メランコリア

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シリーズ怪盗ルパン 第1巻 『怪盗紳士』 モーリス・ルブラン/原作 ポプラ社

2023-01-07 15:27:55 | 
1999年初版 南洋一郎/文 藤田新策/装丁・挿絵

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【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください

ルパンシリーズの1巻目
なぜ悪を憎み、貧しい人を助ける怪盗になったかが分かる『ぼくの少年時代』を読むと
意外とマザーコンプレックスが強いかもしれないと思った

大人になっても子どものような性格、女性に好かれるのも
こうした成育歴が関係しているかも

以前読んだ『ルパン対ホームズ』で2人の対決は2回目とあり
本書に最初の出会いが描かれていると思ったら違った
では、どの話が最初?

翻訳でなく、少年少女ものに書き直したから「文」となっている理由も分かった
南さん自身が作家なんだな








【内容抜粋メモ】






■大ニュース・ルパンとらわる
アメリカに逃げるルパンがフランスの快速豪華船プロバンス号の
一等船客に乗っていると噂が立ち
5日間の船旅でなにか盗まれるのではないかと互いを疑う富豪たち






美しい大富豪で18、9歳のミス・ネリーも怖がる

船長宛てに無線があり
“ルパンは金髪、右腕に傷あり、ひとり旅、変装し、名前はRではじまる”

船でネリーと親しくなった青年紳士ダンドレジーは船客名簿から
4人を絞り出し、ロゼーヌが怪しい

ロゼーヌもネリーが好きで2人はライバル同士

ネリーの付き添いジャーランド夫人の宝石がすべて盗まれて
ロゼーヌが疑われ、犯人を見つけたら1万フラン出すと懸賞金のおふれを出す

ロゼーヌは夜の甲板でルパンにより縛られて賞金をとられることで
ルパンではないと分かる

港が近づき、別れが辛くなるネリーとダンドレジー

港にはルパンが一番苦手なガニマール警部が待ちぶせている
よぼよぼのお年寄りなのか/驚

ガニマール警部はひと目見て、ルパンの変装を見抜く

ダンドレジーと名乗っていたルパンは
ジャーランド夫人の宝石をカメラに隠してネリーに持たせていたため
ネリーはカメラを海に落としてルパンを救う

手錠をかけてもムダだし、逃げないと知っているから
肩を並べて刑務所に向かう

ルパン:しばらく静養したら、また失礼するかもしれん
ガニマール警部:その時はその時のことだ


■悪魔男爵の盗難事件
マラキという古城にカオルン男爵が住み
周りからサタン男爵と呼ばれている

たくさんの国宝級の美術品を持ちながら
人にとられるのを警戒して、人目に触れさせないでいる

彼のもとにルパンから手紙が届く

“シャンパーニュの名画、ルーベンス、ワトーも好みなので
荷造りして1週間以内にバティニョール駅留めで発送願います
そうでなければ私がおうかがいして頂きます”(w

2人の年寄りの召使いのほかは知らないはずなのに
正確に場所まで言い当てているためショックの男爵

パリの有名なガニマール警部が休暇で釣りに来ていると知り
3000フラン出すから守ってくれと頼む

ガニマール警部はルパンは刑務所にいるから
脅迫状はニセモノだと渋りながらも承知する
(もう怪しいなw

2人の部下を不寝番させて
男爵はガニマール警部とともに小部屋で夜を明かす

1晩過ぎて、安心していると、部下は2人とも麻酔薬で眠らされ
指定された宝物はそっくり奪われていた







男爵:
全財産をはたいてでも宝物を買い取りたい
でなければ生きるはりあいもない

ガニマール警部:
これは人間心理の盲点をついた犯罪
1時間ほどルパンと刑務所内で話したい
私は彼とすっかり親しくなり、彼は私をまったく憎んでいない

監房に入ると、ルパンは陽気に出迎え
ガニマール警部はホームズなみの名探偵だと褒めそやす

監房にいても、新聞、雑誌、書物、読みたいものが読めるし
書留も郵便局から出せると領収書を見せるw

今回の事件の真相を明かす
誰も入れないなら、男爵から自分を招待させればいい

部下を警部に変装させて、男爵を見張っている間に
ほかの部下が窓から持ち出してボートに積んだ

ガニマールがガニマールを捕らえるという滑稽な話になる と大笑い
男爵が宝物を返すために10万フラン出して、それに応じた

ルパン:
私は公判前にここを出る
来週は君のアパートを訪ねるつもりだ


■ルパンの脱走
ルパンの見回り回数はこれまでの倍になったが
新聞にはルパンの投書が載る

驚いた保安部長はルパンの運動時間に監房を徹底的に調べる
上等な葉巻があり、その中に細く丸めたメモのこよりを見つける

「サラダかご」と呼ばれる囚人護送用馬車(!)の底板に細工がされ
途中で脱走するという内容

食事のナイフの柄にも紙きれが入っていて
毎日、サンテ刑務所から警視庁で検事の取り調べを受ける際に脱走すると分かり
メモに気づかなかったフリをして、部下ごと逮捕しようと計画する

