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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

高嶋哲夫著「浮 遊」

2016-06-12 | た行
日本の脳研究の最前線を走る医師・本郷を襲った突然の自動車事故。頬に当たる雨、ガソリンの臭い。
同乗していた恋人の無事を確認しようとするが、身体は動かない。そして途切れる意識・・・。
気付けば彼は、一条の光も見えない、深い闇の中に横たわっていた。「誰かいないのか! 」
その言葉は暗闇に吸い込まれるように、返事はない。感覚のない身体、無限にも感じる時間、
徐々に恐怖に浸食されていく精神・・・そんな中、突如、頭の中に同僚の医師の声が響いてくる。
水中を通ったようなくぐもったその声は、闇と時の恐怖から本郷を解放すると同時に、自らの置かれている「驚愕の状況」が解ってくる。
舞台はK大学医学部脳神経外科研究棟三〇五号研究室。脳研究の第一人者の医者である自分が交通事故で
自らのプロジェクトの実験台となり体を失い脳だけが管に繋がれて生かされている状況。
何故か聴覚(空気の振動を感じ取って音状況で聞き取る)だけの存在となる設定。
脳だけの存在となった主人公が人間の本質生死の問題を問い掛けるのだが、α波などの脳波モニターさえ無視の一方通行で
何か物足りない展開だった。
2016年3月河出書房新社刊
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大門剛明著「JUSTICE ジャスティス」

2016-05-01 | た行
弁護士事務所を舞台にした正義をめぐる6つの事件の連作。
弁護士200名の巨大法律事務所・師団坂法律事務所に招聘されたニューヨークの大手法律事務所からやって来た弁護士鷹野和也。
勝利至上主義の彼が導き出す「正義」の常識を破壊する数々。
まず手始めに己の実力を示すために死刑を求刑された車を暴走させ無差別殺人の被告人藤真純一の弁護をすべく動き出す。
それはやがて周到な犯罪計画を暴き浮かび上がる。
6人の個性豊かな弁護士の主観で臨場感たっぷりの事件を追う。
どの章も「なぜそんなやつを弁護するのか?」「正義とは何か」という難しい問題を考えさせられた。
一方で、本当に依頼人のためを思うならどういう解決を選ぶべきか、というのも重要なポイントだなぁと。
「ブレーメンの弁護士たち」「カルネアデスの方舟」「マアトの天秤」「悪魔の代弁者」「蜘蛛の糸」「正義の迷宮」
2015年8月株式会社KADOKAWA刊
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高村薫著「四人組がいた。」

2015-10-11 | た行
「ニッポンの偉大な田舎」を舞台にした、ブラックユーモアに満ちた奇想天外の連作短編十二編の小説。
舞台は「平成の市町村大合併」なる迷惑な構造改革のおかげで村役場も村会議もなくなった、野鳥と川の生き物を除けば、
わずかな年寄りと四つ足しか棲んでいないしけた寒村。
村一番お教養人の元村長、村一番の常識人の元助役、自称プレーボーイの郵便局長、そしてキクエ小母さん。
儲け話と、食い物に目のない老人四人組は、集会所に集まっては、日がな一日茶飲み話を。
だがそこへ、事情を知ってか知らぬか、珍客がやって来る。タヌキのAKBアイドルに、はたまたキャベツの大行進。
ダチョウの大移動、最後には、天国と地獄の経済破たんの閻魔様まで。
今の日本を、政治・経済・風俗・時事ネタを地方からユーモアを交えて軽妙かつシニカルに描き出す。
奇想天外、ファンタジーか御伽草子か・・・ブラックユーモアに満ちた12編。頭を柔らかくして読み飛ばして味わうべき
2014年8月文藝春秋刊
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徳永圭著「X Y」

