メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『惑星Oの冒険』 モーリス・ジー/作 岩波書店

2022-12-04 13:04:17 | 
1984年初版 百々佑利子/訳 太田大八/装丁・挿絵

タイトルのO(オー)を最初はゼロかと思った
宇宙を舞台にしたSFなのかと思いきや
『はてしない物語』のダークver.みたいな壮大な世界観/驚

読みはじめて物語のフシギな世界にどっぷり入りこみ
驚き、恐怖、感動、涙、ハラハラドキドキする冒険に次ぐ冒険

鳥人族は『ゼルダの冒険』の鳥のキャラにソックリ!
種族の古い伝説を歌にして伝えるとか

善と悪、光と闇の統合というストーリーもスピリチュアル
勧善懲悪でないところがイイ

表紙、挿絵も描きこまれていて
ジュール・ヴェルヌのシリーズっぽい好きな画風

こんな素晴らしい物語が閉架扱いなのが残念

ところで、、、私はこの本をどこで知ったのか?
全然思い出せないのも謎


【内容抜粋メモ】

登場人物
スーザン・フェリス:12歳の少女
ニコラス・クイン(ニック):スーザンのいとこ
ジミー・ジャスパーズ:金鉱ブーム時代の鉱夫

真実の国O
自由人ウェルズ すべてを知る者
マルナ 自由人ウェルズの妻 治療師

かぎ爪オティス 黒い霊 Oの支配者
ブランド 森人
ブリーズ 森人

朝の国
さすらいの鳥とその妻赤い翼 鳥人族



メッセージ
スーザンはニュージーランドの人里離れた牧場に生まれた
ニックは毎年1月の夏休み(真逆か!)に
親と一緒に2週間ほど遊びに来る

2人は親の前では仲良く見せかけているが
スーザンはどこかブキミなところがあり、親ですら気づいている

ニックは山でエンジン音を聞いて、行くと醜い老人と出会う
ニックをスパイ扱いして、陰陽の模様を描いた石をスーザンに渡せと言いつける






スーザンの腕には生まれつきその模様のアザがあり
その謎の答えをずっと探していた

ニックはその時初めて、スーザンを好きだと気づく

夜、親たちがスーザンについて話しているのを聞く
生まれた晩、赤い肌の小柄な年寄りがベッドわきにいて光を放ち
スーザンの腕にアザをつけた


その後、廃坑そばで崖から落下したらしく死体を見た
その腕にも同じ模様のアザがあった


ジミー・ジャスパーズ




スーザンはジミーに会う
アザをつけた男はハーフ人に殺されたと話す

瓶から黄色い煙を出して、無理やりかがせると意識を失うスーザン
強烈なカーバイドの悪臭が漂う

坑口に引っ張られ、徐々に消えて吸い込まれてしまった
その後、ジミーも煙をかいで中に入り、ニックも追う







オド・クリング
トンネルを抜けると、すべてが灰色の世界
巨大な黒い太陽が頭上で燃える

護衛兵デスガード隊を率いるオド・クリングは
真実の国Oの支配者 かぎ爪オティス 黒い霊の座を狙っている

兵士にスーザンのアザを触らせると
黒いほうの半分は暗黒なものすべてを感じて歓喜の涙を流し
薄い側を触ると良心に反応して、宙に吹き飛ぶ

オド・クリング:
ミックス人はわれわれの最後の敵なのだ
宮殿ピットへ連れて行く そこで死ぬのだ
ミックス人は全滅するのが掟だ

クリングはスーザンを連れてきたら金を渡すと約束したジミーを殺させる

歩いて5日がかりで途中で死なれては困るため
ぬるぬるした灰色の得体の知れない肉を口から無理やり流し込む(うえっ

ハーフ人らは首からコブクロをさげていて、時々においを嗅いでいる
スーザンもかがせられて無理やり眠らされる

途中で逃げ出そうとして、アザを兵士にあてて岩から落とすと
クリングは怒って、革の首輪を首にはめて、背中で手を縛って歩かせる

後ろから追いかけてきたニックがヨタカの真似をして合図する


森人たち
森人と名乗る小人ブランドとブリーズは、素早くデスガード隊を眠らせるが
犬のようににおいをたどって追いかけてくるため
マルナの洞穴へと向かう

ブランド:野生の森はわれらすべてにとって母なるもの

スーザンのアザを「みしるし」と呼び、触っても傷つかない
ブリーズ:本来授かっていた性質を失った者だけが傷つくのです

シダの根っこのような食べ物をくれるが味がしない
景色も灰色に見えると言うと、珍しいシャイの花を摘んできて
深く香りを吸い込むと、あたりは素晴らしい色だと分かる







森人の体毛は黄金、緑、青銅色が重なる神秘的な色