馬車から脱走したルパンはコーヒーをのんびり飲んで
財布を忘れたから、ルパンの名前を信じて数日支払いを待ってくれと言うと
誰も本気にせず大笑いする

サンテ刑務所に戻り、途中で馬車から落とされたから戻りたいと願い出る

この事件はルパン御用達のエコー・ド・フランス新聞に掲載される

ほかの独房に移されたルパンは、ひどくガッカリして壁ばかり向いている

公判の日
傍聴券はプレミアつきで満席

裁判長:
ルパンは3年前突然現れた大盗賊
8年前に有名な奇術師ジクソンの助手だったロスタではないか
などといろんな説がある

だがルパンはデジレという浮浪者だと名乗る
ガニマールは「これはルパンではない あんなにどんよりした目はしていない」と証言

ルパンを監視していた男たちは、彼がいつもうつむいていたため顔をよく知らない
独房に入れられた時にでも入れ替わった可能性がある

デジレ:
独房は気持ちのいい部屋で、食べ物も毎日美味いから2月も暮らしちまった
ありがとうごぜえました

デジレは釈放され、ルパンと会うかもしれないから後を追う

ガニマールはデジレと同じベンチに座ると
さっきのヨレヨレの浮浪者が元のルパンに変わっている







皮膚病の研究もしていたことがあり
ある種パラフィンの皮下注射で顔をふくらませたり
皮膚の色を変えたり、湿疹を出したり、ヒゲを生やすこともできる(驚

まんまと脱走されて、ガニマールは涙を流す(!

ルパン:
デジレは実在し、自分に似ているから
なにかに利用できると思いかくまっていた
警視庁にも裁判所にも味方がたくさんいる

世間は私が必ず脱走すると信じていた
それを利用した心理的犯罪だ

メモをよこした恋人と僕は一人二役
僕は男女どんな筆跡も自由に書ける

これで失敬する
今日はイギリス大使館の夕食会に招待されているのでね


■奇怪な乗客
ルパンは私(ルブラン)のアパートにふらりと来て
例の自慢話を始める

パリのサン・ラザール駅でルーアン行きの特急に乗る
同室したルノー夫人は飛び乗ってきた青年紳士をルパンだと言って怖れる

夫人:主人は警視庁刑務課次長でルパンを追跡していた

ルパンは睡眠不足で眠った間に男に縛られ、夫人も意識不明
外は豪雨だが、途中で線路の修理工事をしていて
駅に停まる直前にスピードを落としたタイミングで脱出







ルパンは夫人にギヨームと名乗り、主人の友人ということにして
駅に着いたらすぐ警官に事件について話すよう指示する

ギヨームは警官2人を連れてビュシー駅めがけて
猛烈なスピードを出してクルマを走らせる

紳士は駅に着く直前に列車から飛び降りて森に逃げる
柔道で投げ飛ばして縛り
盗品を返せば逃がしてやると言うと
ナイフを出したので、今度は空手で気絶させて縛る

紳士はピエール・オンフレーという殺人鬼で
先月、夫人と令嬢が殺されたばかり

後日、エコー・ド・フランスに記事が載る
ピエールは逮捕され、ギヨームは消えた
盗まれた夫人の宝石とギヨームのお金は戻った

ルパン:
僕は東洋の神秘に深く心をとらわれているから
いつか極東の海の中に南北に長く伸びている日本に
ぜひ行ってみたい

あそこは古い神秘な国だからね
日本の柔道、空手も、自分の力以上の強敵を倒す不思議な武術だものね

僕はお礼が欲しくて女性や子どもを助けるんじゃない
凶悪な人間、強欲な奴から貧乏な人を救うのが道楽なんだ

しいて紳士と言いたいなら「怪盗紳士」と言ってもらいたいな


ぼくの少年時代
サン・ジェルマンの森の中の古いシャトーに
大貴族のスーピーズ伯爵家があり、盛大な夜会が開かれた

ホステスの伯爵夫人はマリー・アントワネットのネックレスを披露
ギロチンにかけられた呪いがかかっているとも噂される

翌日は夫が自ら銀行に預けることにしている

デンマークの国王のレセプションでも王妃のネックレスをして
赤い革の箱に入れて隠しておいた

入口は1つだけだが、翌朝になると箱がない


●王妃のネックレス
このネックレスはスーピーズの親戚からマリー・アントワネットにあげたものだが
途中でラ・モット伯爵と夫人ジャーヌドが横取りし
ダイヤをばらして売り払った

