メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

鉄道きょうだい E.ネズビット/著 教文館

2024-07-04 17:25:39 | 
2011年初版 中村妙子/訳 C.D.ブロック/挿絵

「作家別」カテゴリー内に追加しました



今作も夢中で読んだ
『若草の祈り』というタイトルの本を借りたら、同じ本だった/驚









別の作品では、誰かの役に立ちたくて
やることなすこと全部空回りする話もあったけれども
今作では、子どもたちの真心から、いろんな人々を救う事件が次々起きる

こんなきょうだいがいたら毎日楽しいだろうなあ
作家がいつも読者に寄り添って語りかける書き方が特徴的

90歳とは思えない瑞々しい翻訳
2011年になってもネズビットの小説が発行されていることは嬉しい


【内容抜粋メモ】

登場人物

父 イギリス政府の公務員
ロバータ 通称ボビー
ピーター
フィリス

パークス 駅員 子どもが3人いる
ドクター・フォレスト 医師



●1
3人きょうだいは幸福に暮らしていたが
ピーターの10歳の誕生日の3日後に一変する

ピーターは誕生日プレゼントに模型機関車をもらったが壊れてしまい
器用な父に修理してもらおうと約束していたが
2人の男性がやって来て、父は出かけて、それきり帰ってこない

母:
この際、田舎に引っ越そうと思うの
しばらく“貧乏ごっこ”をしようじゃないの








●2
近所の奥さんに夕食を用意してくれと頼んだがキッチンになくて
家族は缶詰などで済ます







きょうだいは鉄道を見に行き、駅員室をのぞく
ピーターは“鉱山ごっこ”をしようといって、石炭の山から乳母車に乗せて家に運ぶ
母が少し寒くても、石炭を買うお金を節約しなきゃならないと言ったから

1週間後、石炭を運んでいるのを駅長さんに見つかり事情を話すと
今回は見逃すが、盗みは盗みだと言い聞かせる








●9時15分のおじいさん
きょうだいは鉄道が父のいるロンドンとの唯一の絆のような気がして
それぞれの汽車に名前をつけたり、9時15分の車窓から見える老紳士に毎日手を振ると
老紳士も振り返してくれたため、親しみを覚えて“9時15分のおじいさん”と名付ける

駅員のパークスさんは、3人に連結器などの仕組みを教えてくれて親友になる

母がインフルエンザになり、ドクター・フォレストを呼ぶが薬代にも困っている
母が「ママ、ママ!」とうわごとを言うのを聞いて
ボビーは理想的な母も誰かに頼りたくなることがあるんだなと思う

“9時15分のおじいさん”にドクターに言われた食べ物を買うお金を貸してほしい
ピーターが大人になったら必ず返すと手紙を書いて、渡してもらう

その後、たくさんのごちそうが入った籠が届く








●4
母が回復して、それについて話すと、怒られる
母:よその人にやたら話して、何かねだるなんてもう絶対しないでちょうだい

それからいきなり怒ったことを謝る
ボビー:自分が悪かったって子どもに謝る大人なんて、そういないんじゃないかしら

ボビーはドクター・フォレストに、薬代を払うのが大変だから
組合に入れば、毎週、2ペンス払えばカバーできるという話を確かめる

ドクターもお金持ちじゃないし、一家の治療代をあてにしてたけれども
そんな心配は無用だとボビーに言い聞かせる









ボビーの誕生日に母は得意の詩をプレゼントする

私たちのロバータが一生、幸せでありますように
傷つくことがありませんように

家族からプレゼントをもらい、楽しく遊んだ、その夜
母がテーブルに顔をうずめて泣いているのを見て、悲しくなり
父についてなにか隠していることがあると気づきながら、気づいていないフリをするボビー

ボビーはピーターの壊れた模型機関車を直してもらえるか機関士に聞こうとして
タイミングを失い、そのまま無賃乗車してしまう

それを機会に2人の機関士と仲良くなり、機関車も直してもらった









●囚人と捕虜
駅で遊んでいると、人だかりができて、ボロボロの男性が連行されようとしている
きょうだいは学校で習ったフランス語を話し
ピーターの持っている切手からロシア人だと分かる