シダの根っこも舌がとろけるほど美味しい
これまでハーフ人の煙によって灰色に見えていた


マルナ
大きな洞穴に住む自由人ウェルズの妻 すべてを知る者 森人の治療師





マルナ:
お前が自分の務めを知る時が来たのだ
私は触れない 私はハーフ人なのだよ

ジミーは瀕死のところを森人に救われて、治療を受けた
クリングの首をねじ切ると言う

マルナ:
復讐はお前を幸せにしない
お前の心中の悪に勝利をつかませることになるのだ

スーザンはウェルズの顔を覚えていて、もう死んでしまったことを話すと
森人たちはやわらかい声で葬送の歌をうたう
悲しみから最後は感謝と賞賛の聖歌になる

マルナ:あの人が生きた人生は、私たちに希望をもたらした

(こんな死生観も素晴らしいな

マルナはこれまでの歴史を語って聞かせる

人間族の故郷「マンホーム」
人間は闇の国で暮らしていた
それぞれ異なる能力を授かる

人間族は分裂し、自由人と呼ばれる賢者が現れた
人間の本性に良心と悪心を見抜いて名を与えた

何千年も善悪を自由に選び暮らしてバランスは保たれていた
善悪の石は「母なる大石」の上に乗り
光と影は支え合っていた

それを破壊して支配したがる者が現れた
第一の弟子オティスは、ウェルズとマルナがいない間に
権力の味を知り、人々を奴隷にし所有物とした

「母なる大石」の伝説を調査し真っ二つに裂いてハーフ人となった

今の闇の国が始まった
悪の大群衆が無抵抗な良心の人々を殺戮した

ウェルズは大石を超力ドームで覆い
みしるしを帯びた者のみが入ることができる

オティスはドームごと閉じ込めて、城ピットを建てた
地表から1kmもの深さにあり、常に護衛兵に囲まれている

ウェルズは影の涙石を石人族に、朝の国の鳥人族に光の石を渡し
しるしを帯びた者以外に渡さないと誓いをたてた

嵐のせいでウェルズはたった1人しかしるしをつける時間がなかった
ハーフ人は地球の空気をほんのわずかしか吸っていられない

マルナはスーザンに2つの涙石を集めて、「母なる大石」に置いてくれと頼む
帰る際は時間を選べるから、親を心配させることもない

黄色い煙(スモッグ)はオティスが発明した
巨大な工場で製造していて、もうすぐ地球も覆いつくすと聞いて
スーザンは自分がやらねばと決意する

クリングは100人の兵士と吸血猫(!)を連れて追って来ている


吸血猫




吸血猫は血を見るのが好きな者を嗅ぎわけて手下となる
鳴き声は黒板をひっかくような声(!
スーザンの縄についた血のにおいを嗅いでどこまでも追いかけてくる

スーザンらは険しい山々をマルナの病人、ジミーも担いで逃げる

マルナ:私は生命の丘であいつらと対決する

善の心しかないため、スーザンの黒いアザから力を得る
木の杖を打つと巨石は落下し、丘は丸ごと消える
兵隊は11人も飲み込まれる






ブランド:吸血猫は暑い国の生き物だ 雪の中までは追わないだろう



朝の国
ジミーはヤギを殺して食べようとすると、空高くから見張っていた鳥人族が怒る
さすらいの鳥とその妻赤い翼 体長約3m 翼を広げると7m!






スーザンのみしるしを見ると朝の館に連れて行き
評議会一同が盛大な宴を開く

スーザンは赤い翼の部屋に案内され、温泉に入り、汚れた体と服を洗う
赤い翼の娘、輝く羽が作ったブラシをもらう

評議会はみしるしを認めると
全員、太陽の祝福を受けて見事に上昇して着地し
体から1本羽を抜いてスーザンの前に置く
スーザンはその中から1本だけもらう

ジミーは鉄の斧を器用に作り、クリングをやっつけると息巻く

さすらいの鳥がカゴを運び、中にスーザンを乗せて
涙石のある明星が岳に飛ぶ






山脈の西に飛ぼうとすると、虚脱状態になり生きて帰る者はいない
一人息子もそれで失った

スーザンは赤いかぎ爪の館から光の涙石をとると
体が粉々になり、またすべてくっつくような体験をする



アンダーハンド・チョップ
ジミーは木こり祭りで6年連続アンダーハンド・チョップ競争で優勝したと自慢する

鳥人族はお土産にヤギの革で作った帯をあげて
皮袋のひとつに光の涙石を入れて腰に結ぶ

クリングの目を盗み、秘密の抜け道を教えてから去るが
吸血猫は正確にあとを追ってくる

ジミーは橋を斧で刻む
ニック:アンダーハンドチョップだ







ハーフ人を斧でやっつけ、橋を落とす
クリングは怒り、とうとう吸血猫を放つと川幅15mほど軽く跳び超える!