座がねと鎖はスーピーズ伯爵に売られた
完全な形に残したいと思い、ダイヤを買い戻した
足りない部分は品質の劣ったダイヤにした

大革命の際、貴族は財産を没収されたり、死刑、国外追放にされたが
王家が復活したり、世の中が変わると領地を取り戻した

スーピーズ伯爵は銀行の貸金庫にネックレスをおさめ
カギは伯爵と銀行の2個ないと開かない

箱の隠し場所を知るのは伯爵と夫人
そして、夫人の学友で未亡人となったアンリエット
ラウールという男の子とともに引き取って1部屋を貸している

署長がその部屋に行くと、想像よりみすぼらしくて驚く
アンリエットは部屋から出ていないと証言

判事が調べると、伯爵家は上辺は派手な生活をしていても
内情は借金のとりたてに苦しんでいた

ネックレスを盗まれたと知られると
債権者が催促をし、広大な土地を売ってしのいだ

夫人は苛立ちをアンリエットにぶつけて
6歳の子どもと一緒に屋敷から追い出してしまった







アンリエットから手紙が来た
田舎に引きこもっていたが
定期的に大金を送ってもらって有難いという内容

送金した覚えはないと返事を書くと
差出人の名前や住所はないが、筆跡が夫人に似ていて
住所がサン・ジェルマンだったため
伯爵夫人だと思ったと返事がくる

その後、アンリエットは病死して19年が経った

ようやく生活が戻って昼食会を開いた時
スポーツマンタイプのフロリアニという紳士に
ネックレス盗難事件の謎の意見を求める

フロリアニ:僕はシャーロック・ホームズやルコック探偵じゃないですから

と言いつつも、事情を聞くと謎解きを始めて
回転窓に割れ目をつくり、そこから入ったと推理

事件当時のままにしてある窓を見たら
本当に割れ目があるが隙間が狭い

フロリアニ:
犯人は子ども ラウールだった
アンリエットは潔白です
ここを出されて、生活に苦労しても誰も恨まず
寂しく死んでいったのです

母親思いのラウールはネックレスの質の悪いダイヤを外して古物商に売った

伯爵夫人は後悔して泣いて詫びる


ルパン:
そう、僕がラウールだったのだ
6、7歳の時、すでに巧妙な盗みをするほどの悪の天才だったから
いつのまにか怪盗ルパンなどと言われる人間になってしまった

伯爵夫人は世間に対する虚栄心で母を救った
表面はいかにも思いやり深く見せかけて
実は母に辛くあたっていた

僕は貧しい者、不幸な者への同情心が強くなると同時に
財産、地位、名誉、世間体ばかりを考える人間に対して
激しい憎しみを感じるようになった

母の病気がひどくなった時、ビクトワールという乳母が来た
夫に死なれ、生まれたばかりの女の子も亡くしたので
乳が出て困っているのを聞いて雇った

自分の子のように育ててくれた
母が不幸だと聞いて訪ねてくれた

僕は成人し、街角で靴磨きなどするうち
貧しい人々の生活が分かった
そして、彼らのためになろうと決心した

怪盗はいいとは思っていないが
生まれつきの泥棒根性が消えないのだ

自分がラウールと名乗って、伯爵夫妻の赦しを求めた
ネックレスを箱に入れたまま返したら
誤解して苦しめた償いのためにネックレスを母の霊前に捧げようと言ってくれた

私(作者):ゆっくりしていきたまえ

ルパン:いや、ビクトワールが待っているからね




解説 「怪盗ルパン」の魅力 砂田弘(児童文学作家)
ルパンの物語には冒険小説とミステリーの2つの要素があるのも人気の1つ

ある日、友人の出版社社長から創刊したての絵雑誌に
なにか面白い冒険小説をと頼まれて
短編「アルセーヌ・ルパンの逮捕」を書いたのが大好評となり連載した





日本に初めて翻訳紹介されたのは明治42年

南洋一郎が原作に基づき、少年少女のために書き改めた
本名は池田宜政 明治26年生まれ
『リンカーン物語』などの伝記を書いた
『少年倶楽部』の連載『吼える密林』は少年たちを熱狂させた



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