母はフランス語が話せるため、事情を聞くと、切符をなくして困っていて
ひどく衰弱しているから家で休ませることにする

シュチュパンスキーという有名な作家で
貧しい人を救うための素晴らしい本を何冊も書いたが
ロシア政府に逮捕され、シベリア送りになった

兵士に志願して、戦場から逃げ、家族を探すためにロンドンに来て
切符をなくして途方に暮れていた

母:神さまの憐れみが示されるように、すべての囚人と捕虜に祈りましょう








●6
パークスさんは、子どもたちがロシア人について話しに来ないのを怒っている
誤解を解いて話してあげると、イチゴの初摘みを許可する
それをシュチュパンスキーさんにあげると大感激する

トンネルの上に散歩に行くと、轟音がして地滑りが起きる
線路の上に大量の土や草木が積まれて
11時台の汽車が来るまでになんとかしなければ大事故になる

赤いペティコートを脱いで引き裂き、赤旗を何本もつくって木にくくり
汽車に向かって振ると止まって、事故を未然に防いだ功績をたたえられる










●7
鉄道会社に呼ばれて感謝の言葉と記念品として立派な時計をもらう

集まった人の中に“9時15分のおじいさん”もいる
ボビーはシュチュパンスキーさんの家族を探すのを手伝ってほしいと頼む
おじいさんは快く受けて、代わりに3人きょうだいのことを話してくれと頼む








10日後、シュチュパンスキー氏の家族が見つかり、ロンドンに迎えに行く


●8
運河に釣りに行くと「とっとと失せろ!」と船頭に怒られ
ピーターは耳を引っ張られる







ボブ:この運河は自然保護地域なんだ

妻:口は悪いけど、気はいいんだ 近くにたちの悪い男の子たちがいて
「犬の肉のパイ食った」なんてはやしたてるもんだから

奥さんに言われて釣りをしていると、夫婦のボートから火が出ているのを見つける
ピーターは中にいた赤ちゃんを助け出し、ボビーは酒場にいる夫婦を呼びに行く

ボブは水をかけて火を消し、自分の落としたパイプが火元だと分かる
きょうだいに礼を言って、船旅に連れて行ってくれ
運河での釣りも許可して、釣り方を教えてくれる


●9
パークスさんの誕生日が32年前の今月の15日と知り
3人はなにかお祝いしたいと考えて村を周り
知人からたくさんのプレゼントをもらう

母もフィリスの着られなくなった服をまとめる
ミセス・ランサムは娘エミーの赤ちゃんが半年で亡くなり
使わなくなった乳母車を使ってくれたら嬉しいと渡す







パークス家に行き、プレゼントを渡すと奥さんは感激で泣く

ミセス・パークス:
アルバートは叔父の家に厄介になって
その叔父も商売が失敗した
こんなプレゼント、生まれて初めてだと思うよ

パークスさんはほどこしなど欲しくないと怒りだす

パークス:
あんたたちは近所を歩いて、オレたちがやっと食いつないでると言って回ったわけだ
あんたたちとの付き合いもこれきりにしてもらいたいね







ボビー:あなたがどんなに意地悪したって、私たちは友だちだと思ってるわ
ボビーはプレゼントをくれた人たちがパークスさんを尊敬していることを伝える

パークス:こんな気持ちは生まれて初めてだ
誤解が晴れて、盛大なパーティーになる



●10
田舎に来てからきょうだいゲンカがなくなったと褒められた午後
ボビーはピーターと些細なことでケンカになり
草かきを引っ張り合って、ピーターが倒れたため、足に歯が刺さって大怪我になる
(子どもってあっさり大怪我するからコワイ↓↓↓








ドクター・フォレストは2週間安静にしていれば治ると約束する
ボビーは謝り、仲直りするが、ずっと家にいるのに飽きたピーターに
駅にある雑誌をあげようと思い、包んであった古新聞をふと見ると
父が有罪判決で懲役5年と書かれた記事を読む



●11
母に記事を見せると

母:
国家の重大な機密をロシアに売ったスパイの疑いをかけられたの
机の引き出しからあるはずのない手紙が出てきて証拠になった
下役で働いて、今は重要な地位にいる人が妬んでいたらしい

