃんのギンナン 
10・秘密基地に午後七時 11、水飲み鳥、はばたく 
12、田中さんの休日
夏の名残りの花火にあがる子供たちの歓声や故郷の家を片付けているときに
見つけた子どものころの愛読書など、胸にしみる12の秋の風景。
『澄んだ光に満ちた秋が、かけがえのない時間を連れてくる、ものがたりの歳時記。』
どの作品も読んでいると「気持が熱く」なる瞬間があり重松さんの巧みさを感じます。
そして、主人公は子どもであったり、子ども時代を経てきた大人であったりしますが、家族の結びつきや
成長するにつれて変わってゆく家族内部の距離の取り方などの微妙さや
「親の老い」や著者と同様の40代以降の人たちを主人公にした作品が
多いのもこの短編集の特徴。
この時代の人たちの心を映し出すようような、切なく、哀しい、そして苦しい。
そして、何故か暖かい。生きる、ということ。歳をとる、ということ。
将来への不安とか、責任とかこれからの人生の諸々。
それらともきちっりと向き合って考えなきゃいけないことを改めて考えさせられた。

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重松清著「気を付け礼」

2009-02-09 | 重松清
教師と生徒を題材にして、生徒が大人になったその後が描かれている、六篇の短編集。
僕は、あの頃の先生より歳をとってしまったけど、先生はずっと僕の先生だった。
受験の役にはも、何かを教わったんだということにさえ、
若いうちは気づかなかった。今オトナになってからわかった・・・。
綺麗事ではない厳しい現実が織り交ぜられながらも、先生の温かい気持ちが描かれている表題作「気を付け礼」
ニール・ヤングを教えてくれた物理の先生・・・「白髪の二ール」
『僕はロールしてるか?僕の人生は、まだ止まってないか?動きつづけてるか?
いまは止まっていても、もう一度動き出せるか?まだ間に合うか?間に合え。
間に合うといってくれ。ロール。ロール。』(本文より)
イジメにあっていたあの頃、怖いけど本当は優しい保健室のおばちゃん先生・・・「ドロップスは神様の涙」
今ではボケ老人だけど、画家になる夢に破れた美術教師・・・「マティスのビンタ」
自分も今では教師。教師って完璧ではない。 聖人君子でもないし、神様でもない。
一人の人間である。・・・「にんじん」
癌になった教え子を見舞う。野球部を舞台とした・・・「泣くな赤鬼」
理想の先生ではないけれど、どの作品も本来の人間らしい姿で描かれていて
泣ける作品達でした。

2008年8月新潮社刊
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重松 清著 「とんび」

2009-01-05 | 重松清
『父と息子に流れる時間を書きたかった。』(著者談)
昭和37年の瀬戸内海に面した街、備後市。
主人公28歳のヤスに愛妻、美佐子の間に、待望の長男アキラが誕生し、
生涯最高の喜びに浸っていた。妻と我が子の成長を見守り、幸せを噛みしめる日々。
それは、幼い頃に親と離別したヤスにとって、ようやく手に入れた「家族」の
ぬくもりだった。
しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう・・・。
困難に直面するたび、不器用に戸惑い、悩みながら、それでも我が子の幸せ
第一に考え、息子を育てる父親の、喜びと哀しみ。
とんびが鷹を生んだと称されるほどの息子、アキラ。
その二人の生活を温かく見守る人々。 昭和の良き時代を背景に
魂が涙する、我が子の幸せを願う父親の姿を描いた長編父親物語
相変わらずの重松ワールドに又涙出まくりでした。
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重松清著『僕たちのミシシッピ・リバー』 季節風 夏

2008-10-12 | 重松清
季節のシリーズ短編集「季節風」の第2弾の夏。
梅雨、七夕、夏休み、帰省など6月から8月の時期を舞台にした夏を思う
12編の物語。
誰より気が合う相棒の転校を前に、僕らは冒険に出かけた・・・
転校していく友との友情を自然体で描く表題作他
風呂上りの天花粉にまつわる思い出とおばあちゃんの思いが胸に染みてくる「べっぴんさん」、
著者の実体験?同棲時代のはなし「風鈴」
母の再婚で新しい父と死んだ父との思い出「ささのはさらさら」
病気で死んだ父と最後に作った夏休みの工作の思い出「タカシ丸」
「親知らず」「あじさい、揺れて」「その次の雨の日のために」
「魔法使いの絵の具」「終わりの後の始まりの前に」「金魚」「虹色メガネ」。
どれもホロットさせる友を家族を恋人を“思う”12の夏の風景。

2008年6月文藝春秋刊
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重松清著「定年ゴジラ」

2008-09-28 | 重松清
元銀行マンの山崎さんを中心にくぬぎ台ニュータウンに住む定年仲間、
元くぬぎ台ニュータウン開発の仕掛人で電鉄開発課長だった藤田さん、
元運送会社の野村さん、元大手広告代理店の営業部長だった町内会長の
四人の散歩仲間の定年物語。
娘の不倫や老後の事、ニュータウンの移り変わり等を話題にホロリと
させる人情ドラマ。第4章の郷里の思い出を綴った「夢はいまもめぐりて」
母親とチュウさんのエピソードには涙した部分でした。
明日は我が身の物語。
2000年講談社刊
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重松清 著「エイジ 」