ジミーは斧であばら骨を突き刺して、猫は消える
吸血猫をやっつけた者は初めてだと賞賛するブランド



地底の喉




石人族には目がなく、光の下に姿を出さない
ウェルズも降りた絶壁の崖の中に呼びかけると
「まーてー」と陰気な声が響く

真っ暗闇に湿った手が触りみしるしを確かめると
石の守番のもとまで案内するため
石の絹糸で織った手袋と靴下を渡す

それを身に着けると命令に従い、どんな岩にも張り付くことができる

「石人は石と一つになる」

案内役の遠目は親切だが、近目はスーザンを小突いて進ませ
「鈍い種族だな」とバカにする






守番は相当な老人で古本のような声(!

影の涙石をもつと、また真っ二つに引き裂かれる体験をして
スーザンは善悪が釣り合い完全となる

守番:
つとめが済んだら死ぬばかりと知っている
眠ろう わしだけ身勝手なことですまないな







真っ暗闇をいつまでも午後に向かって歩いて、ようやくニックらと合流し
手袋と靴下はお土産にもらう




スーザンらは森人たちの木かげの里に来る
スーザンがすっかり痩せこけてしまい心配になるニック

ニックはクリングらが見張っている大絶壁の上を飛ぶ
ハンググライダーを作るとひらめく






寝ずに作り、練習して、ハーフ人変装用の長衣を着て、染め粉で肌を塗り
ディーブンの跳びこみ台から飛び立とうとした時
クリングらが追いついた

ジミーは後ろからクリングをつまみ上げ
兵士に剣を捨てるよう命令させる
クリングはジミーの手に噛みつき、ジミーは絶壁の下に落とす



みやこへ
1人でやるべきだと悟ったスーザンはハンググライダーで飛びたつ
ブランドらとはぐれて三日月型の島におりる







食べ物もなく困っていると、アザラシそっくりな海人族が現れる(カワイイ!
海人族:人間のいやな話し方をするとノドにつっかえる

スーザンがみしるしを見せて話すと、廃船を持ってきてくれる






みやこに入ると、ハーフ人の母が子どもをムチ打ったりしている
誰一人笑う者もない地獄そのもの






オティスの宮殿ピット
ピラミッド型(!)の高い建物を目指すとニックと再会
ブランドとブリーズは捕まってしまった



母なる大石
ハーフ人の集団とともにピットにおりると超力ドームの中に
「母なる大石」が鎮座しているのが見える

ここで裁判を行い、血を見るのが好きなオティス
スーザンは石の手袋と靴下を使って岩をのぼり
天井からドームに飛び込む作戦を思いつく







ミックス人を嗅ぎ分けるかみつき屋の犬に見つかり
ニックはハーフ人の注意を引くため、スーザンは死んだとウソをつくが
天井を這うスーザンを見つけたオティスは兵隊に槍や弓を射るよう命じる







スーザンはドームに落ちると、やわらかく受け止められ
2つの涙石を「母なる大石」に置く

オティスは真っ黒焦げになって死に
ハーフ人は倒れて苦しむ

ブリーズ:
一人ひとりの心の中に善の種が芽生えつつあるのです
いずれバランスがとれて人間らしさを取り戻すでしょう
善悪はそれぞれが決めること



スーザンらはマンホームへ帰る



贈り物
ハーフ人は奴隷から解放され、肌の色も戻り、忌まわしい煙を止めると言う
ブランド:煙は風が追い払い、川や海が溶かすでしょう

スーザンのアザは普通に戻り、特別な力は消える

ジミーは警察に追われる身だから、この地に残ると言う

ニック:金はここでは使えないよ

ジミー:使うためじゃない 見つけるのが面白い 今のわしにはそれが分かる
(貨幣制度についての暗喩っぽい







スーザンはOでもらったモノをブランドとブリーズに与える
スーザン:これで私たちはここへ来た時と同じく、何も持たずに帰るんだわ
(ヒトの生き死にと同じだね

ブリーズは箱にシャイの種を入れて持たせる

ブリーズ:
秘密の場所に撒いてください
もしあなたが望むなら、こちらの星へ訪ねることができます

2人はお昼12時に決めて帰る 2時間遊んだだけ
シャイの香りで帰りは苦痛がほとんど感じずにすむ

Oに二度と戻らないだろうと思いつつ、シャイをどこに植えようか考えるスーザン








■訳者あとがき

モーリス・ジー
1931年 ニュージーランド生
数年教師をやり、司書を経て、45歳の時に辞めて小説を書く

傑作『プラム』(1978)はジェイムズ・テート・ブラック・メモリアル最優秀文学賞ほか受賞
次に書いたのは児童文学『この山の底』『町かどの別世界』

日常生活と背中合わせに異星人世界があり
地球は危機にさらされ、戦うのは鋭い直観、愛と正義心を持つ子どもたち

陰陽の形に人間の本性を見たところに東洋が反映されている

善悪両方で「完全」であるとする

シダの根っこは、ニュージーランドの先住民マオリ(ポリネシア人)の主食
1木1草をつむ前に儀式を行い、森の神さまから頂く伝統をふまえている


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