メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

岩波少年文庫 3052 カッレくんの冒険 A.リンドグレーン/作 岩波書店

2023-08-17 18:00:17 | 
1958年初版 1993年 第30刷 尾崎義/訳 エーヴァ・ラウレル/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


カッレくんシリーズ2作目

私はハードカバーが好きで、他館図書館から探してもらったけれども見つからず
老舗の“岩波少年文庫”で借りた


 


リンドグレーンのほかのシリーズはもっと長いけれども
カッレくんは3冊しかないのは、日本語訳が追いついていないのか?

それとも、この平和な町に住む少年がいかに賢くても
そんなに事件が起きたら、さすがに不自然だからかも

普段は危険な冒険大好きな少年少女たちも、ほんとうの殺人事件に遭遇したら
悪夢にうなされ、PTSD症状が出るほどブキミな体験だということが伝わる

けれども、紅一点のロッタにしても
生来の陽気でおおらかな性格のお陰で引きずらず
今回も一致団結して解決していくのが逞しい

時々、声を出して笑うほど、子どもたちの日々の描写が
生き生きとして楽しいのがなによりの魅力


【内容抜粋メモ】


登場人物

<白バラ軍>
カッレ・ブルムクヴィスト 名探偵を目指している13歳の少年 食料雑貨店の息子
エーヴァ・ロッタ・リサンデル カッレの隣りに住むパン屋の娘
アンデス 別の町に住む靴屋の息子

<赤バラ軍>
シックステン 郵便局長の息子
ベンカ 医者の息子
ユンテ おんぼろ丘に住む

ビョルク巡査
グレーンじいさん



●赤バラ白バラ戦争




ナシの木の下で名探偵になりきっているカッレを見て呆れるアンデスとロッタ
去年の夏、宝石どろぼうを捕まえた時はもてはやしたが、それもすっかり過去のこと

7月から2か月半ある夏休み
赤バラ軍から布告文が来て、再びバラ戦争が始まる

舞台は『大平原』と名付けられた広場
戦争といっても、本来はとても仲が良い仲間同士

親は子どもたちの危険な遊び方を見て、呆れながらも
自分たちも子どもの頃に同じように大平原で遊んだ経験を思い出して
きついことは言わず、夜7時の晩御飯の時間までに帰ればよしとしている






●グレーンじいさん
誰もがその歩き方で彼だと分かるひょこひょこ歩きで
「いいんだ、いいんだ、子どもの楽しい遊びなんだ そうだよ、そうだよ」というのが口ぐせで
ロッタもよく真似をする

親が言うには“高利貸し”をしている
どんな仕事か知らないアンデスらに説明してあげるロッタ


●大地主屋敷
廃屋となった屋敷を新たな司令部にした赤バラ軍
調べに来たカッレとロッタは、部屋に入った途端、外からカギをかけられてしまう

カッレは探偵学の基礎だとばかり、壁紙をはがしてドアの下から出し
さしこまれたカギを外して落として手に入れ、易々と脱出する





ロッタ:カッレ、あんた、ステキね


山賊ことば
単語の頭に「こ」、2番目の音の後に「ろろ」をつける白バラ軍の秘密の言葉

もとはロッタの父が子どもの頃に使っていたのを教えてもらって
3人は英語の勉強より熱心に練習して習得した(w


●聖像
ベンカが以前見つけた奇妙な形の石
赤バラ軍のマスコットで、奪い取った白バラ軍は秘密の場所に隠した
どこにあるかヒントをあげるのが暗黙のルール

赤バラ軍は、隊長アンデスを捕えて、山賊ことばと聖像のありかを尋問するが
なかなか口を割る気配がない





アンデスの残した手掛かりのメモから
おんぼろ丘にあるユンテの家に連れて行かれたと分かる


●おんぼろ丘
刑事がより高い階から犯人を見張ることから
ユンテの隣りのグレーンじいさんの屋根に登るカッレとロッタ





滅多に見ないクルマが停まっていることに気づき
普段なら絶対ナンバーを確認するが、それどころではないカッレ

はしごの途中の窓から中が見え
緑色のギャバジンズボンをはいた男の客が来ていることが分かる

男:なんとか支払うよ と借りた金の話が聞こえる
“借金証書”とはどんな紙なのか気になるロッタ

シックステンらは、アンデスをくすぐって尋問し
“地主屋敷の・・・”と言いかけた瞬間、屋根からカッレがパチンコを撃って照明を割る
真っ暗闇になった隙にアンデスは逃走