ボビーは“9時15分のおじいさん”に記事を同封して
真犯人を探す手伝いをしてほしいと手紙を出す

翌日、グラマースクールの生徒たちが“紙まきゲーム”をするのを見に行く
ウサギ役が逃げながら紙をまき、猟犬役が追う鬼ごっこ

ウサギ役がトンネルに入り、彼を追って猟犬役も入ったため
3人は反対側から出てくるのを見に行く

最後にトンネルに入った赤いセーターの男子だけが出てこなくてトンネルに入って探す
汽車が通るとものすごい轟音で、トンネル内は真っ暗



●12
赤いセーターの男子ジムは足を骨折して気絶している
ボビーは看護で残り、2人は近所の助けを呼びに行く

ピーター:
なんだって終わりが必ずある
頑張り続ければ、いつかは終わるさ








信号扱い所の信号手に話しかけるのは法律違反だが
信号手は居眠りをしていて、起こすと、慌てて信号を切り替えて大事故にならずに済む
子どもの具合が悪くて寝ずの看病をしていたとワケを話す








信号手に教えてもらった農家を訪ねて、男子を自宅に運んでもらう
男子:お宅にご迷惑をかけて申し訳ありません
母:今、心を遣わなきゃならないのは、ケガしたあなたのことよ



●13
ミセス・ヴァイニー:痛むのは生きてる証拠

ピーターは姉妹に戦場で負傷者にどう手当てするかを話して怖がらせたため
ボビーはピーターをぐるぐる巻きにしばりつける

ドクターは3人が“骨折ごっこ”をしていたのを「心なしだ」と叱る

ドクター:
男性は女性より肉体的に頑健に、精神的にもタフにできている
すべての動物のオスはけしてメスを相手に戦わない
言葉に気を配らなければいけないんだ

ピーター:
君たち女の子はソフトで弱くて臆病だから
男はガマンしてやらなきゃならないんだ

ボビー:私たちが獣なら、ピーターだって同じことよ

ピーターは父がいなくなってから、家に男が自分1人になったから
ジムにもっと家にいてほしいと母に話す

母:
私たちみんな、神さまの書かれた本の中の登場人物だって考えたら
気持ちがなんとなくスッキリしない?
神さまはきっと正しい結末をご存じだと思うの
勇気を持とうじゃないの


ジムの祖父が来て、“9時15分のおじいさん”でビックリ

“9時15分のおじいさん”:
なんとも素晴らしい、美しいことが起きることだってある
われわれはそうした望みにすべてを託して毎日を送っているんですから


ボビーはおじいさんとの会話を思い出すたびに
日本人が夜道を歩く時に使う提灯みたいに胸の内が輝く気がした








●14
“9時15分のおじいさん”がコックとハウスメイドを送ってくれたお陰で
母は前のように子どもたちと一緒に遊ぶ時間ができた

久しぶりに鉄道を見に行くと、窓からみんなハンカチや新聞を振っている
それは“9時15分のおじいさん”のはからいだった

11時の列車が着いて、とうとう父が無罪釈放されて帰宅する









“ドアを押し開けて、続いて入るのはやめておきましょう
そう決心したけれども、やっぱり振り向かずにはいられませんでした
3人きょうだいが留守を守ってきたスリー・チムニーズ荘
いろいろな場面を身近に見て来た白亜の家を、もうひと目と”



訳者あとがき
本書が出版された1906年は、世界最初の蒸気機関車の試運転からほぼ1世紀
鉄道は乗合馬車、船に代わり、イギリス人の主要な移動手段となっていった

父についての秘密は、この頃にヨーロッパに起きたドレフェス事件を連想させる
フランス陸軍のドレフェス大尉が機密書類をドイツに売り渡したという嫌疑で捕縛され
無実を信じる作家エミール・ゾラらが人権擁護の抗議運動を起こし
1906年に無罪が確定した

子どもは、大人が彼らとまともに向き合い
大人なりの弱さを見せることもいとわずに
本気で話しかけるなら、やはり、本気で答えてくれるということに気づかされる


コメント    この記事についてブログを書く
« 映画『田園交響楽』(1938) | トップ | ウィンブルドンテニス2024 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。