2015-09-26 | た行
専門商社に勤める宗谷聡子は、生きることに疑問を抱き、淡々とした毎日を過ごしていたある日、弁理士の堂島昭彦との劇的な出会いが聡子を少しずつ変えていく。
この人とずっと一緒にいたい、そう思い募るが、聡子は堂島の隠された秘密を知ってしまう。
湧き上がる疑念と焦燥の日々。やがて彼からアメリカ勤務を告げられ、絶望に沈んだ聡子は許されざる禁断の行為を決行する。
彼に内緒で彼の精子を冷凍保存し自らの卵子と体外受精させ彼の子供を産むことを決意するのだが・・・。
衝撃のWどんでん返しに一つは気付いたのだが・・・。
母親との確執がもう一つ腑に落ちなかったがサスペンスとして面白く読めた。
2015年7月角川書店刊
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月村了衛著「槐(エンジュ)」

2015-08-28 | た行
弓原公一が部長を務める水楢中学校野外活動部は、夏休み恒例のキャンプに出かけた。
しかしその夜、キャンプ場は武装した半グレ集団・関帝連合に占拠されてしまう。
彼らの狙いは場内のどこかに隠された振り込め詐欺で騙し取った40億円。関帝連合内部の派閥争いもあり、
現金回収を急ぐリーダー・溝淵はキャンプ場の宿泊客を皆殺しにし、公一たちは囚われの身になる。
そのとき、何者かが関帝連合に逆襲を始めた。圧倒的不利な状況で闘いに挑んだのは一人の女性「槐」。
そして半グレ集団との闘いは壮絶ものになった。ダークヒーロー仕事人槐のアクションは爽快。荒唐無稽が楽しめました。
2015年3月光文社刊
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滝田務雄著「田舎の刑事の好敵手」

2015-04-01 | た行
コミカルなミステリー。県警本部より首席監察官の透山警視正が視察に来るという知らせに、のんびり警察署の
問題だらけの田舎刑事たちは大慌てになる。
実はこの首席監察官、黒川鈴木刑事の高校時代のライバルだったのだが、警察官としては致命的な欠点がありるとか。
署内がパニックに陥るなか、行きがかり上、黒川鈴木は妻と部下の白石だけに、この透山警視正とは高校時代にはライバル関係だったのだと打ち明ける。しかし同じ警察官となった今や、あちらは警視庁キャリアのエリート警視正、こちらは辺鄙な警察署の刑事課巡査部長。
そんな時、アマチィヤ小劇団で起きた謎の事務所荒らしが起きやがて公民館での墜落死体事件に発展大事件に・・・。
無能な部下・白石や黒川夫人、さらには暴走する元ライバルにも頭を抱えながら黒川は捜査に乗り出す。
言葉の遊びというかコミカルな会話で読ませるのだがあまりリアル感がないのが残念。
トリックも意外性なし。

2014年12月東京創元社刊
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高森美由紀著「ジャパン・ディグニティ」

2015-01-17 | た行
第1回「暮らしの小説大賞」受賞作。(2014年)
「ディグニティ」とは、威厳とか尊厳という意味。
主人公は津軽の漆職人のひとり娘美也子。幼いころから小さな工房で漆塗りに向かう父の背中を見て育ち、
二十二歳の今は近所のスーパーでアルバイトをしながら漆塗りを手伝っている。
昔ながらのやり方を頑なに守り続ける父は時代の流れから取り残され、注文は激減。
一家は生活にも汲々とするありさまで、長く耐え忍んでいた母親もついに家を飛び出してしまう。
美也子は、スーパーのレジ打ちのバイト先でトラブルを招いてしまう不器用者だし、漆職人として独り立ちする覚悟も持てないでいたのだが・・・。突然カミングアウトし女装しはじめた弟との会話など面白さはあるが先が読める展開の職人話ではあった。
それなりに伝統の技を取得するため作品つくりに取り組む様子は感動の話に纏まっていてこういう取り組みが日本の技術を守り伝えていくことに繋がるんだと思った。

2014年10月産業編集センター刊
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恒川光太郎著「スタープレイヤー」

2014-12-31 | た行
白い服を着た大男に声をかけられ路上の運命のくじを引き見事一等賞を当て、フルムメアが支配する異世界へ
飛ばされたバツイチ無職の34歳の斎藤夕月。
そこではタブレット端末をつかって10個の願いを叶えることができる「スタープレイヤー」に選ばれたと説明を受ける。
10の願いの使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗る別のスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていきくことに。
RPG的興奮と神話世界を融合させた異世界ファンタジー物語。ちょっぴりホラー・幻想ファンタジーでないので少しがっかりだが展開の結末をどうつけるか楽しみで最後まで読まされました。
死んだ人間を生き返らせるあたりまさにバーチャルなゲームの世界でついていけない部分も多くあった。