野育ちの幸福な、若くて恐れを知らない13歳の身軽さとしなやかさで
どこまでも走れる気がするカッレは、アンデスとロッタに隠れろと言って
自分1人囮となって逃げる

“なによりも愉快だったのは、自分の体がまったく思う通りになり
 足が速く動き、呼吸がラクにできる感じがしたことだった”
(それが最高の幸せだね、まったく





癇癪持ちのカールソンばあさんの庭に入り、カッレは危機一髪逃れるが
シックステンらは捕まって、小言をもらう


●足のフレードリック
カッレは友人のフレードリックの部屋にかくまってもらおうと入ると
ベンカの父で医師のドクトル・ゴスベルィが診療中

ベンカ:シラミ犬め、とうとう現行犯を捕まえたぞ!
ドクトル:パパになにか言ったのかい?(爆

幼稚園児のように父に連れて行かれるベンカ

フレードリックは、カッレが窓から逃げたとウソを教えたため
裏が川だと忘れて飛び込み、追手はそれまでとなる


●市の日の使命
“ロッタはどの日も楽しくて好きだった”

隊長は靴屋、カッレは食料品店の店番を言いつかったため
ロッタは隊長の命を受けて、1人で地主屋敷にある聖像を別の場所に隠しに行く
シックステンらは遊園地で遊んでいる隙がねらい目

人気のない屋敷の奥にグレーンじいさんの後ろ姿を見て
あの緑色のギャバジンズボンの男が一緒に歩いていく

その後、真っ青な顔で男が戻ってきて、気まずさから時間を聞くと
「2時15分前だ」と言って、慌てて去ったため
借金証書を落としたことに気づかない






ロッタはその先でグレーンじいさんの死体を見つけて
記憶がないほど走って家に帰り、父に抱きついて報告する


●殺人事件
平和な町が一変し、地主屋敷は警官が立って通行禁止となる
グレーンじいさんは後ろから一発で射殺された

唯一の目撃者のロッタは、ショックで寝込む
もう二度と地主屋敷には行かないし、バラ戦争などやらないと誓う

(PTSDもパニ障も、恐怖と体験が結びついて、その後の予期不安につながる仕組みが
 これでもよく分かる・・・/汗

店番をしていたカッレの耳にもニュースが入る
カッレ:お前はまったく人間のカスだ
と責めて、愚かしい名探偵ごっこなど金輪際やらないと誓う

まったく知らないアンデスにも告げて、2人はロッタに同情するが
陽気で活動的なアンデスはじっとしているのが最も苦手

アンデス:キミが手伝えば、みんなが喜ぶんだぞ
とカッレを大平原に引っ張って行くが
ビョルク巡査に話すと、子どもは家に帰れと言われて憤慨


●尋問
警部はロッタの精神をこれ以上脅かさないよう
自宅で私服のまま尋問することにした ロッタの父も一緒

落ち着きを戻したロッタは、冷静に事件について話したため
犯行時刻も絞れたし、大体の人相も分かった
ロッタはもう一度見たら、千人の中からでも思い出せると断言する

犯人の名前が書いてある絶対的証拠の借金証書はどこにも見つからず
警官は徹底的に地主屋敷を捜索するが出てこない
グレーンじいさんは内職で高利貸しをしていて、借主を全員洗い出すことにした

緑色のギャバジンズボンの男を月曜の夜、グレーンじいさんの家で見たとも証言


●新聞の一面
全国の新聞がこの事件を一面に載せ、筆の乗った主筆は
ロッタの実名と住所まで載せたために、父が抗議に行く

リサンデル:
一度人殺しをした奴は、また殺すかもしれない
そんな奴に名前や住所を教えるなんて実にけしからん!(ほんとだよ・・・


●地球の中
ロッタはバラ戦争を再開することで、事件のことを忘れることにした
聖像をシックステンの部屋に隠そうと計画して、ウソを言って部屋に入れてもらい
地球儀のネジを外すと2つに割れることを思い出して、そこに隠そうと決める






「いいんだ、いいんだ、子どもの楽しい遊び・・・」
といつものようにグレーンじいさんの真似をして
ロッタは真っ青になり、泣きながら帰ってしまう


●満月の夜
シックステンの家に若い叔母が2人遊びに来ていて
何度もかまをかけて、月曜には帰ると聞き出すアンデスw

ロッタに同情した人々は、毎日のようにチョコレートなどを送ってくるため
一緒に消費を手伝っていたカッレとアンデスはもう辟易していたが
ロッタは封筒から板チョコを出して割り、2人に渡す
2人は無造作にポケットに入れる
(なにかの伏線みたいでハラハラする しかも直接ポケットに入れるって/汗

満月の夜、アンデスは1人でシックステンの家の窓から忍び込むと
シックステンの愛犬でコリーのベッポが喜んで吠えて迎えたため
アンデスはとっさにポケットのチョコレートをあげる(犬には毒なのに!

何事かと思って起き出した局長さんに対してあくびをして見せるベッポww
ときどき、局長さんはイタズラでベッポのモノを取ったりするため





アンデスは地球儀に聖像を隠し、ついでに敵の髪を切って帰ろうと思いつくが
切ったのは、シックステンの寝室に寝ていた叔母の髪!!