2008-09-03 | 重松清
山本周五郎賞受賞作。
14歳高橋エイジは東京郊外の桜ヶ丘ニュータウンで暮らす「自分探し」の
中学2年生。
連続通り魔事件の犯人がクラスメイトだった事にショックをうけ心に不安と怒りとが交錯する日々を送ることに・・・・。
事件を巡る中学生の日常を通じて少年から大人に変りゆく思春期の様子をリアル
に描いた感動小説です。   2000年 朝日新聞社 刊

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重松清著「疾走」

2008-09-01 | 重松清
臆病で寂しがり屋で、少し甘えん坊なところのあるシュウジは、
よく兄のシュウイチのあとをついてまわる子供だった。
そして何よりも走ることが好きな子供だった。
たったた15年間の人生を疾走していったシュウジの生き様を生まれた街の
変遷と家族崩壊の中で精一杯生きた人生を描いた感動の物語。
2003 年 角川書店刊

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重松 清 著「ビタミンF 」

2008-08-26 | 重松清
ヒトの心にビタミンのようにはたらく小説。
7つの短編にファミリー.ファザー.フレンド.ファイト.Fragile.Fortune(F)
で始る様々なことばが埋め込まれたFiction小説。
中年を向かえた男の家族と社会の係りかたの哀歌、読み終わった後の
心地よさが味わえる一品です。
2000年 新潮社刊

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重松 清 著『ブルーベリー』

2008-06-27 | 重松清
著者自身の自伝的青春短編集。 40歳になって、1981年からの大学生時代の4年間を振り返って書かれた短編集12編。
40歳というとこれまでの生き方を振り返る年頃でもある。
表題作かなともいいえる『僕と少女とブルーベリー』では、大学2年の時小学3年生の女の子の家庭教師をした思い出が語られる。
母子家庭のような家庭には恵まれていない環境で傷ついているまだ子供の少女を冷たく突き放してしまった時の後悔の瞬間。
「19歳の僕は、40歳の僕が胸ぐらをつかみたくなるくらい冷たくて、自分勝手で、無神経で、優しさに欠けていて・・・」(本文より)。
そんな当時の自分の幼さを、当時まだ一般的でなかったブルーベリーを初めて口にした時のような酸っぱさに例えてふり返る。
『4時間17分目のセカンドサーブ』・・・41歳になり会社をつぶしてしまった檜山のところに、当時の知り合いの宮田さんから。「第4セットと第5セットを見て」といった簡単な手紙が添えられてウインブルドン決勝「マッケンローvsコナーズ」のビデオが送られてきた。23歳絶好調のマッケンローと盛りを過ぎていたコナーズの名勝負。それから18年たった今あのころは気づかなかったあるシーンが見えるのだった・・・。
『洗いざらしの幸運』・・・コインランドリーで知り合った恋する女性との思い出。
『マイ・フェア・ボーイ』・・・ウイスキーに関する年上の女性トモさんとの思い出古き良き思い出をただ懐かしむではなく、甘いセンチメンタリズムに陥いることなく当時は気づかなかったが、過ぎ去った20年の時間を経た今だから気づかされた思い出、後悔、喪失感を書き綴った計12編。
当時を象徴する固有名詞(トレンド、ショップ、グッズ、小説、ブランドなどの数々)が織り込まれその時代の背景を浮き彫りにする。
重松ファンの私には、著者がどんな時代を生きて何を感じてたのか興味が持てた。1981年から大学の4年間。「あの頃の東京と、仲間たち――いやたぶん僕自身捧げる」(著者)
2008年4月 光文社刊  1680円(税込)
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重松 清.著「ツバメ記念日 季節風・春」

2008-06-07 | 重松清
誰にとっても過去の記憶に刻まれた春の様々な出来事は、四季のうち一番
ドラマチックな季節かもしれない。
憧れ、旅立ち、別れ、幼い日の母の面影など温かい涙あふれる12の春の短編集。
記憶の中の“春”がつれてくる懐かしい母の故郷の景色、そして若き夫婦の葛藤・・・。
春は旅立ちの季節であり、それは同時に振りかえりの季節でもあります。
去ってしまったひと、失われた風景がこの小説を読んで
自分の頭の中の記憶と交差した時忘れかけていた当時の状況の記憶が
鮮やかに甦ってくる。
どの短編も何かに悩んだりつまずいたり悲しい出来事にあったりするものの
最後はほんわかな希望がわいてくるような話です。
結婚する娘に生まれたころの夫婦の様子を手紙に書いた
表題作「ツバメ記念日 」他「めぐりびな」「球春」「よもぎ苦いか、しょっぱいか」など12篇。
どの話しも.一生懸命生きている人達が息づいている短編ドラマを見るような
作品です。
どの章を読んでいて何度も涙が出そうで困った。
こういう物語を書かせると重松さんは上手い。
2008年3月文藝春秋刊 1470 円
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