2014年8月 株式会社KADOKAWA刊
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富樫倫太郎著「生活安全課0係 ファィアーボール」 

2014-12-30 | た行
わけあって所轄の窓際部署に やってきたキャリア警察官・小早川冬彦。
何が入っているのかタウンリュックを背負ったマイペースな変人だが心の裏を読み取るスペシャリストだった。
「のぞき」「徘徊老人」「迷子」「不登校」や「連続放火」など次々起こる事件問題に
人の心の動きを敏感に読み、小さな事件に隠された重大事にも着目して最後には全て繋がって解決する痛快警察小説。
所轄の悪徳警官までもあぶり出して・・・
嫌々相棒に抜擢?された現場叩き上げ高虎刑事とのコンビネーションも面白い。
続編もありそう?

2013年7月祥伝社刊

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大門剛明著「テミスの求刑」

2014-11-18 | た行
テミスとは、ギリシア神話の法・掟の女神、手に秤を持つ。
検事宛に冤罪を訴える電話を取ってしまった事務官の平川星利菜。
その電話が第2の事件へ繋がっていくとは・・・。殺人現場付近で撮られた防犯カメラに映った敏腕検事の衝撃の姿、
その手には大型ナイフ、血まみれの着衣。無実を訴えたきり口を閉ざした犯人と目されたのは上司の田島検事。
この事件の背後には、殺された父も絡む何年も前の不適切だった不起訴処分に由来する殺人事件とそれに関する
当事者の悔恨の念に端を発する,冤罪がからむ因果の連鎖があったのだ。派手などんでん返しはないが感動のミステリードラマです。
「本当に優れた検事や弁護士とは、勝つとか負けるとかではない。事件関係者を少しでも幸せにする者ではないだろうか。」(P307)
2014年8月中央公論新社刊


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高嶋哲夫著「首都崩壊」

2014-09-02 | た行
10日前留学先のボストンから帰国したばかりの国土交通省の森崎真は、東都大学地震研究所の准教授前脇から、マグニチュード8クラスの東京直下型地震が大幅に早く発生する予測データを示される。
その翌日、今度はアメリカ留学時代に親友となったロバート・マッカラムが大統領特使として来日し、東京直下型地震の経済損失が112兆円にもおよび、1929年を遥かにしのぐ世界大恐慌を引き起こすレポートを突きつけてきた。右往左往する森崎、そして日本政府。
人類未曾有の危機を回避する手段はあるのかを模索し始めたとき、震度6弱の地震が東京を襲った。地震規模が予測を下回っていたことに一度は安堵する森崎だったが、この地震は首都崩壊への序曲にすぎないこと危惧する。
南海トラフと首都直下型地震から、富士山の噴火を誘発し、経済の停滞から日本国債の暴落、CDS、信用格付け会社による格付降下、国際ヘッジファンドらに喰い物にされる日本、そんな困難に付け入る中国マネー。
シミュレーションレベルが低く、登場人物に緊張感がないのと人物描写に深みがなく感受移入しにくいのは残念だが、「首都移転」「道州制」など提言は一考の価値ありとおもう。
金融とマスメディアの各々の立場から日本の首都東京のあるべき姿を問うた、日本を直視する近未来予想ノンフィクションです。
2014年2月幻冬舎刊
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大門剛明著「獄(ひとや)の棘」