この痛恨のミスは墓場まで持っていこうと思う
叔母は、町の男性が自分のファンで、髪を切って行ったと誤解する(w


●茹でたタラ
翌日、アンデスは夕食に食べたタラに当たって夜通し吐いていたと話す

シックステンらに「地球の中味を探せ」とヒントを出すが
ベッポが行方不明になり、みんなで探し周る

カッレは納屋の中で嘔吐物と排泄物の海の中に倒れているベッポを見つける(可哀そうすぎる・・・
近所のと殺場のネコイラズを食べたと思うシックステン


●悪夢
カッレはなにか思い出しそうでひっかかり悪夢を見てうなされる
アンデスとベッポは、毒入りのチョコレートを食べたのでは?と推理し
自分がもらったチョコレートの半分で実験すると、たしかにヒ素が入っていた!





ブルムクヴィスト名探偵:化学と犯罪捜査は平行的にやらないといけないんだよ

アンデスも聖像についたチョコレートを舐めたと分かり
ロッタを殺そうとした殺人鬼の仕業と推理し、警部に知らせに行く

再び聖像は警察に保護され、付着したチョコレートを鑑識に回し
ロッタは封筒を捨ててしまったことを悔やむ

“ひとびとは殺人事件への興味を忘れ、身震いしながら別の事件にイライラする”
(その愚かな繰り返しだよね、ニュースとか新聞とか

母親は忘れず、子どもたちを見張る

そして、殺人犯も忘れない
昼も夜も恐怖が眠りの邪魔をする

犯人はヒゲを剃り、髪を切り、ギャバジンズボンをタンスの奥にしまい
何度も大平原に行って借金証書を探した!


●ブリキ箱
聖像の代わりに、白バラ軍のいろんな宝物が入ったブリキ箱を奪った赤バラ軍は
地主屋敷に隠したとヒントを与える

最初、行かないと言ったロッタだが、結局行くことにする
ロッタ:いつもそんな思い込みのクセがつかないうちに実行してしまったほうがマシだわ
(まさに暴露療法!!驚×5000 勇気あるなあ

地主屋敷にあったのは、庭に埋めた場所を書いた地図

1人で屋敷で空想していたロッタを見かけた犯人が声をかけるが
人相が変わっていたため気づかないロッタ!

それならもう安心だと思った矢先、“紙を探してる”という言葉に
借金証書だと思い、やはり証人は消さなくてはならないと決意する男

男の手を見て、犯人を見破り、蒼白になるロッタ
(ヒッチコックの映画みたい

「小遣いになる話があるから来い」とカッレらを呼ぶ男
ロッタは白バラ軍の秘密信号で危険をしらせ、山賊ことばで“犯人だ”と伝える

カッレは男がピストルを持っていると推理し、機転を利かせる
カッレ:コワイと思うなら後からにしろ・・・

茂みに隠れていたシックステンらに警察を呼び、男のクルマをパンクさせるよう指示
紙は2階にあるとウソをつき、時間を稼いで、足をつかんでバランスを崩して
落としたピストルを窓から投げ捨て、男を部屋に閉じこめてカギをかける





男は窓から5メートルも飛び降りて、カッレらを撃とうと身構えるが
警察が来て、クルマで逃げる際、証拠のピストルを沼に捨てる
クルマのタイヤがパンクしていて、男は逮捕されるが、執拗に無実を訴える


●封筒
ベンカは趣味の古切手集めをしている際、事件の日にロッタの家で見つけた封筒は
新聞に書いてあったヒ素入りチョコレートに関連するのでは?とようやく気付く

封筒にはタイプライターで宛先が書いてあり、tの文字に特徴がある
逮捕した容疑者クラースのタイプライターも同じ特徴があった

シックステンの庭を掘ってブリキ箱を探すカッレたち
ポケットから借金証書が出てきて、また捨てようとするのを必死で止めるカッレ
カッレ:これからも、やたら紙をまき散らすと、ひどい目にあうぞ






●山賊ことば
カッレは考えた末、シックステンらもいつ殺人事件に巻き込まれてもいいように
山賊ことばを教えることに決める

クラースはとうとう自白したが、フシギなことに平静に返り
良心の重荷をおろして、悪夢のない眠りを得た

聖像も取り戻し、カッレはまたナシの木の下に寝そべる
ブルムクヴィスト名探偵は「探偵ごっこはやめるつもりだ」と言うが
カッレは「ときには冒険も必要だ」と言って、再びバラ戦争にかかる



あとがき
1954年、スウェーデンの全図書館で調べたところ
すべての文学部門の本の中で、リンドグレーンの本が最も多く読まれていることが分かった
今ではイギリス、ドイツでも有名で、世界的な作家といえる

ウィキを見たら、かなり長寿で近年まで同じ時代を生きていたってビックリ!









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