2014-07-13 | た行
刑務所舞台にした7つの連作短編。獄の棘とは刑務所の鉄条網のこと。
この閉ざされた内部では、外からは窺い知れない様々な事件が起こっている…いじめ、内部告発、偽装結婚、脱獄・・・。
祖父の代から三代続く新米刑務官・武島良太が見た、塀の中での事件出来事が、上司である統括の名久井と
看守部長の秋村たちに支えられて、一人前の刑務官と成長していく様子が語られる。
主人公は3年間のアルバイトを経て刑務官試験に合格、弘前刑務所の刑務官となる。
被告人の罪が確定して受刑者になるかどうかを賭けの対象にする奴ら・・・「赤落ち」、
脱獄を目論む囚人がいるらしい・・・「脱獄の夜」、元実業家の受刑者と獄中結婚した女性の目的は「プリズン・グルーピー」、
被害者遺族の講話許すとは・・・「幸せの天秤」、矯正展に出品された木箱には謎の数字が・・・「矯正展の暗号」、
刑務所内で起こったある事件の真相・・・「獄の棘」、配属されたばかりの新人がもう辞めるって・・・「銀の桜」の7編。
真の矯正とは考えさせられました。
2014年2月角川書店刊
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徳永圭著「その名もエスペランサ」

2014-05-08 | た行
主人公は29歳の本郷苑子、黒縁めがね使用の生マジメタイプ、倹約のぼろアパートで独り暮らし、日課は通い猫のエサやり。
目指すは「派遣のプロ」だった。
前の職場で受けた心のキズが癒えぬまま、三ヶ月ぶりの新たな派遣先は大手のメーカーの下受で車のエンジンを製造する鈴並工業。
仕事は英文事務のはずが、いきなり作業服姿で部品係を兼務。話が違うと電話で抗議したのだが、周りはトラブルを喜ぶチャラ男や、白鬚姿の枯れてない仙人や怒ってばかりの鬼に囲まれ、初の海外プロジェクトの一員に組み込まれてしまう。
派遣社員でも愛社精神は・・・最初は苦手な相手だったが仕事仲間たちとの達成感など感動のお仕事小説は
生き方働き方を考えさせてくれる小説でした。

2014年3月新潮社刊
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高嶋哲夫著「ライジング・ロード」

2014-05-01 | た行
東北・宮城県の三陸海岸を舞台に、「太陽光エネルギー=ソーラーカー」にかけた希望を描く感動の小説。
大手電機メーカーを「ある事情」で退職したエンジニア・野口陽子は、東北の存続が危ぶまれる大学に非常勤講師として招かれた。
彼女に課せられた使命は、太陽光で走る「ソーラーカー」を作り、レースに出て大学の知名度を上げること。
そして陽子のもとに集まった落ちこぼれの六人の学生たち。一見、能天気に見える彼らも心の奥には様々な悩みを抱えている。
陽子には離れて暮らす娘がおり「全日本ソーラーカーレースで優勝できなければクビ」という条件も突きつけられています。
ヒトもカネも技術もないなかで、なんとか集めた学生6人で、ゼロの状態から陽子をはじめ「太陽の七人」たちの
ソーラーカー作りが動き出します。
二つの予選レースを経て、 八月に鈴鹿で行なわれる全日本ソーラーカーレース優勝を目指して、彼らの熱く激しい挑戦です。
あらすじ展開3.11震災など結果も予想できる展開だが太陽光エネルギーという新しい可能性を通じて地元東北を
元気にする感動物語になっている。
2013年3月PHP研究所刊
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月村了衛著「黒 警」

2014-04-11 | た行
警視庁組織犯罪対策部の沢渡と暴力団滝本組幹部の波多野。
やる気のない刑事・沢渡、ヤクザだけどちょっと任侠系で好人物・波多野。
二人は過去に組織に追われる中国人女性に偶然出合わせて、助けを求められたが、共に事情を抱えており
見殺しにした事に後悔と深いトラウマを抱えていた。
沢渡は中国製のバッタモン(コピー商品)の裏ルートを捜査中に浮かび出てきた中国人沈の情報を波多野から得ようと接触。
そんな彼らが中国黒社会の新興勢力「義水盟」の沈からカンボジア女性サリカを匿ってほしいと頼まれた。
サリカは天老会の黒社会の大組織の機密を握っているらしく、天老会は警視庁幹部とも裏で通じているらしいことが解ってくる。
やがてサリカを匿っていた波多野が・・・

従来の警察小説とはちょっと趣きを異にする作品でした。後半の展開は痛快です、意外性のある展開でスッキリ出来る結末でした。

過去に負った心の傷を抱えて理想も希望も失くした主人公の、その魂の再生の物語。
読編が期待できる終わり方で面白かった。

2013年9月朝日新聞出版刊
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